レビュー
» 2007年10月25日 00時00分 公開

「忌火起草」レビュー:「アナタハ……ダレ……」――振り向くことすらおののく、Blu-rayノベル (1/2)

昨年「かまいたちの夜×3」でシリーズにひとつの区切りをつけた、チュンソフトのサウンドノベルシリーズ。しかし「忌火起草」がリリースされると、東京ゲームショウ2007をはじめ各所で大きな話題を呼んできた。この新作、何がここまで我々をワクワクさせてくれるのか。

[小城由都,ITmedia]

昨年の中村社長へのインタビューにヒントが!

 チュンソフトからサウンドノベルの新作が出るらしい――そんなニュースを聞いたとき、筆者は正直驚いた。昨年に発表された「かまいたちの夜×3」では、本サイトの原稿のためにチュンソフト社長、中村光一氏にインタビューできるということで、完全に遊びつくしていた。そのときの濃密なプレイ感を、いまだに引きずっていたから「もう新作!?」と感じたのだと思う。

 自分で担当した記事でもあったので、読み返してみた。すると、どうやらインタビューの最後にこんなお話を聞いていたらしい。

―― これからゲーム業界は、次世代機を中心に回っていくことになると思います。次世代機になることで、サウンドノベルは何か変わりますか?

中村氏 ハイビジョン対応になるとか(笑)。ドルビーサラウンド5.1ch、記憶媒体、いろいろと変化はあるでしょう。3Dを使ってリアルタイムに演出できるのではないか、などのいろんな話は出ています。けど、率直に言って“それって必要かなぁ”と思ってしまうんですよね。だから、基本としてのサウンドノベルは変化しないと思います。

 読者諸兄諸氏よ、どうですか、この自信。確かに「かまいたち×3」はボリュームこそ少し物足りなかったものの、内容としては最後のどんでん返しを含めて、素晴らしい体験をさせてくれた。とはいえ、美しいグラフィックも、気分を盛り上げる音楽も、“最新技術は、さして問題ない”と言い切り、サウンドノベルの根底にある面白さは不滅である、と胸を張る。

「少しの画と、面白い文章と、気分を盛り上げる音があればよい」

 と断言してしまったのだ。よくよく中村氏の言葉を読み返してみると、「忌火起草」で使われている技術はすべてここに集約されている。

  • ハイビジョンに……なった
  • ドルビーサラウンド5.1chに……対応した
  • 記録媒体も……当然変わった
  • 3Dを使ってリアルタイムな演出も……実はやっている!!

 あぁ、なるほど。もう去年のこの時点で、「忌火起草」はほとんど形を見せていたんですね。しかも、最新技術を駆使しつつも、サウンドノベルの確固たる面白さを引き従えて!! これは期待も高まるってものです。

はたして「忌火起草」とはなんぞや?

 本作の主人公は、牧村弘樹という20歳の大学生。野草研究サークルに所属しているが、サークルの実態はお遊び会。同じサークル内に、早瀬愛美という、気になる女の子がいる。ちょうどその頃、学生が次々と謎の焼死を遂げていく事件が頻発する。どうやら「ビジョン」と呼ばれる合法ドラッグを口にした人間が、そういう目に遭う様子だ。主人公の牧村弘樹は、ビジョンを口にしたことがないにも関わらず、焼死した学生たちと同じように、“妙な幻覚・幻聴”に悩まされるように。彼はこの呪いから逃れるため、野草研究サークルがビジョンを回し飲みした、とある屋敷へ向かう。そこは、謎の花“忌火起草”に囲まれていたのだった……。

主人公・牧村弘樹は、どこにでもいる普通の大学生。そんなキャンパスライフを疑似体験できる
早瀬愛美は、弘樹があこがれるヒロイン。もちろん、彼女との仲を中心に物語は回り始めるのだ

学生が突然焼身自殺をする、という事件が多発したことから、弘樹の周囲は急にざわめきだす
これがすべての元凶と見られているドラッグ、「ビジョン」。これを飲んだことによって……

 ようするに「忌火起草」とは、幻覚を起こす合法ドラッグ「ビジョン」の原材料であり、それを飲んだ学生たちが変死していく、らしい。はたして「忌火起草」という草花は本当に存在するのか。ちょっと検索エンジンで調べてみたくらいでは、まったく引っかからず、きっと架空の草なのであろう、と勝手に結論付けた。もし本当にあるのなら、誰か教えてください。

 画面に表示される静止画や動画、その上に流れる文字、そして登場人物がしゃべる声、場の雰囲気を盛り上げるサウンド。小説のような地の文を読みながら、映画を見るように画面、声、音楽、効果音を楽しむ。これが「忌火起草」というサウンドノベルのプレイスタイルだ。考えてみれば、これは新しい表現方法かもしれない。映画に主人公の地の文がついているのだ。“(小説+映画)÷2”というあつらえは、果たして吉と出るか凶と出るか。

香織という登場人物との会話は、文字には表示されない。あくまでも声で聴く形になる
この文字を読んでいる裏では、教授らしき老人が長々講義をしている音声がずっと流れている

ゲームシステムの各所にチュンソフトらしさが

オプションメニューでは、文字の大きさなどを変更することができる

 それでは、システム面を見てみたい。文字のサイズ変更や明るさ、サウンドの設定などといったオプション類はしっかりと用意されており、プレイしやすい環境を設定することが可能。十字キーの上を押せば、ログを読むことができる。ただし、セリフの音声は再度流れることはないので、会話は集中して聴いておいたほうがよいだろう。「街〜運命の交差点〜」で使われていたTipsのシステムが本作で復活しており、青くマークされている文字が表示されたら、△ボタンでチェックしてみると、その内容詳細が表示される。この文章を読んでいくだけでも面白いので、表示されたら「前に見た名前だからいいや」と言わず、必ずチェックしよう。違う情報を次々と読めるのである。

流れてしまった文章をもう一度読み直す機能も当然ついているので安心
青く表示されている「愛美」という文字がTips。これを表示すると……
文字に関する情報がつらつらと流れる。これを読み飛ばさないことをオススメする

 サウンドノベルは、すべての選択肢を経験することで、新たな物語が始まるという構造になっているため、過去の作品ではフローチャートを自分で作っていた。「かまいたちの夜×3」では、このフローチャートが自動で生成されたが、本作でもそのシステムが活かされている。どこでどんな選択をしたのかまで分かるため、すべての物語を見たい人にとっては、非常に親切な機能だ。エンディングのリストも用意されており、再度このエンディングが見たいと思ったら、再生すればよい。

フローチャートが用意されたので、読み逃しがないようにプレイすることができるのだ
もう一度見たくなったエンディングも、エンディングリストから再生できるように

 さて、本作にはお楽しみ要素が2つ用意されている。ひとつは、百八怪談集。108つという煩悩の数だけ表示されているろうそく。怪談がひとつ語られるごとに、ここで読み返すことができるようになる。すべてのろうそくが消えたとき、何かがおこるのか? それはプレーヤー自身で確かめてもらいたい。

 また、パスワードを入力する画面も最初から用意されている。これはきっと、物語を進めていくうちに、パスワードが表示されることがあるのだろう。入力すると、ボーナスシナリオが読めるらしい。これは絶対に見なければ。パスワードはひとつだけとは限らないかもしれない。そのあたりも、プレイしていくのに楽しみだ。

これだけ多くのろうそくが並んでいるだけでも結構ドキドキするもの。どんな怪談が語られるのか
パスワードを入力する場所がある、というだけで、「全部の選択肢を試さなきゃ」という気持ちになる
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