あなたにも参入可能!? サイドビジネスで始めるキャラクタービジネス 実践編:大日本技研に聞く(2/6 ページ)
材料費のみ、サイドビジネスに最適
―― その手法を使えば、誰でもガレージキットメーカーになれるということですか?
田中氏 なれますが……。先ほど私のフィギュアが売れ残った話をしましたが(前編でのエピソード)、製品を「作る」よりも「売る」ことのほうが難しいことが多いんですよね。ジャンルを問わず製造業の人なら、実感を持って同意してもらえることだと思うのですが。特に趣味のものなど、買い手を選ぶ製品の場合は顕著だと思います。今はネット通販という手がありますが、それがなかった時代はどこで売れば良いのかが大問題でした。そこで作り手、売り手と買い手が集まるイベントが必要だったんです。それが、「ワンダーフェスティバル」なんですね。
サイドビジネスであるとか、起業にはいろいろな業種が考えられると思うのですが、なかなか低予算で始めるとなると難しいものです。でも、ガレージキットなら材料費と自分の手間だけですから、コストパフォーマンスとしては最高です。普通に仕事しながら、休日を使ってこつこつできますし。自信作ができたら「ワンダーフェスティバル」に参加して、当日版権を取ってしまえば、キャラクタービジネスを経験できるのも魅力でしょう。相撲の世界では「土俵にはお金が埋まっている」なんていいますが、私にいわせれば「(ワンフェス会場の)幕張メッセにはお金が埋まっている」となります。たった1日で、億単位のお金が動くわけですから。
腕試しの場としてもワンフェスは最適です。目の肥えたお客さんに加えて、版元や大手メーカーの関係者も、たくさんやって来て見ていますから。仲間内では良くできてると褒められても、それが広く通用するかどうかは分からない。ワンフェスに出展してみて、来場者に実際に足を止めて、見て、声をかけてもらえるのか、さらにお金を出して買ってもらえるのか、というところで容赦なく審判が下るんです。私も昔、経験したことがありますが、誰も足を止めてくれないブースにいることほど、いたたまれない気持ちになることはないです(笑)。
ワンフェスの参加費用
―― ワンフェスにはそういった意義があるんですね。ところで、ワンフェスの参加費用は何にどれぐらいかかるのでしょうか?
田中氏 まず、出展料が必要です。1卓2万5000円、これに2人分の入場パスがついてきます。それから、液晶モニターで映像を流したいということがあれば任意で電源を1万円で使用できたり、当日版権を申請するならその申請料金、パンフレットに広告を出したいならその広告料金がかかりますね。ワンフェスに出展すると、小さな広告枠がもらえるのですが、お金を支払えば1/2ページや1ページの広告も出せるんです。この広告の効果たるや絶大なんですよ。ワンフェス会場に入るために並んでいるときは何もやることがないですから、みんなパンフレットを見ているんですね。通常、一般的な媒体に出す広告だと本当に興味を持っている潜在顧客が目にする確率は予想できないと思います。でも、ワンフェス会場に入るためにパンフレットを見ている人は、ほぼ100%潜在顧客なんですよ。
当日版権の費用、版権料は、製品価格によって変わります。一般的なマンガやアニメのキャラクターは価格の5%程度、いわゆるPCの美少女ゲームなどの版権料は「関連製品ができれば、知名度が上がり宣伝になる」ということで安い傾向にあり、大手出版社の一部は10%のものもある、といったところが目安になります。
版権とは何か?
―― とうとう版権の話になってきましたが、版権とはそもそもどういうもので、取得するには具体的にどうすれば良いのでしょうか? ワンフェス出展用であれば、比較的簡単に取ることができるということですよね?
田中氏 誰でも話題の作品のキャラクターやアイテムを作りたいと思います。買い手が買いたいもの、話題になるものは、アニメやマンガに出てくるキャラやロボットですから。でも、ここに注意しなければならない点があります。自分でデザインしたオリジナル作品なら、どこでいくらで売ろうと自由です。でも、アニメやマンガに出てくるキャラやロボットは、アニメ制作会社やマンガ家さん、出版社が権利を持っていますから、販売するには権利者の許可が必要になります。
ワンフェスは主催者が版権申請する仕組み
―― 確かにネットで話題になったワンフェス出展作品が、実は無許可だったということになったら大問題ですよね。許可を取らないと。
田中氏 そうなんです。それで、その許可のことを「版権」と呼ぶのですが、これを個人で取得するのは非常に難しいことなんです。だから、ワンフェスでは主催者側が参加者の申請を取りまとめて権利元に申請する方法をとっています。ワンフェスで売られているガレージキットは、すべて許可をとった正式な作品なんですよ。
それから版権の種類ですが、当日版権と通常の版権があります。区別するために、一般にメーカー等が取得する版権を「通年の版権」と呼称しましょうか。通年の版権は、契約期間内、例えば1年区切りなどですが、その期間であれば問屋や小売店等に卸したり、通販などで直接販売したりすることができます。これに対し、当日版権で販売できるのはイベント開催日かつ、会場内のみとなります。コンサート会場でのみ販売される、イベント限定グッズに近いですね。通年の版権を取るには、事務手続き上、かなり難しいハードルを越えなければならないのですが、当日版権は「当日、イベント会場のみの販売」という制約の代わりに、そのハードルがかなり低く設定されています。
2013年冬からワンダーフェスティバルは電子申請が可能になりましたので、今で通りに紙で申請もできますし、公式ホームページで関係書類を読んだり申請したりすることもできます。詳細はワンフェスの公式ホームページに、当日版権収得マニュアルが掲載されていますからそちらを確認してもらうとして、ざっと当日版権でガレージキットを制作、販売する流れを説明しましょうか。まずは何々という原作(アニメやマンガ等)に登場する、何々というキャラクターを、何々の仕様(スケール、大きさや素材、組み立てキットなのか完成品なのか等)で作りたい、という当日版権予備申請を行います。申請も、以前は用紙に書いて郵送するしかなかったのですが、現在はホームページの申請用フォームで行うことも可能になっています。この申請を元に、ワンフェス実行委員会がそのキャラの権利者である「版元」に、製作が可能であるかどうか確認作業を行います。
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