ニュース

自粛から明るい話題へ、DMVデビューで大団円! 「2021年の鉄道ニュース・乗り鉄話題」10選月刊乗り鉄話題(2021年12月版)(5/5 ページ)

乗り鉄にとって、2021年も感染症の流行で自粛を強いられる年でした。それでも明るい話題、楽しいことがいくつもありました。日本の鉄道完乗率100%の筆者が振り返ります。

advertisement
前のページへ |       

【9】JR九州「流れ星新幹線」に感動

 2021年は単発のイベントもたくさんありました。その中でもっとも粋(イキ)だなあと感動したイベントは、JR九州の「流れ星新幹線」でした。3月14日、九州新幹線博多~鹿児島中央間の全線開業から10周年を迎えた記念イベントです。


もっとも粋だなあと感動したJR九州の「流れ星新幹線」(YouTube JR九州より)
「流れ星新幹線」スペシャルムービー(YouTube/JR九州)

 九州新幹線は2004年に新八代駅~鹿児島中央駅間で先行開業しました。その7年後、2011年3月12日に全線開業しました。多くの開業記念イベントが用意されていましたが、前日に東日本大震災が発生し、国民的な悲しみと自粛ムードでイベントは全て中止されました。以来、周年記念イベントは東日本大震災とリンクするという運命となりました。

 10周年を迎えるにあたり、記念イベントを開催したい。それは利用者の皆さん、沿線で見守った人々、新幹線の内外で関わってくれた人々への感謝の気持ちがあります。しかし、東日本大震災の振り返りも行われる中で、お祭りははばかられます。そこで考案されたイベントのテーマが「願い」でした。

advertisement

800系電車の車体に流れ星と応募された願いごとを描いた(画像提供:JR九州)

筑後船小屋駅附近で停車し、感謝のパフォーマンス(画像提供:JR九州)

 たくさんの人々から「願い」を募集し、選ばれたメッセージを車体や内装に書き込んで走らせる。新幹線車内に照明装置を仕込み、流れ星に見立てて走らせる。新幹線は人を乗せるだけではなく、走らせることでも感動と夢と希望を与えられる──。

 誰も傷つけることなく感動を与える仕掛けでした。東日本大震災の悲しみを乗り越える力にもなったかもしれません。

【10】車両の登場と引退

 行く年、来る年のように、鉄道にも行く列車、来る列車があります。2021年も、営業運行を開始した新車両がいろいろ生まれ、その一方でベテラン車両が惜しまれながら引退しました。

 主な運行開始車両は次の通り。

京阪3000系プレミアムカー

 京阪電鉄では2017年から特急用8000系に有料座席指定車両「プレミアムカー」を連結しています。このサービスが好評だったため、快速急行用の3000系車両にもプレミアムカーが連結されました。3000系の特急運用が増えたことも理由の1つです。

advertisement

東京メトロ17000系・18000系

 17000系は有楽町線と副都心線に用意された新型車両です。18000系は半蔵門線用の新型車両です。どちらも近年の通勤電車の傾向として、消費電力の削減、バリアフリースペースの増加、セキュリティカメラの搭載、車両ドアの外側を傾斜させてプラットホームの段差を解消し、車イスやベビーカーの乗降に配慮しています。筆者はどちらも乗る機会がありました。線路の継ぎ目で突き上げ感がなく、上下の揺れがほとんどないことに驚きました。

JR東日本E131系

 短編成で運行する電車の置き換え用として製造されました。内房線・外房線・成田線・鹿島線・相模線に導入されています。2022年春からは宇都宮線の一部と日光線に投入される予定です。


相模線に導入されるE131系電車(写真:PhotoAC)

