今だから言える「かまいたちの夜」の秘密とは……!? 満員御礼となった「夜のゲーム大学5」で語られたこと:日々是遊戯
去る11月7日、阿佐ヶ谷ロフトAにて行われた「夜のゲーム大学5」。3人の個性派ゲーム作家が、それぞれの「処女作」「出世作」、そして「遺作」を語る!
衝撃の「ヤバい話」は記事の最後に!
「今日は『かまいたちの夜』について、20年間ずっと言わなかったことを話します。これはたぶん、今となってはたぶん僕と中村光一さんしか知らない。本当にヤバい話なので、絶対にツイートしたりしないでくださいね(笑)」(麻野一哉氏)
――そんなオープニングトークで幕を開けたのは、飯田和敏氏、麻野一哉氏、米光一成氏ら3人の個性派ゲーム作家が深夜のテンションで様々な「授業」をお届けする「夜のゲーム大学5」。第5回目となる今回のテーマは「Play or DIE ゲームの未来と再生」ということで、3人の処女作・出世作・遺作について触れつつ、ゲーム作家の人生を横断的に俯瞰する試み。約3時間半にわたる「授業」の中では、「アクアノートの休日」や「かまいたちの夜」「ぷよぷよ」といったヒット作品の意外な事実も明らかになり、ゲームファンとしてはいつも以上に聞き応えのあるイベントとなりました。
名作「アクアノートの休日」はいかにして生まれたか?
イベントは3部構成。飯田和敏氏が講師を務めた第1部では、飯田氏の処女作「アクアノートの休日」がいかにして作られたかが語られました。
「ゲーム会社に入ってから6年くらい下積みの期間があったんですが、それで会社がほとほとイヤになって、辞める前に1回くらい好き勝手してやろう、と思って作ったのが『アクアノートの休日』」(飯田氏)
飯田氏によれば、「アクアノートの休日」を作る際に影響を受けた作品のひとつが「テトリス」。例えば1日中「テトリス」を遊んでいると、ふと外に出た時、ビルや窓ガラスの隙間をブロックで埋めたくなる。そういう「知覚が変容する感じ(飯田氏は「インスタント瞑想状態」と表現)」をゲームにできないか――というのがひとつのきっかけだったのだそう。
また「テトリス」と並んで名前があがったのが、マルセル・デュシャンやジョン・ケージら近代の美術家・音楽家たち。飯田氏はデュシャンの「自転車の車輪」や、ケージの「4分33秒」といった作品を紹介しながら、「アクアノート」はこれらの芸術作品の文脈をテレビゲームに置き換え、なぞったもの」と説明。
「デュシャンはレディ・メイドといって、芸術というのはすでにそこにあって、観客に発見されるのを待っている――という考えを持っていた。例えばキャンバスを真っ黒に塗りつぶしただけの絵でも、見る人によってはまったく違うものが見えてくる。『アクアノート』は海を探索するゲームですが、基本的には真っ青な海中を淡々と進んでいくだけ。でも、その青一色の中に何を感じるかはユーザーによって違ってくる」と飯田氏。当時から「これはゲームなのか?」「目的も、クリアもない作品をゲームと呼べるのか?」と様々な議論を呼んだ「アクアノート」ですが、そもそもアイデアの段階から他のゲームとはまったく違った発想で作られていたことが分かりますね。
また飯田氏の授業では、スクリーンを非常にうまく使い、ゲーム画面とプレゼン用のスライドをリアルタイムでミックスしながら映し出していたのが印象的でした。飯田氏のマイクにも若干エコーがかかっていて、まるで実際に海底を散歩しながら授業を受けているような感覚。何でもエンターテイメントにしてしまう、飯田氏らしい授業となりました。
今だから明かせる「かまいたちの夜」衝撃の事実
第2部では、麻野一哉氏が自身の出世作「かまいたちの夜」について振り返る展開。当時シナリオを担当した小説家の我孫子武丸氏もゲストとして登場し、意外な開発の裏話なども披露されました。
