突然ですが、関西にある「中之島高速鉄道株式会社」や「関西高速鉄道株式会社」という会社をご存じでしょうか?
社名に「鉄道」と付いていることから、鉄道の会社であることは想像できます。ではどこを走っている路線なのかなと鉄道路線図を探してみても……アレ、どこにもありません。今回は、実は縁の下の力持ち的な鉄道会社のアレコレを紹介します。
中之島高速鉄道は「京阪電鉄」の中之島線、関西高速鉄道は「JR西日本」のなにわ筋線の建設を担っている
中之島高速鉄道は京阪電鉄の中之島線(天満橋〜中之島)、関西高速鉄道はJR西日本のJR東西線(尼崎〜京橋)や2031年春開業予定の「なにわ筋線」の建設・保有を担う第三セクター方式(関連記事)の会社です。京阪電車やJRのように実際に列車の運行業務を行う会社ではないので、一般鉄道利用者の私たちがそれを目にする、気にすることは少ないのです。
鉄道路線の建設において、なぜ別会社を設立するのでしょうか。鉄道路線を、特に都心部で建設するには莫大な建設コストが掛かります。自社で全部建設できればよいですが、お金が厳しい。そこで自治体が出資する鉄道建設・保有がメインの第三セクター方式の会社を作り、そこに公的資金を投入して進めるという手法がとられています。
中之島高速鉄道では京阪電気鉄道の他に大阪府や大阪市などが出資。関西高速鉄道も大阪府や大阪市、兵庫県などが関わっています。
路線が完成すると表の運営は他社に任せて、線路や駅施設を保有する「第三種鉄道事業者」として活動します。京阪中之島線では表の運行業務を行う「第二種鉄道事業者」が京阪電気鉄道です。中之島高速鉄道は京阪電鉄から線路使用料を得ます。
ちなみに、第一種鉄道事業者は自社保有の路線で自ら運行事業を行う会社(独立行政法人の鉄道・運輸機構から鉄道施設を借りて運行する事業者も含む)、第二種鉄道事業者は他者保有の路線を使って(借りて)運行事業を行う会社、そして第三種鉄道事業者は路線を建設して、それを第一種鉄道事業者に譲渡する、あるいは第二種鉄道事業者に貸す(使ってもらう)事業を行う会社となります。
他に関西圏では近鉄けいはんな線の2006年開業区間(生駒〜学研奈良登美ヶ丘)、阪神なんば線の2009年開業区間(大阪難波〜西九条)がこの例に当てはまります。
関東では成田スカイアクセス線(京成高砂〜成田空港)が挙げられます。ここは先の例よりも複雑です。全線にわたり第二種鉄道事業者は京成電鉄であり、京成高砂〜小室間は北総鉄道(第一種鉄道事業者)、小室〜印旛日本医大間は千葉ニュータウン鉄道、印旛日本医大〜成田空港高速鉄道線接続点は成田高速鉄道アクセス、成田空港高速鉄道線接続点〜成田空港は成田空港高速鉄道と、かなり多くの会社が施設をそれぞれ保有しています。
第三種鉄道事業者の社名を目にする機会は少ないかもしれません。でも、皆さんが特に身近に使っている「スマホ」における、大手キャリアと格安SIM・スマホの関係のようなことが古くから鉄道の世界にもあると思うとちょっと興味が沸いてきませんか? 新線開業のニュースが舞い込んできた折には、縁の下の力持ち的な第三種鉄道事業者にも注目してみてくださいね。
新田浩之(にったひろし)
1987年神戸市生まれ。関西大学文学部卒、神戸大学大学院国際文化学研究科修了。主に鉄道と中欧、東欧、ロシアの旅行に関する記事を執筆。2018年からチェコ政府観光局公認の「チェコ親善アンバサダー2018」を務める
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