商品がマネされるぐらいでないと――タニタの活動量計「カロリズム」:売れるのには理由がある(2/2 ページ)
プロモーションにも工夫、製品名称は300候補から厳選
「タニタは初物好きで」と笑いながら語る加藤氏だが、新たな商品ジャンル開拓者として類似商品の悩みがあるという。
体組成計と同じく、新カテゴリー製品である活動量計「カロリズム」も、発売後1年は類似製品がなくシェア100%だった。
しかし、その後は仕組みがまったく違う、メーカーにいわせれば「類似商品ですらない」製品が活動量計という名を冠して売られてしまっているという。
「カロリズム」という名称は、300もの候補からなる選りすぐりのネーミングで、ダイエットをイメージさせる直感的分かりやすさ、インパクト、覚えやすさなどベストなものだったと社内でも評価が高い。
しかし、「活動量計」というカテゴリーネームを添えてしまったことは、ユーザーの類似商品との混同を考えると失敗だったのではないかという声もあるという。
そこでタニタでは、あえて計測の仕組みや原理などを前面に出すことはせず、寿司職人に使ってもらう、フラワーショップの店員に使ってもらうなどして、職業別、消費カロリーのグラフを提示したり、実際に使ってみた際の使用感、おもしろさの違いが分かるようにプロモーション活動の工夫をしている。
一般的な歩数計の倍の価格を支払ってもらうため違いをアピールするのに、パッケージにいろいろ記載するという方法はとらず、特設ホームページで説得できるような展開をしているということだ。
家族のコミュニケーションツールになる例も
当初、ユーザーの男女比は、男性70%、女性が30%ぐらいだったものが、1年後には女性が増えてきたという。それに合わせ、女性に訴求できる製品として「カロリズム LADY」を投入したこともあり、夫婦や家族全員で使用しているユーザーも多いという。
そのため、専業主婦が「誰も評価してくれない、家事の活動量が評価されてうれしい」、「夫に向かって、自分もこれだけキツイ家事をしているんだ」とアピールできたと喜びの声があったり、「毎日深夜0時になると、家族で4ケタの数値(総消費カロリー)をケータイメールで送りあっています」という報告があるなど、一種のコミュニケーションツールになっているケースも散見するという。
ただし、使い慣れた人がグラフを見ると、「なんで出張中、午前2時に外出してたの?」とか、「睡眠時間でもないのに、なんでこんな長時間着けていなかったの?」とか、「会議だったはずなのにこの活動強度はないよね?」とか、行動が予想されてしまうので、くれぐれも注意が必要だ。
初物好きのタニタ、挑戦できるタニタ
せっかく苦労して新しいカテゴリーを開拓し、新しい製品を開発しても「どんどんマネされてしまう」と語る加藤氏だが、「商品がマネされるぐらい一般的になっていく、その商品カテゴリーが認められるという意味では良いことだ」と思っているという。
カロリズムは、「口から入るカロリーのことをすごく気にするのに、消費したカロリーを気にしないのはおかしいのでは?」というところから開発が出発しているということだが、タニタの健康に関する製品開発の前向きさには驚きを禁じ得ない。
加藤氏が密かな自信作として提示したプッシュアップトレーナー ST-941は、いわゆる大手家電メーカーであれば、想定顧客層や想定販売数から企画会議を通過することがないような製品ではないだろうか。
インナースキャンの回でも触れたが、挑戦できる社風、雰囲気が醸成されているのがタニタの製品開発、最大の強みであるといえるだろう。
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