第5回 見えてきた「Apple Watch」でできること:“ウェアラブル”の今(2/2 ページ)
多彩な通知方法
Apple Watchは通知の方法についても、多彩だ。
「短い通知」は、腕を上げたときに一瞬情報を表示してすぐに消えるもの。前述した「1〜2秒で分かる情報」のことだ。この通知は、1画面分、そして一目で完結する情報量を伝える事になる。見れば分かる情報という意味では、例えば、スポーツアプリなら、登録しているチームの試合で点数が入ったとき、あるいは天気のアプリで活用する場合は雨雲が近づいてきたときが便利だろう。
「長い通知」は、Apple Watchの画面を縦にスクロールし、より詳しい情報まで見ることができるようにするものだ。例えばメールは分かりやすい例と言える。もちろん同じ種類のアプリでも、短い通知と長い通知を使い分けることができるはずだ。
前述のスポーツアプリの例で言えば、登録チームの試合が終了した際、一目で分かる位置に勝敗スコアが表示され、スクロールするとスコアボードを見ることができる、という使い方は便利そうだ。あるいは天気アプリの場合、台風や地震といった災害情報については、アラートに加えて詳しい情報を確認できたほうがいい。
長い通知については、ボタンなどを配置してアクションを促すこともできるという。メールやメッセージで言えば返信などがそれだが、例えば路線検索アプリの場合、普段の通勤経路や進行中の経路に遅延や運休があった場合、変わりのルートを検索するボタンを設置すると良さそうだ。
これは情報の種類や操作のシンプルさにもよるが、どこまでをApple Watchで見せて、どこからをiPhoneに引き渡すか、という切り分けについて、開発者とユーザーが考える必要がある。文字入力や複雑な表示が必要な場合はiPhoneの方が良いが、スクロールで済むならApple Watch上に上手く表示できる方が良い。
このあたりは使い始めなければ、双方にとって最適な「加減」がわからないことかもしれない。
またApple Watchには、スマートフォン的な新着通知に加えて、アプリが用意しておく「プッシュ通知まではしないけれども最新情報の紹介」のような機能、「Glances」がある。
Glancesは、言うなれば、情報の巡回に使える機能と言える。例えば、メッセージを受けてスマホのロックを解除し、返事を書いた際、他の人へのメッセージに返信したり、そのままアプリを切り替えてソーシャルネットワークを見たりすることがある。こうしたアプリを切り替えながらの新着情報巡回を、Apple Watchの画面で行えるようになることが期待される。
今後のネイティブアプリの可能性
当面、Apple Watch向けのアプリ開発は、通知を中心に展開されていくことになる。開発者もユーザーも、普段のアプリの使い方で「これはApple Watchの画面だけで済むのではないか」というアイディアをイメージしてみると面白い。
例えば、Facebook MessengerやLINEには、メッセージのやりとりの中に「いいね」アイコンや「スタンプ」が存在し、文字を入力しなくても返事ができる。前者の場合、「メッセージを読みました」「同意」という意味合いで「いいね」アイコンを送るだけなのに、スマホのロックを解除してアプリを開く必要性は高くない。Apple Watchの画面からでも十分返事ができる。
AppleのWatchKit提供開始を知らせるプレスリリースには、Facebook傘下のInstagramのコメントが紹介されていた。新着の写真に対してApple Watch上から「いいね」や絵文字による返信が行えるとコメントしており、友人の最新の写真がGlanceとして入ってくるのは良い機能になりそうだ。
ちなみにInstagramはiPhoneアプリでも、通知は音を鳴らさない仕様となっており、サイレントな通知とGlancesとの相性は高そうだ。必ずしも主張する通知ばかりではなく、ぺらぺらめくれる情報をさりげなく用意しておく、という「加減」の中で、いかにアプリの存在感をアピールするかが試される。
操作方法、表示方法、実装できるアプリの種類、そして通知と、非常にミニマルな状態からスタートを切るApple Watchのアプリ。Instagramの通知の例を出したが、これらに通ずるのは「エレガントなテクノロジー」の姿かもしれない。
今までのアプリ開発から、少し肩の力を抜いて、何がおしゃれか、何がエレガントか、という思考でApple Watchと向き合い始めると、ちょうど良さそうだ。
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