あなたは今の仕事で満足してる?――転職しまくり「FFIII」で職人を目指す「ファイナルファンタジーIII」レビュー(1/4 ページ)

スクウェア・エニックスからニンテンドーDS版「ファイナルファンタジーIII」が発売された。当時画期的だったジョブチェンジシステムもそのままに、グラフィックが一新された本作の、極私的プレイリポートをお届けしちゃいます。

» 2006年09月08日 00時00分 公開
[仗桐安,ITmedia]

16年の歳月を経て蘇る名作

 随分と早い段階から各種メディアで情報が公開され、ショップに行けば美麗なるムービーが流れていたので、首を長くして待っていたファンも大勢いたのではないだろうか。ニンテンドーDSで「ファイナルファンタジーIII」がいよいよ発売されたのだ。

 本作はファミリーコンピュータ版「ファイナルファンタジーIII」(以下FC版「FF III」)のリニューアル作品である。「ファイナルファンタジー」シリーズ(以下FFシリーズ)は、「ファイナルファンタジー」(以下「I」)、「ファイナルファンタジーII」(以下「II」)、FC版「FF III」がファミリーコンピュータで、「ファイナルファンタジーIV」(以下「IV」)「ファイナルファンタジーV」(以下「V」)「ファイナルファンタジーVI」(以下「VI」)がスーパーファミコンで発売された。

 シリーズを重ねるごとに「ドラゴンクエスト」と並ぶ家庭用ゲーム機を代表するRPGとして成長していき、ゲームファンたちの間で「ドラクエ派か? FF派か?」という論争も巻き起こったほどに大ヒットを記録した、言わずと知れた国民的RPGだ。その後ライバルであるはずのスクウェアとエニックスが合併した件はファンを大いに驚かせたが、それはまた別の話である。

 FFシリーズは前述した「I」から「VI」までと、プレイステーションにプラットフォームを移して発売された「ファイナルファンタジーVII」(以下「VII」)以降では旧・新という冠をつけてよいほどに決定的な違いがある。ファンならば既知のことだとは思うが、「VI」までは2Dグラフィックであるのに対して「VII」以降は3Dグラフィックへとシフトチェンジがなされているのである。「VII」以降の3Dで表現された世界を愛するファンも大勢いるが、「VI」までの2D世界の根強いファンがいるのも確かだ。そういった需要もあり、作品自体の持つ魅力もあり、FFシリーズの初期の作品は何度となくリメイクされてきた経緯がある。

 「I」と「II」は、それぞれワンダースワン、プレイステーション、MSX2でリメイクされ、果ては携帯電話のアプリとしても復活している。「I」と「II」を同時収録した「ファイナルファンタジーI・II」は、ファミリーコンピュータとゲームボーイアドバンスでリリースされた(ちなみにPSで「ファイナルファンタジーI・II プレミアムパッケージ」と言うのもあった)。また、「IV」から「VI」はプレイステーションに移植されている(「IV」だけはワンダースワンにも移植されている)。最近ではゲームボーイアドバンスで「IV」がリメイクされたりもしている。

 この流れを見ると「あれ…。僕は? ねえ、僕の存在は?」と涙目で問い詰めてくるFC版「FF III」の姿が想像できてしまう。そう。なぜだろう。なぜだか分からないのだけどもFC版「FF III」だけが、発売された1990年から一度も移植されていなかったのである。

 決してFC版「FF III」だけが売れなかったとか、つまらなかったとか、そういうことではない。事実、約140万本という売り上げでシリーズ初のミリオンヒットとなったのはFC版「FF III」だし、ジョブチェンジや広大な世界観などの魅力から、未だにシリーズ中でもかなり好きなタイトルだというファンの声も多く聞く(かくいう筆者は当時学生で、サルのように夢中でプレイした覚えがある。ラストダンジョンの過酷さも今では淡く忘却の彼方だ)。

 そんなバックボーンがあるので、今回の移植に対するファンの期待もかなり高かったのではないだろうか。しかも今やゲーム業界で大きなマーケットに成長したニンテンドーDSをプラットフォームに、3D表現を得つつも重厚なストーリーや軽快なジョブシステムなどはしっかりと残し、大胆によみがえらせているのだ。FC版「FF III」が流した涙も、きっと今頃は晴れていることだろう。

