創業者の想いを受け継ぐ、パナソニック サイクルテックの電動アシスト自転車「ビビ」:売れるのには理由がある(2/2 ページ)
知っていて、知らない「電動アシスト自転車」
販売好調の電動アシスト自転車だが、自転車協会の調査によると2010年の年間販売台数は約38万台である。通常の自転車が約950万台なので、その規模に比べるとまだまだこれからの製品だ。
それに関して三宅氏は、だいたいの日本人がすでに電動アシスト自転車という言葉は知っているとしたうえで、「知識として知っていても、乗ったことがなければ本当に知っていることにならない」と言う。
そのため試乗会などでは、ペダルをこがないと進まないことに驚く女性や、坂道での快適さに「オォー!!」と雄叫びを上げて驚愕する男性すらいる。
メーカーでも「実際に乗ってみなければ良さが分からない製品」であるという点は大いに問題だと考えており、6台の「電動アシスト自転車 試乗体感キャラバンカー」を用意して日本全国で試乗イベントを開催。より多くの人に「体感」してもらえるよう力を注いでいる。
震災、エコ、健康、今こそ求められている製品
大震災の影響でガソリンの供給が危ぶまれ、通勤需要でクロスバイクタイプの電動アシスト自転車の販売台数が伸びた。万が一、公共の交通機関が止まってしまったときでも強い味方ということだ。
電動アシスト自転車は、約10円の充電コストで50キロメートル走行できるほど省エネルギーであり、ヤマト運輸、富士ゼロックス、郵便局、交番などでも使用されている。これはコストの削減だけでなく、環境に配慮しているとして企業や組織のイメージアップに寄与する面も大きい。
電動アシスト自転車は、モーターユニットのアシスト力と人間がこぐ力との比率の上限が2:1までで、時速10キロメートルになるとアシスト力がだんだん弱まっていき時速24キロメートルで切れるという仕組みなため、心肺や関節などに過剰な負担をかけずに有酸素運動が可能という側面もある。社会的情勢、消費者の気分をかんがみて、現在これだけ望まれている製品はないのではないか。
パナソニックではこのような追い風を感じつつも、今後はユーザーの「もっと長距離を走れないのか?」「もっと車体が軽くならないのか?」「もっと価格が安くならないのか?」という声に応えなければならないと考えている。
その1つ目の回答として、2011年12月1日に最上位モデルに16Ah(アンペアアワー)の大容量リチウムイオンバッテリーを搭載する「ビビチャージ」の発売も予定している。
また以前は「昔カタギの自転車職人」といった男性社員ばかりだったが、最近はデザイン部門に女性社員も増えており、彼女らが企画した女性向けの車種が好評という。そのため、カラーリングやデザイン面などで、よりチャレンジした車種を発売しようという気運が高まっているという。
今回の取材では、日本の製造業の強さ、製品の良さを、「技術力」であるとか「品質の高さ」という部分で感じることができた。
とかく製品のリーズナブルな価格設定だけが話題となりがちな昨今、ともすれば技術力や品質の高さという点ではもう安い他国製品に太刀打ちできないなどと自虐的ともとれる意見も聞かれる。
そいった時勢に、ちょっと前までは日本製品を語る際に常套句だった「技術力」「高品質」という言葉を、再び日本製品の形容として用いることができるのは何よりうれしいことだと思う。
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