小湊鐵道キハ40系

 1979年製の旧国鉄キハ40形をJR東日本から譲り受けました。42年前の車両ですが、60年前に製造されたキハ200形と置き換えます。

えちごトキめき鉄道413系、455系

 前述の通り、JR西日本で廃車となった近郊用電車413系と急行用455系を譲受し、国鉄時代の塗装に戻して観光急行として運用しています。

阿佐海岸鉄道 DMV93形

 話題【1】で前述したDMV車両です。3両が導入され、1号車の塗装は青「未来への波乗り」、2号車の塗装は緑「すだちの風」、3号車の塗装は赤「阿佐海岸維新」です。バスモードとして走るためナンバープレートが付いており、車両形式にちなんで「931」「932」「933」になりました。

advertisement

 主な引退車両は次の通り。

名古屋鉄道1700系

 特急の特別車(有料座席車)として製造された1600系3両編成のうち、2両を2300系と連結するために改造した車両でした。新造された2200系特別車と交代して引退しました。

近畿日本鉄道12200系

 1970年の大阪万博用に登場した特急電車です。その後も増備が続いて総数168両に達しました。簡易調理設備を持つことからスナックカーと呼ばれました。近鉄特急の標準的な車両として活躍しましたが、経年劣化のため引退しました。

能勢電鉄3100系

 阪急電鉄宝塚線用として1965年に製造、導入された電車です。1996年に能勢電鉄に譲渡されました。経年劣化により引退しました。

JR九州キハ66・67形

 国鉄時代に筑豊地区に導入されたディーゼルカーでした。山陽新幹線博多開業を受けて、新幹線から接続する快速列車に使用されました。客室設備も動力性能も当時の特急に準ずる装備。まるで「羊の皮を被った狼」でした。その後、筑豊線の電化に伴って長崎地区のローカル線で運用されました。

advertisement

 そういえば、シンガーソングライターの福山雅治さんがラジオ番組で「みんながちゃんと維持してくれるなら車両の購入輸送土地代を出して良いよ」と発言して話題になりました。その後どうなったんでしょうね。

神戸市営地下鉄3000形

 1993年に神戸市営地下鉄西神・山手線の輸送力増強のために導入されました。2019年に現存車両を全て新型の6000形で置き換える方針となりました。製造年がもっと古い1000形、2000形、7000形は制御装置の更新工事が行われましたが、3000形は延命せず、先に廃車されることになりました。

京阪電鉄5000系

 1970年から1980年にかけて製造された電車です。最大の特徴は扉の数を時間帯で変える機能でした。片側に5つの扉があり、ラッシュ時は全ての扉を開閉させ、その他の時間帯は2つの扉を閉め切り、天井からロングシートを降ろして座席を増やしました。しかしこの構造によって他の形式とは扉の位置が異なり、ホームドアに対応できなくなりました。

JR東日本E4系電車

 東北・上越新幹線に導入されたオール2階建て新幹線車両です。経年劣化によりE7系に置き換えられました。2020年度までに廃車予定でしたが、「令和元年東日本台風」で北陸新幹線のE7系・W7系が水没したため、置き換え計画が約半年間延期されていました。


2階建て新幹線のE4系がついに引退

JR東日本215系電車

 東海道本線の通勤ライナー用に製造されたオール2階建て近郊形電車です。土休日は中央本線の快速「ビューやまなし」など観光輸送にも使われました。2階建て構造で座席数が多く、定員制列車には適していました。しかし、普通列車として使用するには2階建て片側2扉では乗降時間が長くなるなど使用機会を選ぶ車両でもありました。

advertisement

札幌市電M100形

 1961年に輸送力増強のために導入された電車です。混雑時は客車「Tc1形」を連結できる仕組みでした。しかし連結と分割に手間がかかり、貫通路がないためワンマン運転にも適さないため増備はされず、Tc1形は先に引退となりました。2022年秋にリニューアルオープンする札幌市交通資料館で、M100形とTc1形が連結状態で展示されるとのことです。