 ちなみにスクウェア・エニックスは前述したゲームボーイアドバンス版「IV」のリリース時に、FFシリーズの携帯ゲーム機完全移植プロジェクトというものを提唱していた。すでにゲームボーイアドバンスで「I」「II」「IV」が出ている状態での本作の登場、ということになる。今後はゲームボーイアドバンスで「V」と「VI」が発売される予定だ。

リニューアル版は、どこがどう作り直されたのか

 さて、そんな鳴り物入りで登場した本作は、FC版「FF III」と比べてどこが違っているのだろうか。

 大きな相違点は、何といってもグラフィックだ。従来の「I」から「VI」までの移植では、オマケ要素などの追加はあったとしても、その2D表現に手が加えられることはなかった。本家とリメイクでここまで大胆に様変わりしたFFは初めてではないだろうか。「オリジナルの2D表現がよかったのに……」と嘆くファンもいるだろうし、賛否両論分かれそうなところだが、個人的には今回の3D表現はプレイしていて非常に好感が持てた。

いつもはのほほんとした雰囲気を出している各キャラだが、場面によってはキリリと表情を変えることもある

 その理由としては、表現は3Dではあるがキャラはデフォルメされている、という点が挙げられる。2D派としては「2Dのほうが想像力をかきたてられる」という主張があるかもしれないが、本作におけるキャラたちも完全にリアルな描写で描かれているわけではなく、かわいらしさすら感じる3頭身で表現されている。そのデフォルメされた姿には想像力が入り込む余地が大いにあるのだ。

 逆に最近のリアルなポリゴンで描かれたFFに慣れている人もいるだろう。そんなプレーヤーのために、リアルなキャラ造形が秀逸なオープニングムービーが用意されているのだと思う。キャラのビジュアルを補完しつつプレイすれば、より生き生きと各キャラを思い描いて冒険に臨むことができるに違いない。


オープニングムービーを最初に観たときは圧倒された。現時点のニンテンドーDSで最も美しいプリレンダムービーだと言ってもいいだろう

 各キャラに最初から名前がついている、というのも賛否が別れそうな変更点だ。FC版「FF III」では4人の“みなしご”という設定のみが与えられており、プレーヤーはまず4人に名前をつけるところからスタートした。本作では4人にルーネス、アルクゥ、レフィア、イングズという名前が“一応”ついてはいる。しかし、初期段階で4人の名前は好きな名前に変更できるので、ディープなファンの方々もご安心いただきたい。与えられた名に感情移入してやるもよし、自由につけた名で自分流に楽しむもよし、という選択肢は与えられているのだ。

 グラフィックにせよ名前にせよ、現在の仕様に至るまでには開発者サイドの苦心があったんだろうなあと、邪推してしまったりする。新旧どちらのファンにも納得がいくように微妙な調整をした結果として、これらの要素があるのだろう。

 システム面は、どうだろうか。FC版「FF III」といえば、何と言ってもジョブチェンジシステムだ。「I」でも戦士がナイトになったり、白魔術士が白魔道士になるなどのクラスチェンジが存在したがFC版「FF III」のジョブチェンジシステムは、もっとフレキシブルで何でもありなものだった。そして本作ではFC版「FF III」よりもさらに柔軟性が高くなっている。

 FC版「FF III」ではキャパシティという要素が存在し、ジョブチェンジの際に非常に重要な関わりを持っていたが、本作ではキャパシティという要素がなくなっている。いつでもどこでも自由にジョブを変更できるのだ。その代わりに、ジョブチェンジ後は何度か戦闘をこなすまで各パラメータが下がる“移行期間”というものが存在しているので、大事な局面でのジョブチェンジは慎重を要する、という作りになっている。

 また、各ジョブが開放されるタイミングにも若干の変更があったり、ジョブの熟練値が与える影響などのバランスも全体的に見直されている。FC版「FF III」をやり込んだ人でも、おそらくこの点は新鮮さを持ってプレイできる点ではないかと思う。

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