「リアルサウンド 風のリグレット」の画面写真を作ってみたゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(1/6 ページ)

連載第79回は、「リアルサウンド 風のリグレット」(ワープ)。“ゲーム界の風雲児”こと飯野賢治氏の作品です。最大の特徴は、ゲーム画面が一切なく、音だけでゲームが進行すること。でも、この記事まで画面写真がなかったら味気ないので、あえてこのゲームの画面写真を、想像で勝手に作ってみました。

» 2009年10月16日 10時35分 公開
[ゲイムマン,ITmedia]

飯野賢治氏に憧れた

南紀白浜温泉の白良浜(しららはま)にて撮影。びっくりするほど真っ白い砂浜。本州とは思えない

 前回、「チョロQ」の記事の中で、「チョロQ HG2」の挿入歌を歌っていたピンクサーディンについて書いたが、先日、ついにライブでその歌声を聴くことができた。柏駅東口のダブルデッキで行なわれた“音街かしわ”というイベントで、ストリートミュージシャンのコンテストが行なわれていて、その決勝戦にピンクサーディンが出場していたのだ。

 ボーカル・TSURUさんのパフォーマンスというか、お客さんを引きつける力がすごかった。「チョロQ HG2」で流れる、「爪痕」と「Blue Sky」を生で聴けて感動。特に、ゲーム内では夜にしか聞けなかった「Blue Sky」を、初めて青空の下で聴くことができて良かった。

 さて今回は、青空つながりで、パッケージやマニュアルに青空の写真が使われていた、「リアルサウンド 風のリグレット」(ワープ)を取り上げてみよう。

 1990年代後半、最も目立つ活動をしていたゲームデザイナーが、株式会社ワープ代表取締役社長(当時)、“ゲーム界の風雲児”こと飯野賢治氏である。

 飯野氏はまさに、16ビットから32ビットへ移行するゲーム界の、変化を象徴する人物だった。3DOで発売され、後にセガサターンやプレイステーションに移植された「Dの食卓」は、従来のゲームとは異なり、ポリゴンを生かして映画的な映像を作り、ゲームにまったく新しい表現方法を取り入れた。「Dの食卓」が作った映画的表現は、現代の数々のゲームに影響を与えているといえよう。

 ゲームのインパクトも強烈だったが、ある意味もっと強烈なインパクトを持っていたのが飯野氏自身。大柄で長髪で服は黒ずくめという、今までゲーム業界にはいなかったタイプの風貌。(プロレスラーの高野拳磁選手や冬木弘道選手に似ていると思ったのはわたしだけだろうか?)

 ゲーム専門誌への露出でゲームファンに認知された後、「エネミー・ゼロ」のテレビCMに自ら出演して、ゲームファン以外の人々にも知られるようになる。

 飯野氏は1970年生まれ。当時、1950・60年代生まれの有名ゲームデザイナーやライターは多かったが、70年代生まれは少なかった。要するに、上がつかえている世代だったのだ。

 ちなみにわたしは飯野氏より1歳だけ年下だったが、飯野氏が「Dの食卓」をリリースしていた頃は、某ゲームメーカーで異動に次ぐ異動に見舞われ、すっかりくすぶっていた(まあ、わたしがあの会社で役に立つような人間ではなかったということなんだけど)。

 だから、同世代の希望の星として、飯野氏の活躍には期待していた。後に“氷河期世代”や“ロストジェネレーション”などと呼ばれるほど、就職困難に直面した世代で、わたしも正直、勤めた会社は第6志望だった。そんな状況だったから、自分で会社を興し、ゲーム界で派手に活動していた飯野氏に、憧れを抱いていたのだ。

 「Dの食卓」「エネミー・ゼロ」をヒットさせた飯野氏が、テレビゲーム界の常識を覆す、意欲的な作品を作り上げた。それが「リアルサウンド」シリーズ第1弾、「風のリグレット」だ。

テレビを使わないテレビゲーム

 主人公・野々村博司は大学生。上京して、小学生時代の初恋の女の子・桜井泉水(いずみ)と再会し、つき合っている。博司は当時、女の子と“駆け落ち”の約束をした。彼女が2学期に転校してしまうことを知り、永遠に夏休みが終わらないよう“駆け落ち”することに決めたのだ。

 しかし、待ち合わせ場所の時計台に現れなかった彼女は、2学期が始まると転校してしまっていた。博司が泉水に、当時なぜ時計台に来なかったのか聞いても、泉水は「忘れちゃった」とはぐらかす。

 ある日、博司は泉水の勤める会社の面接を受けることになり、2人で地下鉄に乗って会社へ向かっていた。ところが彼女は突然、何かを思い出したように電車を降り、そのまま博司の前から姿を消してしまうのだった……。

 1997年に発売されたセガサターン用ソフト「リアルサウンド 風のリグレット」は、従来の枠組みで分類すれば、アドベンチャーゲームということになるだろう。ストーリーの途中に分岐があり、プレイヤーがどれを選ぶかによって物語の内容が変わる。

 最大の特徴は、映像が一切なく、音だけで進行することだ。

 登場人物の会話と、主人公・博司のモノローグで物語は進む。分岐点に来るとチャイムが鳴って、博司のセリフが2つか3つ提示される(もちろんこれも音声で)。プレイヤーは方向キーでセリフを選んで、Aボタンで決定するのだ。

 「Dの食卓」で映像表現へのこだわりを見せた飯野氏だが、逆に“映像を見せないこと”へのこだわりもあったようだ。「エネミー・ゼロ」では、敵が見えないことによる怖さの演出も試みている。

映像信号が来ていないので、画面写真はこうなる。ディスクを入れ替えるために蓋を開けたときだけ、セガサターンのマルチプレイヤー画面が表示される

 キャストがやたら豪華なことも当時話題となった。野々村博司役が柏原崇さん。高村菜々役が菅野美穂さん。桜井泉水役は篠原涼子さんである。今や「理想の上司ランキング」で女性2位と3位に入る女優さんが、メインキャストを演じていたのだ(2009年・明治安田生命調べ:ちなみに1位は真矢みきさん)。ほかに裕木奈江さんや前田愛さんも出演していた。

 脚本は「東京ラブストーリー」の脚本家だった坂元裕二氏。後に「愛し君へ」、フジテレビ版「西遊記」、映画版「世界の中心で、愛をさけぶ」など数々の有名作品を手掛けた。

 音楽はムーンライダーズの鈴木慶一氏。ゲーム関連では「MOTHER」(任天堂)のBGMでも有名。またエンディングには、矢野顕子さんの「ひとつだけ」という曲が使われている。

ハーブの種や、点字の文章(「点字の説明書を用意しています」という案内)が同梱されていた

 このように、飯野氏がそうそうたる布陣を敷いて作り上げた「風のリグレット」だったが、「Dの食卓」「エネミー・ゼロ」に比べると、売り上げは芳しくなかったようだ。もしかしたら、画面写真がないために、ゲーム雑誌の記事で取り上げられても印象が薄かったのかもしれない。

 ということは、今わたしが書いているこの記事も、印象が薄くなる危険性がある。それはまずい。

 そこで、ゲーム中に出てくる風景や建物に近いイメージの写真を撮って、「風のリグレット」の画面写真を、勝手に作ってみることにした。

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