サンライズのアニメーションはこうして作られている売れるのには理由がある(3/3 ページ)

» 2013年03月29日 10時37分 公開
[種子島健吉,ITmedia]
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 基本的に社内スタッフに情熱を持ってその企画にあたれるものがいれば、作品は成立すると思っています。「アイカツ!」や「ラブライブ!」がサンライズの作品です、というとビックリする方もいます。でも、今までそういったジャンルの作品をやっていなくても、誰か「やってみたい!」というプロデューサーがいればトライできるチャンスが、サンライズにはちゃんとあるんですよ。

画像 2010年にepsode 1が劇場公開された「機動戦士ガンダムUC」(全7話予定)。原作、矢立肇/富野由悠季。ストーリー、福井晴敏。オリジナルキャラクターデザイン、安彦良和。モビルスーツ原案、大河原邦男。メカニカルデザイン、カトキハジメほか

画像 現在放送中のゲーム「データカードダス アイカツ!」とのコラボレーション作品「アイカツ!」。企画/原作、サンライズ。原案、バンダイ。監督、木村隆一。シリーズ構成、加藤陽一。キャラクターデザイン、やぐち ひろこ。スーパーバイザー、水島精二

画像 現在放送中の「ラブライブ!」。原作、矢立 肇。原案、公野櫻子。監督、京極尚彦

―― 企画を考えるうえで、「あっ」と驚くものを、ということ以外に大事にされていることはありますか?

河口氏 やはり、アニメーションはエンタテインメントですので、ちょっとだけでも非日常を楽しんでもらえるように、「没入できるような完成された世界観を作る」「一緒にいたいと思ってもらえるぐらい、魅力的なキャラを登場させる」ということは心がけています。

 「コードギアス」シリーズに限っていえば、「今の大人が作った世界のままでいいの?」というメッセージがあるんです。「しょうがないや」というのではなく、「自分で変えることができるんじゃないの?」ということですね。

 現実の問題をアニメーションで解決することはできません。大震災の後片付けをモビルスーツ(ロボット)でできるわけじゃありませんし、もし、そういう内容の作品を作っても現実の瓦礫は片付きませんから。そういうことではなく、若い人がアクションを起こすきっかけになるような、ちょっとした応援の気持ちを込めているつもりです。

信頼関係、実績が重要なのはアニメも同じ

―― 外部から見ていると、「機動戦士ガンダム」のサンライズだからオリジナルでも企画が通るんでしょ? とか、バンダイナムコグループだから玩具展開がすんなりいくんでしょ? と、うがった見方をしてしまわないでもないのですが。

河口氏 確かに「ガンダム」の名を冠する企画であれば、そういったことがないとはいいません。でも、ことオリジナル作品であれば、厳しい目で見られるのはサンライズでも同じですよ。弊社がバンダイナムコグループの一員だからといって、ガンプラのようにたくさんのメカが、必ずプラモデル化されると決まっていることもないですし。

 どんな製品やサービスでもそうだと思うのですが、それまでの担当者同士のお付き合い、例えば私の場合だと、「キングゲイナー」からテレビ版「コードギアス」を制作する中で、共同制作メーカーのプロデューサーと信頼関係が築けたことが大きいです。いきなり劇場で上映する「コードギアス」が企画できたということではなく、そこにいたるまで、テレビ放送時の視聴率、DVDやBDの販売数、関連玩具の販売実績などをコツコツと積み重ねた結果なんです。

 ただやはり企画する者、プロデューサーの責任は重大で、毎回「失敗したらやめよう」という気持ちでやっています。実はテレビの「コードギアス」という企画も、先が見えないものだったんです。話が進むに従って、どんどんキャラが増え、群像劇の様相を呈してきたんですね。そうするとどういうことが起きるかというと、担当声優さんはもちろん増えますし、毎回、新たな場所が登場したりして、実写でいえばセットの使い回しができなくなっていくんです。

 毎回、新セットを作るわけですから、これはもうお金も時間もかかります。谷口監督もそれは重々承知で「もっとゆるい話にもできるよ?」という提案もしていただいたのですが、同時にそうすることで「(この作品の)魂は抜けるけどね……」とも。そのときすでに、皆を「あっ」といわせるおもしろい作品になるのは間違いないという手応えがあったので、そのまま進めました。

 最終的に制作費も厳しいことになったのですが、それ以上に制作時間だけはいかんともしがたかったので、テレビ局のプロデューサーの方には、納品がギリギリになってご迷惑をおかけしました。

DVD、BDの売上げが収益の大部分

―― 「コードギアス 亡国のアキト」はどういった楽しみ方ができますか? 全4章構成ということですが、とりあえず今夏の第2章ではどうなっていくのでしょうか?

河口氏 アニメとしてはもちろんのこと、映画として楽しめる作品になっています。テレビではできないような表現方法も使っていて……元々、劇場版の赤根監督がそういった映画的な手法が得意なんです。テレビ版と同じものを作っても、「おもしろかったけど、谷口監督のほうがもっとよかったね」ということになってしまいますから。新しい主人公、新しいヒロインの物語という以外に、そういった意味でもテレビ版とは違いがあるんです。

 第1章でも序盤に主人公アキトが操るロボット兵器、ナイトメアフレーム「アレクサンダ」の変形高速戦闘シーンが盛り込まれていますが、第2章ではさらにバトルアクションも濃いものを用意しています。登場キャラクターたちのバックボーンも明らかになっていって、児童虐待の過去があったりするのですが……それをどう少年少女たちがはねのけていくのかといったところも見どころになります。年金問題、不正規雇用などいろいろな問題が現代社会にはあるわけですが、フィクションなんだけれども、そういったことを考えてもらえるように、実はそんなテーマも根底にはあるんですね。作品を観て、世の中が理不尽なら理不尽なりに変えていけるんだという意識、そんなエネルギーのようなものを持って帰ってもらえればうれしいです。

 企画によって変わる部分もありますが「コードギアス」シリーズでいうと、DVD、BDの売上げというのが収益の大部分なんです。劇場に足を運んでいただいて、DVD、BDを購入いただけると、また次のオリジナル企画作品をお目にかけることができるようになりますので、ぜひともお願いします(笑)。DVD、BDのパッケージもいろいろと工夫して、引っ越しのとき捨てられてしまわない「これは持っていかなきゃ」と思ってもらえる、宝物になるようなものにしたいと毎回、考えていますので。

画像 2013年夏、劇場公開予定の「コードギアス 亡国のアキト 第2章」。戦闘シーンはより激しいものとなり、登場人物たちの背景も明らかになっていくという

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