【“おばけ探知機”開発者の本当にあった怖い話】第6夜「焼死したおじいさんの事故物件調査・前編」
おばけ探知機が江戸時代の処刑場跡レベルの反応を示す事故物件。
怪を語れば怪至る―― ホラーコンテンツ、心霊や都市伝説にまつわるゲームなど、そういった“この世ならざるもの”に関わるモノを作っている現場では、さまざまな怪奇現象が起きていると耳にします。
今回は、おそらく日本で唯一であろう“市販のおばけ探知機”「ゴーストレーダー」「ばけたん」の開発者・河原邦博さんにインタビュー。開発の裏側で本当にあった怖い話を、全7回にわたってお送りします。
おじいさんが焼死した事故物件の調査依頼(前編)
これからお話するのは、ばけたんと直接の関係こそないのですが、こういった「おばけ探知機」を作ってきた自分だからこそ遭遇できただろうものです。
私の仲間内にいる若い子で、名前はそうですね……仮にAくんとしましょう。そのAくんから連絡がありまして。簡単にまとめると「事故物件の心霊調査をしてほしい」って内容だったんですよ。
どういう風の吹き回しだろう、と詳しく話を聞いてみたんですが……。関東のある一軒家で火事が起こって、住んでいた男性が亡くなったって言うんですよね。その男性はAくんのおじいさんで、つまりAくんは孫にあたるんです。Aくんによれば、亡くなる直前のおじいさんはかなり認知症が進んでいたらしく、尋常な精神状態ではなかったそうで。
それで、どうやって亡くなったのかって聞いたら……それが分からない、って言うんですよ。2階のベランダで遺体が見つかったので、焼死であることは間違いない。ただ火事になった原因とほかの死因……自殺、他殺、過失からの事故死、失火、放火……それが分かっていないそうなんです。
Aくんが聞かされた話によれば、放火の可能性も高いらしくて。だから建物には今でも規制線、立入禁止の黄色いテープがぐるりと張られていて、Aくん含めて建物には立入禁止の状態。警察が調査を続けている、って言うんです。
―― なるほど。
取りあえず、できる範囲で調査してみよう、ということになりまして。私とAくん、そしてばけたんの開発にご協力いただいた、日本ダウザー協会(※)代表の堤裕司さんの3人で現場へ向かったんですよ。スケジュールとしては、その現場を調べた後、いくつか心霊スポットを回って、最後にキャンプ場のコテージでバーベキューをしようじゃないかと。Aくんの気分転換にもなるだろう、と思って。
※日本ダウザー協会:公式サイトによれば、国内でのダウジングの普及、海外のダウザー協会との交流を目的に1984年設立
レンタカーを借りAくんに運転してもらって、現場の一軒家へ到着すると、当然ですが内部は全焼。どこもかしこもまっ黒焦げ。それはともかく、家とその周辺が、なんというかですね、妙な違和感を覚える場所だったんですね。ごくごく普通の住宅街なのに、雰囲気が悪いと言うか……そうですね、スティーブン・キングの小説に出てくるような……。
さて、調査の前に私と堤さんは、現場へ手を合わせたんですが……当のAくんは何もしないどころか手ぶら、ときやがりまして。
「おじいさんが亡くなった場所だぞ」「お供え物のひとつでも持ってきなさいよ」なんて、いろいろと聞いてみたんですが……生前のおじいさんはAくん含めて、親族全員と不仲だったそうなんです。Aくんとしては、火事の原因がなんであれ、今後何かあるかもしれない……と、不安になって調査を頼んだ、という次第だと。
ともかく家の中には入れないので、現地調査は可能な範囲で行ったんですが……ばけたんの反応は、今までに見たこともない異常なものでした。
立ち入っても大丈夫な門の前にて試したんですが、同じばけたんで3回連続、赤色の反応が出たんですよ。1日じっくりとばけたんを使って、赤反応は1回出るか出ないかですし、私も3回連続は初めての経験で、さすがに驚きました。
これに似た現象が、別の心霊スポットで起きていまして。品川区に「鈴ヶ森刑場跡」っていう、江戸時代の処刑場跡があるんですが……そこで10人10個のばけたんを同時に使ったところ、7個が赤反応を見せたんですよ。
一般の住宅敷地内で、何十万人が処刑された場所に似た反応を出すというのは、ねぇ……おじいさん、住んでて大丈夫だったのかな。
―― なかなかハードな現場だったようですね……。
しばらく周辺を調べ回った後、建物内部は規制線が解けた後日に詳しく調べよう、ということになりまして。次の目的地へ向かっていたところ、Aくんが妙なことを言い出すんですよ。
「河原さん、車の調子がおかしいです」って。アクセルを踏み込んでも全然前に進まない、って言うんです。
こちらは乗ってる立場じゃないですか、怖いですよね。アクセル踏み込んで一気に加速して壁にバーン! とかなったら嫌じゃないですか。
そこでちょっと考えたんですよね。Aくんが現場で何もしなかったから、おじいさんが引き止めてるんじゃないかな、って。
それで「まだ現場は近いし、すぐ戻れるから。今からスーパー寄ってバーベキューの買い物しよう。そこでお酒なんかのお供え物を買って、おじいさんにちゃんと手を合わせてきなさい」と諭したんです。
Aくんもそれに納得して、なんとかスーパーまで車を運んで。それでいろいろと買い込んだ後、一緒に買ったお供え物とお酒をAくんに持たせて、現場まで戻って拝ませたんですよ。
そうした後、改めて出発したんですが……途端に車の不調が直っちゃったんです。
―― えぇー……。
不思議ですよね。それを見て「あぁやっぱり、おじいさんが引き止めてたんじゃないか」って、全員が感じていました。それと同時に、おじいさんとAくんを含めて親族が不仲だったのは確かみたいですが……Aくんのことは気に掛けていたのかもしれないなって、ふと思いました。
そもそもAくんが調査してほしい、なんて言い出さなければ、私たちとAくんが一緒に現場へ向かうことはなかったんですから。そういったことも含めて、おじいさんがAくんを呼ぶと同時に、自身のメッセージを察して、若いAくんを諭してくれる人物を同行させよう、と仕向けたのかも。……そんな気がしてならないんですよ。
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たけしな竜美(@t23_tksn)
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