中でも衝撃的だったのはやはり冒頭の「ヤバい話」……なのですが、これについてはまた後ほど。実はイベント終了後、楽屋で麻野氏から掲載の許可はいただいたのですが、ちょっとネタバレを含む内容になりますので、記事の最後で発表することにしました。
そのほかトーク内容で印象に残ったのは、我孫子氏がどのようにして開発に関わったのか――というくだり。そもそもなぜ我孫子氏を起用したかについては、「『弟切草』の発売後、とにかくミステリー作家と呼ばれている方たちに片っ端からソフトと本体を送りつけようということになった。それで返事をくれたのが我孫子氏だったんです」と麻野氏。ただ、このとき我孫子氏はすでに自分で「弟切草」を買ってプレイしており、結局ソフトとハードは送らずじまいだったそうです。
一方、我孫子氏の方はというと、「最初は“監修”程度のつもりで引き受けたのに、いつのまにか全部やることになっていた」と当時を振り返りながら苦笑い。また「ツールのようなものを用意してくれるのかと思ったら、全然なかった」そうで、結局自分で分岐の管理なども行いながら執筆するハメになったとのこと。今でこそテキストアドベンチャー用の製作ツールが多数ネットで公開されていますが、当時はそんなものはなかったんですね。また、背景にキャラクターのシルエットを重ねるというのも我孫子氏の案だったそうです。
「ぷよぷよ」作者が考える「遺作」とは……?
最後は米光一成氏のターン。前の二人が「処女作」「出世作」だったのに対し、米光氏は自身の「遺作」をテーマに、これまでのゲーム開発者人生を振り返っていきました。
特に面白かったのが、コンパイル時代の「ぷよぷよ」開発のくだり。米光氏によれば、もともと「ぷよぷよ」はメインの仕事ではなく、仕事が終わった後に放課後感覚で作っていたゲームだったそう。また開発当初のタイトルは「ヒトヒト」で、ヒト型のキャラクターが手をつないだり、肩車したりしながらつながっていく、「人類愛」をテーマにした内容だったのだとのことです。
それがなぜ現在の「ぷよぷよ」になったのかというと、あるときスタッフが「……でも結局、同じ肌の色のヒト同士でしか手をつながないんですよね」と話したのがきっかけ。それを聞いた米光氏は「これはダメだ!」と思い直し、結局「ぷよぷよ」になったのだそうです。
その後米光氏は、コンパイル時代→スティング時代→フリーランス時代……と時代を進めていき、最終的には「やがては労働も、お金も、競争もなくなる」と、大胆な「米光予言」を披露。また最後には「予言が成就したある日、日本のあちこちで同時多発的に僕の死体が発見されます」となにやら意味不明な発言も飛び出し、会場は一瞬不穏な空気に包まれます。
「その後も米光死体は増え続け、人々がいいかげん飽きはじめた頃、最初の遺体の中からナゾの数字が書かれた包帯が見つかります。そしてその暗号をめぐって、人々がいっせいに謎解きをはじめる……というのを、僕の『遺作』にしたいと思います(笑)」(米光氏)
……と、最後は本気なのか冗談なのかよく分からない「遺作」構想を明かし、イベントを締めくくった米光氏なのでした。ちなみにこの企画「乗ってもいいという方はぜひお声がけください」(米光氏)とのこと。いるのかホントにそんな人……。
他にもいろんな事実が明らかになりました
そのほか、ここではとても書ききれないほどの秘話、裏話が披露されたのですが、このまま眠らせてしまうのももったいないので、覚えているかぎり箇条書きにしてみました。
【飯田氏】
- 「アクアノート」では「イーバ」という脳波測定器を使ってデバッグを行い、バグがあっても、脳波が安定していればOKということにした
- 飯田氏は「アクアノート」のマップをデザインする際、マップに偶然性を取り入れるため、真っ白な紙にコーヒーをこぼし、それをスキャンしてそのまま海底の高低とした
- 飯田氏が最初にプレゼンしたのは「アクアノート」とはまったく別のゲーム。しかし、いざプレゼンしてみるとあまり反応がよくなかったため、とっさに部屋にあったラッセンの絵を指さして「海底探索のゲームはどうでしょう」と提案したところ、それが通って「アクアノート」を開発することになった
