もはやリメイク(移植)ではなくリニューアル(生まれ変わり)――絵も音も格段に進化した「ファイナルファンタジー」の原点「ファイナルファンタジー」レビュー(2/2 ページ)

» 2007年05月24日 16時39分 公開
[仗桐安,ITmedia]
前のページへ 1|2       

PSPで劇的進化! エクストラダンジョンも魅力的

 まず最初に触れておかねばならないのは、やはり“グラフィック”についてだ。今までのリメイク作品すべてと比べても確実に一線を画すその美麗なグラフィックには、正直ビックリした。ニンテンドーDSで発売された「ファイナルファンタジーIII」のように完全3D化を遂げているわけではなく、あくまでも2Dの描写をキープしてはいる。ファミコンのようなカクカクのドット絵でもなく、変にイラスト調になっているわけでもなく、初代のゲーム画面を究極的に2Dの限界まできれいにしてみたらこうなった、と言える進化を見せてくれている。

 この正統なグラフィック進化は、プレイしていてうれしくなってしまった。FC版「FF」の画面を改めて確認すると、自キャラにせよ敵キャラにせよ、その変わりっぷりがよく分かる。町の中やフィールド画面、戦闘画面などの背景もかなりのパワーアップを遂げており、完全にリニューアルされている。それでいてFC版「FF」が持つあのテイストはそのままなのだ。ハイエンドなOPムービーなどはプレイステーション版のものと同様で、PSPの処理能力であれば、それらのムービーの再生も難なくクリアだ。物語やキャラに感情移入する手助けをしてくれる。

 また、進化したのはグラフィックだけではない。BGMやSEも格段にレベルアップしている。普通に音を出してプレイしている分には「お、音もよくなってるな」と感じたくらいだったが、ちゃんとしたヘッドフォンをつけてやってみたら、本作における音の良さというのをちゃんと感じることができた。明らかに臨場感溢れるものに仕上がっていて、聴いていると気分が盛り上がってくる。ただのリメイクではない! と痛感させられたものだ。

 システム面で言えば、ゲームボーイアドバンス版からの仕様変更ではあるが、まほうの使用がMP制になったこともうれしい。FC版「FF」では、各レベルのまほうに関して使用回数が決まっており、これがキャラの成長に伴い増えていくというシステムだった。本作ではレベルが上がることにMPが増えていき、MPを消費することでまほうを使えるので、「ケアルを使いまくったら、使用回数が切れて使えなくなった。レベル4のまほうはまだ使える回数が余ってるのに……」ということもなくなったのだ。そういう意味では難易度は少し下がっているのかもしれない。

2D表現ここに極まれりである
PSPで美しいムービーを堪能しよう
残りMPを確認しつつ、まほうを使っていくべし

 FC版「FF」にはない要素としてはエクストラダンジョンの存在が挙げられる。ゲームボーイアドバンス版で存在したエクストラダンジョンは、本作にもバッチリ収録。終盤に控えている土、火、水、風のカオスを倒すことでそれぞれ入れるようになるダンジョンがあり、やり込み要素として楽しむことができる。大地のほこら、いやしの洞窟などそれらのダンジョンでは、レアアイテムが手に入る上に、歴代の「FF」シリーズのボスキャラとの戦闘も可能。ゲームボーイアドバンス版をプレイした筆者としてはエクストラダンジョンすら懐かしかったが、やはりPSPの刷新されたグラフィックとサウンドでやると新たな趣きがあるというもので、レアな武器や防具を探してずんずんと潜ってしまった。

 そしてそして。何と本作にはPSP版オリジナルのダンジョンも存在する! これこそは今までのリメイクではプレイできなかった領域、完全な新要素なので、今まで何度も初代「FF」をクリアした人でもプレイしてみる価値はあるだろう。

