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くねくねハニィの最近どうよ? 緊急! アメリカの市場とE3の今後くねくねハニィの「最近どうよ?」(その12)(2/2 ページ)

相変わらず周期がよく分からない「最近どうよ?」第12回目。北米市場に出張して行ってきて帰ってきたばっかりのくねくねハニィが送る「緊急! アメリカ市場とE3の今後」。E3を来週に控えて何か言いたいことがあるらしい。緊急なので熱いうちに読むべし! ってことで、よろしこっ。

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E3と小さな展示場

会場となるサンタモニカの街並みです。いやぁ〜西海岸って感じですなぁ

 もうすぐ(7月11日〜13日、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンタモニカにて行われます)開催される「E3 Media & Business Summit」のお話。当初のE3の目的は、小売店に対する受注のための展示会だったのに、メディア対応や他のビジネスなどのために本来あるべき姿ではなくなったとか言われ、今年から規模の小さなポストE3ということになったんだ(「最近どうよ?」第1回目を見てね)。

 各社(ハードメーカーおよびソフトメーカー)がスケジュールに沿ってサンタモニカ周辺のホテルで記者会見を行うのね。それはともかく、タイトル展示はBarker Hangarというサンタモニカの飛行機用ドック(整備場)で行われるの。この展示者リストと会場マップを見てびっくり……。

 入り口から入って、最初に大きい(いや、大きくはないんだけど、他のブースとの比較した場合)ブースが4×3。一列目はハードメーカーさん3社とEA。

 大手ソフトパブリッシャー様がその後に続くんですが、その大きいブースの裏に小さめのブースが多数あるんですけど、あれ? 全部埋まってないじゃん……。イヤな予感。それにしても小売店さんと打ち合わせするにしては打ち合わせスペースもほとんどないし……と思っていたところ、何と小売店さんはゲーム系じゃない流通さん数社がいらっしゃるだけとのこと。え? それって最初の話と違うじゃん!!

 アメリカのパブリッシャーがそろって言うには「日本からわざわざ来る価値なし」。えええぇ、だって唯一の情報源なのに……。よくよく聞いてみると、各メーカーともすでに大手小売店には「E3でどのタイトルを展示して、どのような発表をするか」を報告済とのこと。あら。なので小売店さんからするともうすでに知っている情報やソースなのでわざわざ出かける必要もないとのこと。あーあ。こうなっちゃうと、結局は業界向けでもなく、小売向けでもなく、ただ単にメディア向けのイベントになってしまったわけだ。あ、ハニィはメディアだったんだ!(笑)。ってことでハニィにとっては行く価値は残ってるってことか……。

 ハードメーカーの大きな発表があるので、それなりの価値はありまするが、ソフトに関してはメディアキット(メディア向けの素材集)を渡してしまって、インタビューにさえ答えればよしなに書いてくれるので、今までのような派手なプッシュはいらないってことなのかなぁ。予想はしていたけど、あんまりにも小さい。

一応、プレス関係者だけは様子見で集まるってことですが……北米向けの発表しかないって見解も……。青い空がまぶしいなぁ

 次世代機向けにソフトを作るとなると、それなりのお金とそれなりの人数を要して作られるわけで、そうそうたくさんのタイトルを一気に開発して発表できるわけでもないので、タイトル数の減少は否めないよね。そういう意味でも今までのE3のようにいかなくなるのはやむを得ないというか、必然だったのかもしれないね。

 あ、展示会自体は参加者が1万人に満たない小さなものだけど、世界中から業界人が集まるって言う意味では周辺のホテルではいろいろなミーティングが行われているの。とは言え、規模的には例年に比べるとやっぱり小さい。基本的にはパブリッシャーもデベロッパーもわざわざサンタモニカにいらっしゃることはないみたいです。必要最小限の方々が「やむを得ず」集まる、とはよく言ったもんです。

どこへ行く? E3

 我々日本人業界者とすれば世界一のゲームショーだったE3。では、北米のパブリッシャーの面々はどう考えていたのかな? ってことでインタビューしてみたところ、皆様おっしゃるのは「E3は業界にいる人間として、他社がどういうソフト開発をしているかを見られるいい機会であり、刺激であり、昔の同僚や客と会ういいチャンスだった」。

 うーん……確かに。会場内を歩いていると、ハニィもいろんな人に声をかけられたものですよ。懐かしい人、この間ミーティングをした人、会社を辞めていった人、前の会社の人。うんうん、確かにそうだったね〜。

 情報収集と情報交換の場所でもあったこのE3のポストと言われるものは存在するのか? まず、今回行われる「E3 Media & Business Summit」は規模の意味でも参加者のメンツを見ても、まったく違うものになってしまったのよね。規模の意味では秋に行われる「Entertainment for All」(E for All)が匹敵するかもなんだけど、実はこの「E for All」、任天堂がFlag Shipを取るからなのか(「最近どうよ?」第10回で確認してね)、SCEとマイクロソフトがどうやら参加しないとの噂も。