新京成電鉄8000形

 1978年から1985年にかけて製造され、輸送力増強と冷房化率向上に貢献した電車です。前面の大きな二枚窓に愛嬌が感じられ、タヌキの愛称があったようです。経年劣化のため2011年から新造車両との置き換えが始まり、10年かけて全廃となりました。

高松琴平電気鉄道120号、300号

 1926年の琴平電鉄開業時から80年以上も活躍した電車です。2007年に定期運行から引退し、イベント用として運行されていました。

JR四国キロ47形

 観光列車「伊予灘ものがたり」の初代車両です。一般形ディーゼルカーをリフォームした2両編成でした。2022年からは特急形ディーゼルカーを改造した車両の3両編成となります。初代車両も内装が素晴しく、次の車両がどのくらいグレードアップするか楽しみです。

2022年も楽しみ「2022年の乗り鉄話題」も盛りだくさん

 2022年以降に向けた「乗り鉄話題」もチェックしておきましょう。

 2022年6月にアルピコ交通上高地線の松本~渚間が復旧予定です。2021年8月の大雨で橋脚が傾いてしまい運休しています。

 2022年秋には西九州新幹線(関連記事)が開業します。

 同じく2022年秋にJR東日本只見線の会津川口駅~只見駅間が復旧予定です。2011年の平成23年7月新潟・福島豪雨で鉄橋が破損して以来、11年ぶりの運行再開となります。

 2016年の熊本地震で一部区間が不通となった南阿蘇鉄道高森線は2023年夏に復旧予定です。復旧後はJR豊肥線の肥後大津まで直通する列車が設定されるようです。豊肥線の肥後大津駅、原水駅、三里木駅と熊本空港を結ぶアクセス鉄道の構想もあります。これが実現すると南阿蘇鉄道も恩恵にあずかれるかもしれません。

 大阪メトロは中央線の新型車両「400系」と「30000A系」の導入を発表しました。どちらも2025年の大阪万博に向けた輸送力増強と既存車両の経年交換が目的です。30000A系は2022年7月に導入されます。万博後は谷町線の旧型車両を置き換えます。奇抜なデザインの400系は中央線の新しい顔になります。


大阪メトロの新型車両「400系」、新造車両「30000A系」

 大阪万博と言えば、近鉄の新型車両構想も具現化してきたようです。近鉄は地下鉄の第三軌条集電と架線集電の両方に対応できる車両の特許を出願しました。生駒駅で奈良線とけいはんな線の線路を接続して直通運転するためです。大阪万博会場と京都・奈良・さらに伊勢・名古屋を乗り換えなしで結ぶ構想があります。

 近鉄奈良線の移設計画も奈良県、奈良市、近鉄が2021年3月に合意しました。近鉄の前身、大阪電気鉄道が敷設した線路の周囲が平城宮の跡地だと判明し、平城宮の復原が決まりました。結果的に線路が平城宮を横切る形となっていました。この線路を平城宮の南へ移設します。もっとも、着工は2041年以降、完成目標は2060年度です。長生きしたい(笑)。

 JR東日本は2021年1月、羽田空港アクセス線についての第一種鉄道許可を取得しました(関連記事)。東海道線を分岐して羽田空港へ乗り入れる路線です。2022年に着工し、2029年度に運行開始目標です。

 北陸新幹線の金沢~敦賀延伸は2023年度末の予定です。福井県内の並行在来線会社の準備が進んでおり、会社名の公募が行われました。並行在来線と言えば、北海道新幹線札幌延伸の並行在来線、新函館北斗~長万部~小樽間の動向も気になります。とくに長万部~小樽間は貨物列車の運行もないため存続が危ぶまれています。

 今からコレだけのネタがあります。2022年度はほかにもたくさんの話題が出てきそうです。2022年も「月刊乗り鉄話題」をお楽しみに!!

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。ITmedia ビジネスオンラインで「週刊鉄道経済」連載。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。日本鉄道全路線の完乗率は100%(2021年4月時点)

前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.