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» 2011年12月09日 09時12分 公開

しばし口あんぐり、そして満場の拍手――「手作りプラネタリウム」を見に行こう日々是遊戯

「Make: Tokyo Meeting 07」のリポートでもちょっと紹介した、工房ヒゲキタさんの「手作りプラネタリウムと3D映像」。あんまりすばらしかったので、あらためて単品で紹介します。

[池谷勇人,ITmedia]

お金をかけなくても、空には満天の星空

「学生のころ、天文同好会に入っていて、学園祭で見せるために作りました。その後就職し、十数年務めたのち、会社をやめてから仕事として始めました」(ヒゲキタさん)

 先週末参加した「Make Tokyo Meeting 07」。フチコマっぽい乗り物に乗ってはしゃいでいる様子はすでにリポートしていますが、もうひとつ、どうしても単独で紹介したかったのが工房ヒゲキタさんの「手作りプラネタリウムと3D映像」でした。

 体育館に入ると、すぐさま目に飛び込んでくる灰色のドームがヒゲキタさんのブース。ヒゲキタさんはこのエアドームと投影機を持って全国の学校や保育所などを飛び回る、いわばプロの「出張プラネタリウム」屋さん。ちなみに日本で出張プラネタリウムを本業にしている個人はわずか4人、「完全手作り」の人はヒゲキタさんを含めてたった2人しかいないそう。

画像 否が応にも目に入る、巨大な灰色のドーム。中に風を送り込んで、気球のようにふくらませているみたい

画像 「アバターより面白いと思ったら投銭してね」「暗黒星雲賞受賞!」あ、あやしい……

 上映は20分刻みの入れ替え制で、一度に入れるのは30人くらい。下にはビニールシートが敷いてあり、中は大きめのドームテントのような感じです。全員がドーム内に入ったところでヒゲキタさんが明かりを消すと、周囲はたちまち真っ暗に。続いて、最初はぼんやり、やがてクッキリと、周囲に星空が映し出されていきます。……おおおおお!

 手作りの投影機は、「調理用のアルミボウルに星図をプロットし、ドリルで穴を開けただけ」というシンプルなもの。中心には小さな電球が入っていて、穴を通った光が星空となって照らし出される。仕組みは単純そのものですが、あまりのリアルさに周囲からも「おおー」「すごーい!」といった声があがります。「学生の時には5等星(約2000個)まで開けてありましたが、仕事として始めてから6等星(約4000個)も追加で開けました」とヒゲキタさん。

画像 なんだかドームテントの中にいるような気分。だいたい30人くらい入れます

画像 手作りの投影機。調理用のアルミボウルに穴を開けただけの単純な構造ですが……

画像 投影するとこんな感じに!(写真はヒゲキタさんからご提供いただきました)

 しかし、この展示がスゴいのはここから。続いて参加者に配られたのは、赤と青のセロファンが貼られた、えらく懐かしいタイプの3Dメガネ。続いて何やら別の投影機を取り出すと、ドーム内は一面紫の光でいっぱいに。「今からこれで、みなさんに3D映像を見てもらいます。普通の3Dは飛び出すだけですが、今から見せるものでは、映像がみなさんの頭の上を跳び越えていきますからね」。なるほど、ドームだから映像が頭上にも映せるんだなあ、などと思って見ていると……うおおおおおおおおおおお!

 「はい、これが土星です」。ヒゲキタさんが持っているのは、手のひらからちょっとハミ出るくらいの土星の模型。しかし、それを投影機に近づけていくと、ドームに映し出された土星の影が、みるみる大きくなってこちらに近付いてくる。やがて影はどんどんどんどん大きくなり、最後には僕らの頭上を多い尽くすようにして後ろへと通り過ぎていく。一瞬あっけにとられ、しばし硬直。続いて満場の拍手。いやいや、これは予想外のスゴさですよ!

 「はい、次はスター・ウォーズ」「続いてクジラ」……。次々と新しい模型を取り出し、壁や天井に映していくヒゲキタさん。背後から現れたスター・デストロイヤーが小さくなって前方へと消えていったかと思うと、今度は巨大なクジラがゆらゆらと宇宙の海をこちらへ向かって泳いでくる。もちろん立体感もスゴい。「飛び出す」というレベルではなく、飛び出してきた映像がそのままどこまでも近付いてきて、最後には視界全部が映像に覆い尽くされてしまう。頭の上に手を伸ばして、映像に触ろうとしている人もいます。

画像 ヒゲキタさんのブログより、立体映像投映装置の簡単な仕組み(ドーム内は真っ暗で写真が撮れず……)

画像 ヒゲキタさんによる3D映像の実演。投影機の前に模型やパネルをかざすと、その影がドームに映し出されます(この写真もヒゲキタさん提供)

 3D映像の方も、仕組みそのものは非常にシンプル。投影機には赤と青の電球が並んで設置されており、光源の前に模型をかざすと、赤と青の影が微妙にズレて投影される。あとはそれを赤青のメガネで、右目と左目の映像に分けてあげれば立体に見える――ということらしい。元々は「つくば科学万博に展示されていた、富士通パビリオンの立体ドームシアターを作ろうとして、1920年代のシャドウグラフ(赤と青のライトで視差を作って影を映し出す立体視手法)をドームに応用したものです」だそう。

「CGにレイ・トレーシングという手法がありますが、その技術をアナログでやったものです。『Make:』日本版の6号に作り方を載せてあります」(ヒゲキタさん)

画像 ヒゲキタさんのサイト「工房ヒゲキタ」。出張プラネタリウムは、1997年から始めて「14年間で総入場者数13万人」を数えるそうです

 プラネタリウムも、3D映像も、特別難しい技術を使っているわけではありません。さすがに投影機の穴開けには1カ月ほどかかったそうですが、材料費はドーム含めてもわずか数万円程度。3D映像の投影装置に至っては、材料さえあればわずか10分で作成可能だそうです。にもかかわらず、大のオトナが、驚き、口をあんぐりさせ、心からの拍手を送る。最先端の技術と、莫大な費用を投じる「才能の無駄遣い」もすばらしいですが、既存の技術と、身の回りにあるものだけで人を感動させるのもまたすばらしい。あらためて、ものづくりの面白さ、奥深さに感心させられたのでした。

 ちなみにヒゲキタさんのサイト「工房ヒゲキタ」では、出張プラネタリウムの依頼も受付中。プラネタリウムも3D映像も、どちらも子供のうちに見たら、きっと一生忘れられないほどの経験になると思います。興味がある方はぜひ、ヒゲキタさんに問い合わせてみてはいかがでしょうか。

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