遊んでいる姿が楽しそうなのが大事――マリオの父、宮本茂氏の設計哲学(後編)(3/5 ページ)

» 2010年02月12日 08時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

対戦に逃げてはいけない

宮本 それから、「遊んでいる姿が楽しそう」というのがすごく大事な気がするんです。5年ほど前にGDC(Game Developers Conference)でスピーチすることがあったのですが、そのころ「これがテレビゲームだ」というイメージ写真が出てくる時に必ず、小学生の男の子が暗い部屋でテレビの前にいて、目に画面の絵が映っているみたいな写真が使われていたのが悲しかったのです。

 僕らにしたら「ゲームってそんなんじゃないでしょ」と思うのですが、「あれが世の中のゲームのイメージということを何とか払拭したい」ということで、「うちの嫁さんにゲームを遊ばそう」というプロジェクトを1人で立ち上げて、嫁さんをゲームにはめて、今ずいぶんはまりました。今は『レイトン教授』をクリアしましたけどね。最近では自分で勝手にカートリッジを変えたり、Wiiを立ち上げたり、ダウンロードしたりできるようになりました。

『レイトン教授と不思議な町』

 ビデオゲームはインタラクティブメディアとして本当に魅力あるものなので、いろんなことに使えるし、「そんな偏見を持たないでよ」みたいなことをずっと考えています。究極的には、家族みんなでわいわい遊んで、ゲームでずっと死んでいる人も笑っている、「くそう」と言いながら笑っているという姿をすごく作りたくて、それが割とうまくできたので世界中に通じているんだと思います。

河津 『New スーパーマリオブラザーズ Wii』は画面の前で最大4人で遊ぶという形式ですが、オンラインでつないでもっと多人数で遊ぶということは考えていましたか?

宮本 大勢で遊ぶのが面白いなら、オンラインでもっと増やしてみたらもっと面白いと思います。しかし、そういうゲームを作れる人はたくさんいると思うんですね。自分の作れるものの量って決まっていますよね。だから、任天堂として(オンラインで多人数で遊ぶゲームを)作ることになったなら、「誰かが作ったらいいのに」とか思うかもしれない。それが上手な人はたくさんいるので、僕は「その場で一緒に遊ぶ人たちがコミュニケーションできるゲームを作っていこう」とずっと思ってきました。これからはちょっと分からないですが。

 もう1つは「ゲームデザイナーとして対戦に逃げてはいけない」というのがあります。対戦したら何でも面白いですよね。どんぶりとサイコロが2個あったら、もう無人島にいても大丈夫ですよね(笑)。人間って不思議なんですけどね。僕はそんなのやってないですけど、例えばサイコロを振ってゾロ目が出たら勝ちとして、100円玉を置いてサイコロ振って、次の人もまた100円玉を置いてサイコロ振って、100円玉が積み上がってきたらドキドキしますよね。

 ゲームデザインではそういうものも利用するのですが、本質的にはその人が面白いものを見つけてきて紹介するというのがゲームデザインと思っています。だから、任天堂で対戦ゲームを作る時には、「対戦したら面白いから、対戦せずに作れよ。対戦せずに作った方が、最後対戦したらすごい面白くなるから」と言います。そういう意味では、ネットワークありき、マルチプレイありきを前提にスタートするのは、ちょっと自分の逃げのような気もして微妙なところです。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/22/news018.jpg 猫だと思って保護→2年後…… すっかり“別の生き物”に成長した元ボス猫に「フォルムが本当に可愛い」「抱きしめたい」
  2. /nl/articles/2411/22/news184.jpg 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  3. /nl/articles/2411/24/news040.jpg 海で“謎の白い漂流物”を発見、すくいあげてみると…… 2億1000万再生された結末に「本当によかった」「ありがとう」【チュニジア】
  4. /nl/articles/2411/23/news031.jpg スーパーで売っていた半額のひん死カニを水槽に入れて半年後…… 愛情を感じる結末に「不覚にも泣いてしまいました」
  5. /nl/articles/2411/24/news029.jpg 難問の積分計算をホワイトボードに書き置きしておいたら……? 理系大学での出来事に「かっこいい」「数字でつながる感じいいな」の声 投稿者にその後を聞いた
  6. /nl/articles/2411/22/news087.jpg 「うおおおおお懐かしい!!」 ハードオフに3300円で売っていた“驚きの商品”が140万表示 「ガチのレアモンや……」
  7. /nl/articles/2411/24/news058.jpg 夫妻が41年ぶりに東京ディズニーランドへ→“同じ場所”での写真撮影時に「キャストの粋なサポート」明かす
  8. /nl/articles/2411/23/news025.jpg 「大企業の本気を見た」 明治のアイスにSNSで“改善点”指摘→8カ月後まさかの展開に “神対応”の理由を聞いた
  9. /nl/articles/2411/23/news029.jpg カマキリを操る寄生虫「ハリガネムシ」食べてみた 未知すぎる“衝撃的な内容”に震撼 「正気を疑う」「鳥肌立ったわ」
  10. /nl/articles/2411/24/news011.jpg ミスドのディグダを買おうとしたら…… とんでもなく疲れていそうな見た目に「悲壮感がすごい」「朝帰りのディグダ」と46万いいね
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた