「イース」シリーズから考察する最新作「イースIV」は特別な存在(3/3 ページ)
美しいBGMが、聞くものの心を掴む
最初に述べたように、BGMや効果音も、PS2の能力を活かしたものへと作り替えられている。特筆すべきはBGMで、イースらしいフレーズや音が使われている(と、少なくとも筆者には聞こえた)点だ。パソコン版のIやIIをプレイしている人であれば、必ず賛同してくれるだろう。それに、BGMのダメなイースなどイースではあり得ないのだから、この点は高く評価すべき部分だ。
曲数はそれほど多くないが、場面に合ったものや雰囲気を盛り上げてくれるものなど、何度聞いても飽きないBGMが揃っている。宝箱を開けたときに演奏される耳慣れた曲も、透き通った感じが上手に出ていて感心した。
ゲームの曲なんて聴かない、という人もいるかもしれないが、この機会に是非とも耳を傾けてほしい。なぜイースシリーズといえばBGMが語られるのか、その理由が分かるかもしれない。BGMについては、今作でもっともほめたい部分の1つだ。
シナリオも新しくなったものの、マイナス要素もいくつか……
SFC版では、イベントでアドルがボコボコにされてしまう場面があった。そんなキャラじゃないのに……と、やるせない思いで見ていたものだったが、PS2版ではそんなシーンはもちろんなくなっている。
さらに、登場人物や根本的な設定はSFC版と同じものの、PS2版オリジナルのストーリーが展開され、見ていて違和感を感じないようにうまくまとめられている。これならば、ファンとしても納得がいくというもの。
話としてはIIとIIIの間という位置づけになっているが、これに関してはスタート直後に、イースIIに登場したランスの村の医者フレアからあれこれ質問されるので、これまでのストーリーが分からないという人でも問題ないはず。
こうしてみると、欠点がないように思える本作だが、やはり完璧というわけではない。わざわざ3段階に分けた攻撃ボタンだが、実際に使うのはほぼ小攻撃か中攻撃のみで、連続攻撃も終盤に少し使うだけ。何のために威力を分けたのか、その意図が今ひとつ見えてこない。
また、これはコンシューマ機のRPGにありがちな悪い癖だと思っているのだが、パソコン用RPGと違って好きな場面でセーブできない。特に、一度入ったら出てくるまでセーブできない洞窟では、剣を取って戻ってくる途中にやられてしまい、何度もやり直した苦い経験がある。
しかも、こういう場面に登場する敵だけが、やたらと強い。HPが多いとかではなく、動きがトリッキーなうえに出現数が多いため、連続してダメージを受けてしまい簡単にアドルのHPを減らさるのだ。
システムを変えたのであれば、敵の攻撃を受けたら一瞬無敵になり、連続でダメージをもらわないような仕組みにすべきだったのではと思うのだが……。他にも、SFC版では便利に使えたウィングが、PS2版では直前に訪れた街へしか戻れない(違う方法ですべての街へワープすることはできるが、中盤を過ぎるまでは使えない)仕様だったり、ロード時間が思ったよりも長いなど、不満に思える部分がないわけではないのが残念だ。さらには、オープニングムービーも同社が先月に発売したイースIIIと同じく、キャラ絵と名前が表示されるだけと寂しいのも、改善してほしかった点だ。
本作こそ、正史のイースIVとして語り継ぐべきものなのでは
最後に不満点を述べたものの、シリーズ全てをプレイしてきたファンとしては、本作こそがイースIVを名乗るにふさわしい作品だと、エンディングを見ながら思った。セーブできない洞窟で、何度ゲームオーバーになっても飽きずにプレイし続けられるシステムや、前向きな気持ちにさせてくれるBGM。一部を除けばほどよい難易度の敵やボスキャラなど、まさに初心に返ったイースシリーズと言えるだろう。
よく、某週刊ゲーム誌のレビュー記事を参考にする人がいるが、イースシリーズを愛する人やアクションゲームの好きな人、BGMでゲームを選ぶ人には、あんな点数など気にせずに(笑)、迷わず買ってほしい1本だ。
ラストまでは、普通にプレイすれば12時間前後でたどり着けるので、ストーリーを極めるために何度もプレイして、イースI・IIやIIIとのつながりを確かめるのもいいかもしれないだろう。
イースIV Mask of the Sun ‐a new theory‐ | |
対応機種 | PlayStation 2 |
メーカー | タイトー |
ジャンル | アクションRPG |
発売日 | 2005年5月26日予定 |
価格 | 6090円(税込) |
(C)1993,2004 Nihon Falcom Corporation
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