 時の迷宮と名づけられたこのダンジョンには、かなり過酷なシステムが採用されている。というのも、ダンジョン内を進むごとにHPが削られていくのだ。しかも、1度入ってしまうと全滅してゲームオーバーになるか、最下層にたどり着くまで出ることができない“行きはよいよい帰りは怖い(というか帰れない……)”恐ろしいダンジョンなのである。HPの減少を食い止めるには通常の回復のほかに戦闘時のコマンドを自ら規制するという選択肢がある。「にげる」や「まほう」や「アイテム」などのコマンドを不可にすることで戦闘が不自由にはなるがHPの減少を解除できるというルール。時と場合によってコマンドを使ったり封じたりしつつ進んでいかなくてはならない。このダンジョンはなかなか手強いので、コアな「FF」ファン、RPGファン向けと言っていい。その最下層に待つものが何なのかは、ぜひ自身の腕で確かめてほしいところだ。

本編には直接関係ないが、エクストラダンジョンはかなりアツい!

生まれ変わったFFを気軽に遊んでしまおう

 本作で筆者が唯一惜しいと思ったのは、若干のロード時間。戦闘に入るとき、メニューを出すとき、町に入るとき、店に入るとき、それらのタイミングで、ほんのちょっとではあるがロードで時間をとられる時がある。感じないくらいに短いロードで済む時もあるが、ほんの1、2秒とはいえ待ちの時間が生じることがあるのは残念だった。元々がロード時間のないタイトルだけに、余計に気になってしまうのかもしれない。ただ、プレイしていれば多少は慣れてきてあまり気にしなくなったのも事実。こういうもんだと割り切ればプレイできる範疇ではある。

 しっかりと「FF」しつつも、真新しく生まれ変わった本作。ケータイでも「FF」ができる時代だからこそ生まれたPSPクオリティで、ユーザーの目も耳も楽しませてくれる。天野喜孝アートギャラリーも収録されており、追加要素もなかなか魅力的だ。お値段がそこそこリーズナブルなのもいい。

 20年という年月を経たタイトルなので、ひょっとしたら若いユーザーは未プレイな人も多いかもしれない。「FF」はVIIから入ったとか、Xから入ったという比較的若いFFファンで、もし初代「FF」を未プレイならば、ぜひ本作を手にとってほしい。ケータイでプレイするという選択肢もあろうが、やはり最先端の描画と音で楽しめるというのはお得感がある。オールドファンなら数々のエクストラダンジョンに挑むとか、マニアックなパーティー編成で挑むなど、色々と遊びどころもあるだろう。

 とにもかくにも20周年というのはめでたいことだ。先日幕張メッセで開催された「SQUARE ENIX PARTY 2007」でも数多くの「FF」関連タイトルが発表され、まだまだその人気は健在で今後も長く続くであろうことを実感できた。そんな「FF」シリーズの原点を今ここで振り返ってみるのもいいかもしれない。PSP版「ファイナルファンタジーII」の発売も控えているので、2作続けてやってみるというのもアリなんじゃないでしょうかね。

「FINAL FANTASY」
対応機種PSP
メーカースクウェア・エニックス
ジャンルRPG
発売日2007年4月19日
価格(税込み)3990円
(C)1987,2007 SQUARE ENIX CO.,LTD. All Rights Reserved.
前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/14/news189.jpg 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  2. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. /nl/articles/2411/14/news187.jpg 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  4. /nl/articles/2411/14/news167.jpg 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  5. /nl/articles/2411/15/news016.jpg 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  6. /nl/articles/2411/13/news176.jpg 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  7. /nl/articles/2411/15/news009.jpg 高2のとき、留学先のクラスで出会った2人が結婚し…… 米国人夫から日本人妻への「最高すぎる」サプライズが70万再生 「いいね100回くらい押したい」
  8. /nl/articles/2411/15/news058.jpg 「腹筋捩じ切れましたwww」 夫が塗った“ピカチュウの絵”が……? 大爆笑の違和感に「うちの子も同じ事してたw」
  9. /nl/articles/2411/14/news023.jpg “膝まで伸びた草ボーボーの庭”をプロが手入れしたら…… 現れた“まさかの光景”に「誰が想像しただろう」「草刈機の魔法使いだ」と称賛の声
  10. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた