時を少し巻き戻して――今年のE3を復習して今後のゲーム市場を考えるE3 2012総括(前編)

6月上旬に北米カリフォルニア州ロサンゼルスにて行われたE3の概要とプラットフォーマーの総括をした。前編ではE3前日午前中に行われたマイクロソフトのカンファレンスまでをまとめてみた。

» 2012年06月27日 17時29分 公開
[記野直子,ITmedia]
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 アメリカ西海岸時間の6月5日〜7日の期間、北米カリフォルニア州ロサンゼルス市内のLACC(Los Angeles Convention Center)にてE3(Electronic Entertainment Expo)が行われた。好天に恵まれ、カリフォルニアならではのさわやかな気候の中、期間前からE3会場や周辺会場ではハードメーカーをはじめ、ソフトメーカーからさまざまな発表がなされた。ここでは既に報道されている詳細は除き、大枠の報告をしていきたいと考えている。

 運営側のESAによると、入場者は4万5700人。昨年から比べると1000人ほど減とのこと。しかしながら、現場の盛況ぶりや、ロサンゼルス市に与えた経済効果(4千万ドル:約32億円)を見ると、まだまだ元気のあるゲーム業界を見せつけられた。

 E3の本来の趣旨は、アメリカのゲーム業界によるメディアおよび小売向けの展示会である。ハードメーカーが新たなハードやサービスを発表したり、ソフトパブリッシャーがメディア(マスコミ)や小売に対して年末に向けて発売するタイトルをお披露目またはアピールする場なのだ。 

 17歳以下は入場できず、入場料は3日間のパスで995ドル(約8万円)である。ユーザー向けのショーではないことを考えると、業界関係者だけでこれだけの人数が世界から集まるというのも大したものである。敷地の広さ、発表の場としての業界各社の力の入れようを見れば、やはり「世界最大のゲームビジネスショー」と言えよう。

 Expo展示自体の期間は初日が午後からなので正確に言えば2.5日。この展示会で、年末タイトルの小売からの受注や、メディアのタイトル評価が下るので、業界各社はかなりホンキでお金をかけて展示をしたりミーティングをセッティングするのだ。

 世界最大のゲームビジネスショーでは各社が「サプライズ」を仕込んでいる。9月から始まる年末商戦を考えると、8月のヨーロッパGamesComや9月の東京ゲームショウでは時期的に遅すぎるのだ。

 会場での展示に加え、ハードメーカーはもとより各ソフトメーカーも近隣のホテルやイベント会場を借りて大きなプレスイベントを勢力的に行っていた。各社主催のパーティも夜な夜な行われて、お祭り的に盛り上がる要素もこのE3の醍醐味であろう。

E3 Expo会場

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 例年同様WestホールとSouthホールがメイン会場。ホールをつなぐ通路のコンコースにはミーティングルームが設けられている。Westホールは主に任天堂、ソニー、マイクロソフトなどのハードメーカーが展示をしていたのだが、ここに日本からGreeの大きなブースが!

 プラットフォーマーの動向は別途プレスカンファレンスのところで触れるとして、今年はサプライズがなかったと言われるプラットフォーマーブースだが、昨年のWii Uの4時間待ちと言うような列はなかったものの、任天堂、SCEA、マイクロソフトも、盛況に人が入っている様子が見られた。

 昨年アメリカのモバイル向けソーシャルゲームプラットフォームのOpenFeint社を買収し、Gree USAとして急激にアメリカでのプレゼンスをアピールしてきたグリーだが、E3前まではプラットフォーマーと言うよりは「コンテンツプロバイダ」としての認識で受け止められていた。今年初めに北米でローンチされた「Zombie Jombie」がヒットしていたからだ。

 今回のE3で大きなブースを構え、日本から多数のコンテンツを引っ提げて参加したことにより、プラットフォーマーとしての第一歩をアピールした場になったと筆者は考える。日本から「探検ドリランド」、コナミの「ドラゴンコレクション」等のコンテンツに加え、グリーの新規タイトル「WAR CORPS」を展示していたが、ここで注目すべきはUBIの「Assasin’s Creed」。映像展示ではあったものの、有力サードパーティコンテンツが入ってきた印象だ。

 ただし、スマートフォンのコンテンツのみとの印象を与えかねないので、タブレットやPCに対しても、いや、デバイスに左右されないコンテンツ供給を積極的にお願いしたいところである。

 ソフトメーカー各社も例年通り大きなブースで展示を行っていた。現地での評判を聴いてみると、マイクロソフトの「Halo 4」、SCEの「Last of us」、Ubisoftの「Watch Dogs」が期待のタイトルという声が多かった。

 各社ともにブースのステージでタイムスケジュールに合わせてイベントを行ったり、大きなスクリーンで新しいタイトルのトレイラーを繰り返し流しているのだが、大音量での展示にも関わらす、裏にはミーティングルームがあり、こちらでまだパブリックにできないものを見せたり、商談をしたりしているのだ。また、試遊台には担当者がついて製品説明やプレイの仕方を教えてくれるので、「何が売りなのか」などの質問にもキッパリ答えてくれる。

 「Call of Duty: Black Ops II」を大きなブース内のシアターで展示していたActivisionだが、ハードコアまたはFPS色が強いメーカー? と思わせつつも、実はiOSでヒットした「Angry Birds HD」をコンソール化すると発表があり、話題を呼んでいる。余談だが、北米のスーパーやおもちゃ屋では「Angry Birds」のぬいぐるみなどのグッズが数多く売られているのを見ると、いかにこのIPが北米で認知されているかがうかがえる。ただし、基本フリー(追加ダウンロードで課金)のコンテンツをどうやって有料のものとして変貌させるのかは単純に興味しんしんである。

 EAはいつも通りウェストホール最前列で大きなブースを構えていたが、定番のスポーツタイトルに加え、「Dead Space 3」、「Medal of Honor Warfighter」、「Need for Speed Most Wanted」、「Crysis 3」、などの大型タイトルシリーズを発表していた。例年何かしらのオリジナル新作を引っ提げていたEAだったが、今年はフランチャイズに徹するようである。

 Ubisoftは「Just Dance 4」、「Far Cry 3」、「Tom Clancy’s Splinter Cell: Blacklist」。「Assassin’s Creed III」などシリーズ続編に加えて、前述したオリジナル新作「Watch Dogs」で注目を集めていた。サードパーソンビューのアクションアドベンチャーだが、クオリティの高さが目を見張る。「Prince of Persia」、「Assassin’s Creed」シリーズを手掛けたモントリオールスタジオの最新IPとなる。

 日本のメーカーも各社大きなブースを構えており、アメリカ市場におけるプレゼンスを誇示できていたと言える。KONAMIの「Metal Gear Rising: Revengeance」には長蛇の列ができていたし、カプコンの「Resident Evil 6」(日本名「バイオハザード6」)や「DmC: Devil May Cry」や「Lost Planet 3」など大型タイトルの続編で大きく盛り上がっていた。

 バンダイナムコブースでは、Wii Uタイトル「Tank! Tank! Tank!」や、ナムコブランド期待の「Tekken Tag Tournament 2」。バンダイブランドからはKinectでいつ来るか? と思っていた「かめはめ波」を実現した「Dragon Ball for Kinect」、「One Piece Pirate Warriors」。そして、レベルファイブの大作「二の国(北米ではPS3のみ)」がようやく北米でプレゼンされる場となっていた。

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 セガは、大きなソニック像が回転していてアメリカでのソニックの健在ぶりがうかがえた。携帯ゲーム機を含むマルチプラットフォームに向けて「Sonic & All-Stars Racing Transformed」を展示。ただし「Aliens: Colonial Marines」の他はダウンロードコンテンツを展示していた。

 スクウェアエニックスは、「Sleeping Dogs」、「Quantum Conundrum」、「Hitman: Absolution」、「TOMB RAIDER」など海外製のタイトルの展示が目立った。長い間E3を見てきたが、最近では日本メーカーのブースと言えども純粋な日本製タイトルだけでなく海外製(開発管理の形態はともかくとして)のタイトルが展示されることが珍しくなくなった。Eidosを買収したスクウェアエニックスはもとより、バンダイナムコブースでは「Star Trek」、カプコンの「Lost Planet 3」、「DmC Devil May Cry」、セガの「Aliens: Colonial Marines」など、日本メーカーも市場に合わせたタイトルの投入に力を入れている様子がうかがえる。

 気になるのが、THQがウェストにもサウスにもブースを持たず、小さなミーティングルームをひとつしか持っていなかったことだ。「Darksiders 2」、「Company of Heros 2」や新作ホラー「Metro: Last Light」などの展示を細々と行っていたが、実は会期中にTHQの十八番(オハコ)だった「UFC」のライセンスをEAが獲得したというニュースが流れ、ココ最近タイトルキャンセルを重ねてきたTHQに対する暗雲が立ち込めていると感じた。

プラットフォーマーカンファレンス

マイクロソフト

 E3開幕前日の6月4日(月)午前中にロサンゼルス市内の南カリフォルニア大学(USC)のGalen Centerで「Xbox 360 E3 2012 Media Briefing」を開催したマイクロソフト。日本からライブ中継をご覧になった方も多いと思うが、相変わらずのプレゼンのうまさには脱帽した。

 発売から7年を数えるXbox 360の後継機の発表があるのでは? との噂もあったが、今回は(1)Kinectの更なる進化、(2)Xbox 360向け大型タイトル、(3)Xbox Live機能強化、そして(4)「Xbox SmartGlass」の発表に集約された。

 映画のような美しい映像でカンファレンスは始まった。「Halo 4」だ。続いてUbisoftの「Splinter Cell Blacklist」。Kinect音声認識に対応したとのこと、デモによるゲームプレイの面白さが伝わってきて会場でも歓声があがっていた。

(1)Kinectの更なる進化

 KinectつながりでEA Sportsの「FIFA 13」と「MADDEN NFL 13」。ジョー・モンタナ(NFLの有名選手だった)が登場して会場を盛り上げた。Kinect対応としてそのほかに「Fable the Journey」、「Nike+ Kinect Training」、「Wreckateer」などが紹介されていた。「Dance Central 3」ではUsherが登場して生ダンスを披露してくれるなど、相変わらずのショー演出のうまさだった。

(2)Xbox360向け大型タイトル

 マイクロソフトの年末商戦向け大型タイトルとして「Gears of War Judgement」、「Forza Horizon」、さらにオリジナルタイトル「Ascend: New Gods」が紹介された。大きな敵に挑むにあたり、その敵に上っていく様子は「ワンダと巨像」を彷彿とさせるものがあった。また、マイクロソフトのオリジナルタイトルとして「Lococycle」、「Matter」というトレーラーのみの紹介もあり、「Matter」はパズルゲームなのかアクションゲームなのか興味をそそられた。

 3rdパーティからはスクウェア・エニックス(Eidos)から「Tomb Raider」、カプコンの「Resident Evil 6」(日本名「バイオハザード6」)、Activisionから「Call of Duty:Black Ops 2」が紹介されていた。

(3)Xbox Live機能強化

  • Internet ExplorerとBing

 Xbox Live上でのInternet Explorer のサービスが開始される。家族と一緒にリビングルームにあるテレビで、Xbox 360を使って(しかもKinectがあれば音声認識機能を使って)ブラウジングができるようになるのだ。同じく、Kinect音声認識によるBing検索に、日本語が対応(仏、独、西なども含め12カ国)される。

 3000万を超える楽曲を提供する「Xbox Music」も発表した。Xbox Liveを通じてこれらの楽曲をダウンロードすることができるのだが、Xbox360のみならず、Windows 8搭載デバイスであれば対応が可能とのことだ。

 これ以外にもNBA、NHLのライブ中継番組やESPN番組などスポーツコンテンツ、各国の映画、テレビ番組などのプロバイダーとの提携を発表したが、日本ではほとんど恩恵を受けない形なのが残念である。日本では、このようなサービスが目に見ないため、Xboxブランドはいつまでも「ハードコアゲーマー向けプラットフォーム」のレッテルを免れない。KinectやこれらのサービスによってXbox 360は単なるゲームデバイスではなくなりつつあることを日本のユーザーは認識すべきかもしれない。

  • 「Xbox SmartGlass」の発表

 Xbox Liveはゲームだけでなく、テレビ番組、スポーツ、映画、音楽などのエンターテインメント(日本では権利関係などで実現できていないものもあるが)を提供している。それらをPC、Windows Phone、iOS,Androidなどのデバイスでシェアできるというもの。

 「Xbox SmartGlass」を使えば、携帯電話やタブレットで観ていた映像の続きを家のテレビで観ることができたり、テレビと携帯電話/タブレットを連動させて、テレビで流しているモノの情報を手元でゲットしたり、リモコンとして使うこともできるという。

 また、ゲームにも対応していると言うから、もしかしてWii Uのコントローラデバイスフリー版とも言えるサービスなどと勘繰ってしまう。今後このサービスが具現化されればハッキリするだろうが、マイクロソフトが将来的に「クラウド」をベースにデバイスフリーへの道に舵を取ったことにならないだろうか? と考える。現在のインフラでは実現できないものであっても、OnLiveやGaikaiが目指すクラウドゲーミングへの道と通じるものではないだろうか。もちろん、マイクロソフトの場合はゲーミングだけではなく「総合エンターテインメント」となるのだが。

 筆者が一番感激したのは、Xbox SmartGlassは「iPadやiPhone、Androidから」でも連動させられるとカンファレンス内でマイクロソフトが言いきったところである。本来であれば、マイクロソフトとしてはWindows 8をプッシュしたいはずである。自社のデバイスやサービスが足かせになって新たなチャレンジができない大企業の中で、少なくともマイクロソフトは「アップル」や「グーグル」との共存を選んだのだ、と考えれば歴史的な発表だったと言っても過言ではない。

 また、この記事をあげる直前にマイクロソフトのタブレット「Surface」の発表があった。こちらも発表だけで、どういうサービスが提供されるのかは明確になっていない。後発である以上、アップルやAmazonと同等以上の個性や差別化を図らねばならないだろう。

 ――つづきます

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