【麻野氏・我孫子氏】
- 「かまいたち」開発当時、中村光一社長をはじめチュンソフトのスタッフはみんなスキー好きで、我孫子氏がスキーペンションに泊まったことがないと言うと、「それはよくない」と言われ、半ば強制的にスキーへ連れていかれた(我孫子氏)
- 元々「かまいたち」の背景は実写の予定ではなかったが、ある日突然「実写になりました」と言われて驚いた(我孫子氏)
- 「かまいたちの夜」というタイトルは、我孫子氏がデビュー前に書いた小説の名前から。内容は雪山で起こったバラバラ殺人事件を扱ったもの、という点以外はまったく別(我孫子氏)
- スノーモービルがジャンプするシーンの撮影は、雪の中に穴を掘って、その上を実際に飛んでもらって撮影。しかしいざ出来上がった写真を見るとまったく映っておらず、後からスノーモービルだけ合成で追加することに(麻野氏)
- ペンションでの撮影の際、窓ガラスを割るシーンで「すいません、窓ガラス割ってもいいですか……」とお願いしたところ、「それはヨーロッパの特注品なので……」とオーナーに断られた(麻野氏)
- モデルとなったペンション「クヌルプ」に地下室はなく、地下室のシーンは別途セットを組んで撮影されたもの(麻野氏)
- 結局実装はしなかったが、俊夫がみどりの後を追って拳銃自殺するエンディングの別バージョンとして、銃声の後、俊夫が「いっぺん撃ってみたかったんだよね」としれっと戻ってくるエンディングを入れようか最後の最後まで悩んだ(麻野氏)
- よく聞かれるが、開発中の心霊・恐怖体験などはまったくなかった。強いて言えば、一度ものすごく疲れていた時に、電車の中でかなしばりにあったくらい(麻野氏)
- PS版のパッケージ裏に「完全密室殺人事件」と書いてあるが、ホントは全然密室じゃないのにそう書かれてしまい、麻野氏は事あるごとに「雪山という名の密室」などとフォローしていた(麻野氏)
- さらに悲劇はそれで終わらず、続編「かまいたちの夜2」のパッケージでは「陸の孤島」と書かれてしまった。「これはもう、フォローのしようがない(笑)」(麻野氏)
【米光氏】
- 米光氏がゲーム開発の世界に足を踏み入れるきっかけとなったのが、MSXの「ロードランナー」。ちなみにMSXは当時、バイトの面接で「プログラムできます」と言ってしまい、あわててBASICの勉強をしようと買ったもの(米光氏)
- フリーになった米光氏が、当時あちこちに提案していた企画が「5分くらいでサクッと終わって、なおかつみんなでコミュニケーションしながら遊べるゲーム」。今で言うソーシャルゲームのようなものだが、当時のメーカーには見向きもされなかった(米光氏)
- 最近では電子書籍にも興味を持ち、「電書フリマ」などのイベントも主催している米光氏だが、それも米光氏にとっては「ゲーム作りの延長」(米光氏)
さて、そして最後に麻野氏の「ヤバい話」ですが、前述のとおり「かまいたちの夜」についての重大なネタバレを含みますので、未プレイ・未クリアの人は見ないでくださいね。また、あくまで「限定」掲載許可ということなので、恐れ入りますがTwitterでのリツイートなども厳禁です!
それでは、どうしても見たいという人だけ、この先を読んでください。麻野氏と中村光一氏しか知らない、「かまいたちの夜」にまつわるヤバい話とは……。
- いくら死体をバラバラにしても、「スキーバッグには絶対に入りきらない」(麻野氏)
……。
……。
……あれ、もしかしてちょっと拍子抜けでしたか? でも、遊んだ人ならこれがいかに重大なことか分かるハズ。分からないという人は、この機会にぜひもう一度「かまいたちの夜」をプレイしてみてください!
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