 え、それって、プラットフォーマーが参加しないから、そのプラットフォーム向けのソフトは出せないかも? なのかしら? これも足並みそろいそうもないって流れか? 時期的にも遅すぎるし、なによりも業界関係者ではなくエンドユーザー向けだし。

2007年は3月5日〜9日まで、北米サンフランシスコのMoscone Convention Centerで開催されたGDC

 では、やっぱり「Game Developers Conference」(GDC)なのか? 業界関係者が集まってくるって意味では、確かに業界の情報交換の場所でもあるけど、うーん。でも、あの規模の展示場ではE3に匹敵するとはいえないかなぁ。外向き(小売店向け)ってことではないから、派手な演出はないし、あくまでもカンファレンス(会議)が主体であることを考えるとこれもちょっと「まんま」引継ぎってことにはならないよね(そのへんは「最近どうよ?」第8回が詳しい)。

 北米の業界関係者の中には、こうなった以上やはり正月に行われる「Consumer Electornic Show」(CES)でしょう! と断言する方もいらっしゃったなぁ。過去にもCESの中でゲームショウらしきことをしたことがあったけど、規模が大きすぎて分離した経緯もあるほどなので、また分離するでしょうね(笑)。

 ってことで、ハニィの結論はE3と同じものは「ない」。アメリカ市場を探るには、ニュース情報や密な業界関係者との関係構築しか道がなくなってしまった! え〜ん。この「E3 Media & Business Summit」、このままの形では存在意義が薄すぎるので来年はないでしょうね。きっぱり。ただし、このE3って言葉、しばらくは続きそうで、来年はどういう形で行われるのか、楽しみってより、とても疑問ですね。

ハニィのあとがき

 いつもの周期と違って、どうしてもE3前に書きたいなと思って書いてみたの。いろんな情報を仕入れてきたので伝えたかったってのもあるけど、E3をとりまく状況が思ってたのと大きく違ってたってことが衝撃的で、伝えなきゃって。この予感、いい意味で裏切ってもらえればうれしいんだけどなぁ。E3に関しては参加後また報告しますね! お楽しみに!

 次世代機向けタイトル数の減少はその通りだと思うけど、携帯ゲーム機向けに関しても、ニンテンドーDSは任天堂ソフトしか売れていないと言われているし、PSPソフトは前述の通り小売が買ってくれない。ケータイ電話向けはどんどん過当競争が進んで、大手しか生き残れない状況になっているって現状を考えると、何に向けてソフトを作ればいいのか困らないの? と各パブリッシャーにぶつけてみたところ、意外な回答があったので報告しておくね。

 Xbox LIVE Arcade(XBLA)はすでにケータイゲーム機に代わるプラットフォームとして考えている。へぇぇぇ。日本ではまだダウンロードのプラットフォームをそこまでと考えられていないよね。と、言っているうちに任天堂からWiiWareが発表されましたね。また、6月29日にiPhoneの発売もありました! 長蛇の列を成してまでゲットするケータイ電話? いえいえ、たまたまエンターテインメント用のデバイスにケータイ電話機能がついたってことでしょう。

 日本人から見ると、ゲーム業界とは関係ないと思われがちではありまするが、これもダウンロードゲームのプラットフォームだよね。ゲームはダウンロードできるエンターテインメントコンテンツの1つでしかない取り扱いだけど、それでもやっぱり無視はできないと思う。

 NPDなどの売上情報としてダウンロードコンテンツのデータがないので、実態はまったくわかっていないというか、各コンテンツプロバイダーが自社の発表として公にする数値だけを信用するしかないんだけど、間違いなく成長しているし、今の時点ですでに北米では大きな市場になっているようですね〜。ネットゲーム後進国の日本が危機感を感じていないのもちょっと心配。すでにマイクロソフトやアップルに入るのに狭き門となっていることも認識しておくべきところですね。ユーザーへコンテンツを届ける方法が固形物(パッケージ)だけではなくなったってことって、なかなか身をもって受け入れられないところなんだろうな〜。そう言ってると時代に乗り遅れてしまうのよ……。

 パッケージの在庫リスクのないダウンロードというディストリビューションは、小さな企業体でも大きなビジネスチャンス! なんだから、この機会を逃す手はないと思う。もしかして、パブリッシャーという概念もなくなって、デベロッパーが直接参入することだって夢の話ではないのだから。そういう意味でも任天堂のWiiWareが業界に再度息吹をもたらすのではないかしら? と本気で期待するハニィです。

くねくねハニィのプロフィール

1967年アメリカサウスダコタ生まれの日本人。

小学生からはゲームセンターに通いまくって育つ。

1990年に都内K大学を卒業後、大手ゲーム会社にて海外ソフト担当となり、2001年に退職。それ以降は自称フリーのゲームアナリストとして暗躍。暗躍しすぎたので名前を変えて表舞台に。くねくねと唐突に現れて「親父ギャグ」をかまして周りの人々のレベルを下げまくる困ったやつ。独特の口調ですが、慣れてください。言ってる中身は至極マジメ。ちなみに「風来のシレン」が好物で、名前もそこから借用。なんだか公認してもらったそうです。

あれ? ハニィさんって、すでにサンタモニカにいたりするんですか?


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