世界最大のゲーム競技大会「WorldCyberGames 2008」アジアチャンピオンシップ、シンガポールで開催――日本総合3位に入賞!!(3/3 ページ)

» 2008年08月13日 12時50分 公開
[松井悠ねとらぼ]
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日本勢大健闘――VF5優勝により総合成績3位に入賞

 WCGアジアチャンピオンシップでは、3〜4エリアを1グループにわけた予選リーグを初日に、その上位2エリアによる決勝トーナメントを2日目に行う日程で競われる。

 気になる日本勢の試合結果だが、まず、優勝確実と目された「バーチャファイター5 Live Arena」部門の熊田選手が各国の選手が熱い視線を送る中、メインキャラクターである酔拳の使い手「シュン」を華麗に操り危なげなく全勝で1位通過。そして、筆者が参加した「ギターヒーローIII レジェンドオブロック」部門も、なぜか全勝で予選リーグ通過。しかし、日本勢の快進撃もここまで。レースゲームの「ニードフォースピード プロストリート」部門、リアルタイムストラテジーの「Defence of The Ancient Allstars」部門では全敗、「FIFA08」部門も1勝2敗とグループリーグの突破はならなかった。

 2日目に行われた決勝トーナメント、ギターヒーロー部門の対戦相手は韓国。聞いた話では、オンラインランキング世界2位のつわものということで、胸を借りるつもりで挑んだ試合だったが……あえなくここで敗北。残るバーチャファイター5の熊田選手に期待がかかる。決勝トーナメント1回戦を順調に勝ち上がった熊田選手、準決勝の相手は、過去のWCGナショナルファイナル4連覇中のプロゲーマー「Tetra」選手。昨年までの「デッドオアアライブ」部門から、バーチャファイターに転向し、シンガポール代表として勝ち上がってきた実力派だが、熊田選手がなんなくこれを退け、決勝へと駒を進めた。

 

 決勝の相手は韓国の「Aoiyuka」選手。全キャラクターを使いこなし、対戦相手の使用キャラクターに合わせてキャラクターを変えてくるテクニカルプレイヤー。熊田選手操るシュンに対して、Aoiyuka選手の選んだキャラクターは多彩な構えが特徴の「レイフェイ」。試合は3本先取の試合を3試合先に勝利した方が勝ちという日本とは少し変わったルールとなった。試合マップはリングアウトありのオープンフェンスステージ。

 1試合目、2-2でフルセットまで持ちこまれた熊田選手はAoiyuka選手の怒濤のラッシュに押し込まれ、敗北。2試合目は、相手の攻撃をきっちりとガードしつつ、確実に反撃を決め、シュンを操る上で重要な要素となる「飲酒(酒を飲むごとに攻撃力があがり、特定の酒量で使える技が増える)」を繰り返す熊田選手。ファイナルラウンド、すでに16杯を超えた酒量のシュンが連続技をたたき込みパーフェクト勝ちで勝利を収め、これでイーブンに。さらに第3試合、流れにのった熊田選手が一気呵成(かせい)に攻め込み、最終ラウンドはパーフェクト勝利でリーチ。ここで一気に試合が決まるかと思われた第4試合、背を向けたレイフェイに背後投げを決め、パーフェクト勝利で2-2に持ち込んで迎えたファイナルラウンド。優勢かと思われたシュンが投げを決めてリング際に移動した瞬間、レイフェイの攻撃によってまさかのリングアウト。ここで勝敗はフルセット、第5試合にもつれ込むこととなった。

 第1ラウンド、一気に試合を運んだのはAoiyuka選手、怒濤の攻めと緩急をつけた投げでまずは1本先取。2ラウンド目、細かなコンボを繰り出しつつ相手の体力を地道に奪った熊田選手が相手の避けを読んでコンボを繰り出し1本取り返す。3ラウンド目もその流れで酒を飲みつつしっかりと取り、ここでリーチ。そして、運命の第4ラウンド。小刻みなステップで相手を翻弄するレイフェイにじわじわと体力を削られていくシュン。しかし、落ち着いて距離を取って酒を飲みつつ機会を図り、半分以上残っていた相手の体力ゲージをたった5発の攻撃で奪い去り、見事優勝を飾った。

 ちなみに、日本人選手がWCG国際試合で優勝したのは、2005年のグランドファイナル、シンガポール大会で行われた「デッドオアアライブ2 アルティメット」部門。奇しくも同会場での優勝となった。

 優勝した熊田選手は「オンラインで対戦プレイできるXbox 360版の発売によって、韓国選手をはじめ、アジアの選手のレベルは非常に高くなっていた。おそらく、これからももっと強くなってくると思う。もちろん、僕ももっと練習して強くなりたい」とコメント。現在は日本予選の開催の有無は未発表ではあるものの「11月に行われるWorldCyberGamesのドイツ本戦もぜひ出場して優勝したい」と意気込みを語ってくれた。

 また、熊田選手は今週末に日本で行われる格闘ゲームの祭典「闘劇」にも最新バージョンの「バーチャファイター5R」で出場することが決定している。そちらでの活躍も注目したい。

試合後は笑顔で握手。ちなみに対戦相手のマレーシアとタイでは「ギターヒーロー」がまだ発売されていないそうで……
健闘むなしく敗れてしまった日本DOTAチームだが、今後のさらなる活躍に期待したい
まさに横綱相撲の熊田選手。予選リーグではパーフェクトを連発、すべての試合を勝利し、その強さを見せつけていた

メインステージで行われる試合には、常に黒山のひとだかり。ほとんどの人が試合の勘所をつかんでいたのも印象的
見事優勝を飾った熊田選手には、賞金1000USドルが贈られた。賞金が出るのも海外の試合の特徴といえるだろう
海外での優勝経験もある熊田選手は多くのプレイヤーの憧れ。記念撮影をせがまれるシーンが多かった

日本ではまだまだこれから? e-sportsの今後

 日本では、まだまだ知られていない「e-sports」の世界。海外に誇る「ゲーム大国」である日本が「ゲーム大会大国」、「ゲーマー大国」ではないというのもそれはなかなか寂しいものがあるだろう。現在、世界で人気を集めるe-sportsタイトルの多くが日本で未発売であったり、リリースされていたとしても、まだまだ人気が薄いものが多い。これは、日本と海外の人気ゲームジャンルの違いによるものだが、競技性の高いゲームが今後海外で発展・流通していく中で、今後日本が取り残されていく可能性もある。

 日本では、まだまだ賞金制の大会が運営しづらいことや、ゲームに対する社会的な風当たりの強さ、海外試合を想定した練習場所の不足など、「ゲームを競技として捉えるe-sports」に逆風が吹き続けていることも事実としてある。しかし現在、日本でもe-sportsを啓蒙・普及させるための団体が産声を上げ始めている。それが「日本eスポーツ協会設立準備委員会」だ。8月には、WCGとは別の国際e-sports大会、ESWCの運営協力を行い、日本でもe-sportsを盛り上げるために地道な運動を行っている。

 もちろん、「ゲームはゲームだ、スポーツである必要なんてどこにもない」という人も多くいるだろう。競技志向の高いゲームの場合、明確に「勝者」と「敗者」が区別されるために、協力プレイゲームの人気が高い日本ではなかなか根付かないことも想像できる。しかし、今握っているコントーラー、そしてマウスが「世界へとつながっている」というのもなかなか素敵な話ではないだろうか。

 海外の多くのプレイヤーのほとんどが日本のゲーム、そして日本のゲーマーを尊敬してくれている。筆者も数多くの国際大会に参加した中で、それを肌身で感じることができているし、今回の日本選手団もそうだろう。海外の選手たちは真剣にゲームをプレイし、勝利を望んでいる。その真剣な気持ちに言葉ではなく、プレイで応えるのも、きっとひとつの交流になるのではないか。

 まずは、一度、国際試合が行われるゲームをプレイし、試合に出てみてはどうだろうか。それは、きっとあなたのゲーム感を大きく変えてくれるに違いない。

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