プレイヤーをますますやる気にさせる! ビデオゲームに見る“ほめる技術”の極意
ゲーマーもほめて育てる。
ビデオゲームで遊んでいるときに、自分のナイスプレイをほめてくれる演出が画面に表示されるとさらに嬉しくなって、ゲームにますますハマッてしまったという経験をみなさんもお持ちなのではないでしょうか?
古くからよく見られるプレイヤーをほめたたえる典型的な例としては、悪の親玉に捕まった主人公の仲間やお姫様を助け出したときにそのキャラクターがお礼の言葉をかけてくれる演出があります。ファミリーコンピュータ用ソフトとして発売された、シリーズ第1弾の「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」でお姫様を救出したときをはじめ、1986年にKONAMIが発売した同じくファミコン用ソフトの「グーニーズ」など、その例は枚挙にいとまがありません。
アクションゲームにおいては、ステージクリア後に仲間のキャラクターなどが出てきて祝福をしてくれる演出も昔からよくあるパターンです。例えば、1989年にナムコ(現:バンダイナムコゲームス)が発売した「ロンパーズ」では、ステージをクリアするたびに敵にさらわれてしまった女の子が拍手をしてくれるアニメーションが表示され、プレイヤーの健闘をたたえてくれます。たったこれだけの演出でも、プレイヤーはほめられたことによって自らの行動が正しいとことが確信できるため、その結果モチベーションをさらに高めることができます。
(C)KONAMI 1986
THE GOONIES IS A TRADEMARK OF WARNER BROS. INC.
(C)1985 WARNER BROS. INC. ALL RIGHTS RESERVED.
※PS版「ナムコミュージアム アンコール」を使用
(C)1997 NAMCO LTD. ALL RIGHTS RESERVED
シミュレーションゲームにおいても、プレイヤーをほめてくれるキャラクターの存在は欠かせません。コーエー(現:コーエーテクモゲームス)の定番歴史シミュレーションである「信長の野望」や「三國志」などのシリーズでは、配下の軍師がコマンド選択時に「よいお考えです。」「きっと喜ぶことでしょう。」などとその都度しゃべってくれます。この演出によってプレイヤーはまるで君主になったかのような気分になり、なおかつ選択したコマンドの良否も教えてくれるのでゲームがますます楽しくなるというワケです。
また、任天堂が1991年に発売したスーパーファミコン用ソフトの都市経営シミュレーションゲームの「シムシティ」では、プレイ中にたびたび秘書のキャラクターが登場しては、「人口が1万人を超えました。」などとほめてくれるシーンが挿入されるようになっています。節目になると秘書が出てくる演出を用意することによって、単なる数値やコマンド入力をするだけのシミュレーターとはひと味もふた味も違う、ゲームとしての面白さがさらに増していると言えるでしょう。
では、ビデオゲームにおいて“ほめ役”となるキャラクターの存在が絶対不可欠かというと必ずしもそうではありません。たとえキャラクターやメッセージがなくても、プレイヤーのナイスプレイを祝福する見事な演出を作り出している例はいろいろあるのです。
その秀逸な例が、1985年にナムコ(現:バンダイナムコゲームス)が発売したアクションゲームの「モトス」。本作には、敵味方ともに人間のキャラクターが登場してセリフをしゃべるような演出は一切ありませんが、いったいどうやってプレイヤーをほめ称える仕掛けを作っているのでしょうか?
その秘密はプレイヤーのスコア(得点)に隠されています。本作では、それまでのハイスコアを更新したときにだけ特別なファンファーレを鳴り、同時に「HIGH SCORE」の文字を点滅させることによってプレイヤーの腕を称賛する演出が用意されているのです。けっして派手さはありませんが、以下の動画をご覧になればプレイヤーの達成感を高めてくれる粋な演出であることがおわかりいただけるのではないでしょうか?
(C)1997 NAMCO LTD. ALL RIGHTS RESERVED
現在でも「Newスーパーマリオブラザーズ」の各シリーズ作品においては、ステージ内に隠されたコインを全部集めると拍手が鳴るようになっています。極めてシンプルな演出ですが、たとえ目の前にピーチ姫やキノピオなどの“ほめ役”がいなくても成功したときはやはり嬉しいものです。
また、携帯やスマホを使ったソーシャルゲームにおいても「次へ進む」などと書かれたタブや5番のボタンなどを押してページをめくっていくたびに、その都度現れるキャラクターがプレイヤーをほめまくる演出がよく出てきます。いつの時代においても、プレイヤーを夢中にさせるためにはほめる演出の存在は欠かせないようですね……。
著者プロフィール
鴫原 盛之 Morihiro Shigihara
1993年よりゲーム雑誌および攻略本などでライター活動を開始。その後、某メーカーでのグッズ・店舗開発や携帯コンテンツの営業、ゲームセンター店長などの職を経て、2004年よりフリーに。現在は各種雑誌やwebサイトでの執筆をはじめ、某アーケードゲームの開発なども手掛ける。著書は「ファミダス ファミコン裏技編」(マイクロマガジン社)、「ゲーム職人第1集 だから日本のゲームは面白い」(同)の他、共著によるゲーム攻略本・関連書籍を多数執筆。近刊は共著「デジタルゲームの教科書 知っておくべきゲーム業界最新トレンド」(ソフトバンククリエイティブ)がある。
Twitterは「@m_shigihara」です。
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