もはやリメイク(移植)ではなくリニューアル(生まれ変わり)――絵も音も格段に進化した「ファイナルファンタジー」の原点:「ファイナルファンタジー」レビュー(2/2 ページ)
PSPで劇的進化! エクストラダンジョンも魅力的
まず最初に触れておかねばならないのは、やはり“グラフィック”についてだ。今までのリメイク作品すべてと比べても確実に一線を画すその美麗なグラフィックには、正直ビックリした。ニンテンドーDSで発売された「ファイナルファンタジーIII」のように完全3D化を遂げているわけではなく、あくまでも2Dの描写をキープしてはいる。ファミコンのようなカクカクのドット絵でもなく、変にイラスト調になっているわけでもなく、初代のゲーム画面を究極的に2Dの限界まできれいにしてみたらこうなった、と言える進化を見せてくれている。
この正統なグラフィック進化は、プレイしていてうれしくなってしまった。FC版「FF」の画面を改めて確認すると、自キャラにせよ敵キャラにせよ、その変わりっぷりがよく分かる。町の中やフィールド画面、戦闘画面などの背景もかなりのパワーアップを遂げており、完全にリニューアルされている。それでいてFC版「FF」が持つあのテイストはそのままなのだ。ハイエンドなOPムービーなどはプレイステーション版のものと同様で、PSPの処理能力であれば、それらのムービーの再生も難なくクリアだ。物語やキャラに感情移入する手助けをしてくれる。
また、進化したのはグラフィックだけではない。BGMやSEも格段にレベルアップしている。普通に音を出してプレイしている分には「お、音もよくなってるな」と感じたくらいだったが、ちゃんとしたヘッドフォンをつけてやってみたら、本作における音の良さというのをちゃんと感じることができた。明らかに臨場感溢れるものに仕上がっていて、聴いていると気分が盛り上がってくる。ただのリメイクではない! と痛感させられたものだ。
システム面で言えば、ゲームボーイアドバンス版からの仕様変更ではあるが、まほうの使用がMP制になったこともうれしい。FC版「FF」では、各レベルのまほうに関して使用回数が決まっており、これがキャラの成長に伴い増えていくというシステムだった。本作ではレベルが上がることにMPが増えていき、MPを消費することでまほうを使えるので、「ケアルを使いまくったら、使用回数が切れて使えなくなった。レベル4のまほうはまだ使える回数が余ってるのに……」ということもなくなったのだ。そういう意味では難易度は少し下がっているのかもしれない。
FC版「FF」にはない要素としてはエクストラダンジョンの存在が挙げられる。ゲームボーイアドバンス版で存在したエクストラダンジョンは、本作にもバッチリ収録。終盤に控えている土、火、水、風のカオスを倒すことでそれぞれ入れるようになるダンジョンがあり、やり込み要素として楽しむことができる。大地のほこら、いやしの洞窟などそれらのダンジョンでは、レアアイテムが手に入る上に、歴代の「FF」シリーズのボスキャラとの戦闘も可能。ゲームボーイアドバンス版をプレイした筆者としてはエクストラダンジョンすら懐かしかったが、やはりPSPの刷新されたグラフィックとサウンドでやると新たな趣きがあるというもので、レアな武器や防具を探してずんずんと潜ってしまった。
そしてそして。何と本作にはPSP版オリジナルのダンジョンも存在する! これこそは今までのリメイクではプレイできなかった領域、完全な新要素なので、今まで何度も初代「FF」をクリアした人でもプレイしてみる価値はあるだろう。
時の迷宮と名づけられたこのダンジョンには、かなり過酷なシステムが採用されている。というのも、ダンジョン内を進むごとにHPが削られていくのだ。しかも、1度入ってしまうと全滅してゲームオーバーになるか、最下層にたどり着くまで出ることができない“行きはよいよい帰りは怖い(というか帰れない……)”恐ろしいダンジョンなのである。HPの減少を食い止めるには通常の回復のほかに戦闘時のコマンドを自ら規制するという選択肢がある。「にげる」や「まほう」や「アイテム」などのコマンドを不可にすることで戦闘が不自由にはなるがHPの減少を解除できるというルール。時と場合によってコマンドを使ったり封じたりしつつ進んでいかなくてはならない。このダンジョンはなかなか手強いので、コアな「FF」ファン、RPGファン向けと言っていい。その最下層に待つものが何なのかは、ぜひ自身の腕で確かめてほしいところだ。
生まれ変わったFFを気軽に遊んでしまおう
本作で筆者が唯一惜しいと思ったのは、若干のロード時間。戦闘に入るとき、メニューを出すとき、町に入るとき、店に入るとき、それらのタイミングで、ほんのちょっとではあるがロードで時間をとられる時がある。感じないくらいに短いロードで済む時もあるが、ほんの1、2秒とはいえ待ちの時間が生じることがあるのは残念だった。元々がロード時間のないタイトルだけに、余計に気になってしまうのかもしれない。ただ、プレイしていれば多少は慣れてきてあまり気にしなくなったのも事実。こういうもんだと割り切ればプレイできる範疇ではある。
しっかりと「FF」しつつも、真新しく生まれ変わった本作。ケータイでも「FF」ができる時代だからこそ生まれたPSPクオリティで、ユーザーの目も耳も楽しませてくれる。天野喜孝アートギャラリーも収録されており、追加要素もなかなか魅力的だ。お値段がそこそこリーズナブルなのもいい。
20年という年月を経たタイトルなので、ひょっとしたら若いユーザーは未プレイな人も多いかもしれない。「FF」はVIIから入ったとか、Xから入ったという比較的若いFFファンで、もし初代「FF」を未プレイならば、ぜひ本作を手にとってほしい。ケータイでプレイするという選択肢もあろうが、やはり最先端の描画と音で楽しめるというのはお得感がある。オールドファンなら数々のエクストラダンジョンに挑むとか、マニアックなパーティー編成で挑むなど、色々と遊びどころもあるだろう。
とにもかくにも20周年というのはめでたいことだ。先日幕張メッセで開催された「SQUARE ENIX PARTY 2007」でも数多くの「FF」関連タイトルが発表され、まだまだその人気は健在で今後も長く続くであろうことを実感できた。そんな「FF」シリーズの原点を今ここで振り返ってみるのもいいかもしれない。PSP版「ファイナルファンタジーII」の発売も控えているので、2作続けてやってみるというのもアリなんじゃないでしょうかね。
「FINAL FANTASY」 | |
対応機種 | PSP |
メーカー | スクウェア・エニックス |
ジャンル | RPG |
発売日 | 2007年4月19日 |
価格(税込み) | 3990円 |
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