ニュース
» 2012年03月16日 10時28分 公開

「ぜ、ぜんぜん平熱ですよ?」――体温計がもしウソつきだったらインタラクション2012

プラセボ効果の応用で、もしも体にウソの情報を送り続けたら、人体にはどんな影響が現れるのだろうか。神戸大学の研究が面白い。

[池谷勇人,ITmedia]
※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 薬理作用のないものでも「薬ですよ」と言って渡されると、なぜか効き目が現れてしまう「プラセボ効果」。ではもしも、体温計が「ぜ、ぜんぜん平熱ですよ?」とウソをついたら、やっぱりプラセボ効果は現れるのか――?

画像 「虚偽情報フィードバックを用いた生体情報の制御システム」について発表を行った、神戸大学の中村憲史さん

 3月15日から17日にかけ、日本科学未来館にて開催中の「インタラクション2012」。神戸大学の中村憲史さんらによる、「虚偽情報フィードバックを用いた生態情報の制御システム」は、そんな「情報によるプラセボ効果」に着目した研究だ。

画像画像 虚偽情報を送ることで体はどう反応するか、中村さんたちは4つの仮説を立ててその通りになるか検証実験を行った。グラフの緑の矢印は実際の生態情報、赤い矢印は虚偽の情報、青い矢印はそれによって変化する生態情報の動きをそれぞれ表している

 実験では、体温ではなく「心拍数」を使った。被験者にはエアロバイクをこいでもらい、運動中の心拍数の変化を計測する。ただし被験者に伝えられるのは、実測値とは違う「ウソ」の心拍数だ。

 その際、身体はどう反応するのだろうか。中村さんたちの研究班では、「緩和」「発起」「維持」「隠蔽」の4つのパターンを想定し、実際にそうなるかどうか実験した。結果、約6割のデータに有意差が認められたという。例えばある被験者の場合、実測値よりも高い心拍数を表示し続けたところ、実際に心拍数の上昇が認められたそうだ(発起)。

 また別の実験では、被験者に30分程度のプレゼンテーションを行ってもらい、やはり心拍数を計測・表示することで緊張の度合いを測った。このときもやはり、同じように「ウソ」の心拍数を見せ続けたところ、こちらも5割のデータに有意差が認められた。ある被験者の場合は、実測値よりも低い心拍数を表示することで、心拍数を下げる(緩和)ことに成功。つまり、虚偽情報によって緊張を和らげられたということになる。なるほど、「虚偽情報による身体への影響」は確かにあると言ってよさそうだ。

 ただし、影響があるのは間違いないとしつつも、その現れ方には個人差があるという。「緩和」には反応するが「発起」には反応しない人、「緩和」と「発起」どちらでもなぜか心拍数が上昇してしまう人などだ。思い通りに心拍数を操作するには、その人の特性をまず把握しなければならないという。

画像画像 実験データの一部。左は心拍数を上げる「発起」、右は心拍数を下げる「緩和」についてそれぞれ試しており、どちらも虚偽情報によって心拍数を操作することに成功している

 今回は心拍数を使って実験したが、これをうまく使うことができれば、「緊張の緩和」以外にも「効率的な運動」、さらには「眠気の解消」(眠い時は心拍数が下がるので、逆に心拍数を上げれば眠気も解消されるのでは、という仮説)などに役立つ可能性があるという。中村さんによると、「自分が緊張しいなので、自分のために行った研究でもあった」そうだ。今後は心拍数だけでなく、体温などほかの生態情報についても調査を行っていきたいという。

 実験では運動時と緊張時という状況で行ったが、例えばウェアラブルPCやヘッドマウントディスプレイなどを使えば、こうした「虚偽情報」を日常生活に取り入れることも可能になる。そうなれば、常に最適な虚偽情報を送り続けることで、プラセボ効果により健康を維持する――といったことも不可能ではない、のかもしれない。こうなるともう「体調を管理する」というより「体調を管理される」といったレベルで、それはそれでちょっと恐ろしい気もするが……。

画像画像 ウェアラブルPCと心拍センサ、ウェアラブルディスプレイを使った虚偽情報自動生成システムの案。アイデアレベルながら「面白い」「自分でも知らないうちに健康状態が操作されるのは怖い」など、会場では賛否さまざまな意見が飛び交った

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2312/05/news021.jpg 柴犬が見つけた瀕死の子猫、最後の力で立ち上がり…… 優しさが救った小さな命が600万再生「感動と感謝です」
  2. /nl/articles/2312/06/news119.jpg 中尾明慶、「金八」で“めちゃくちゃケンカした同級生”と因縁の再会 10年前の悪態謝り倒し「芸能界でおかしくなっちゃった」
  3. /nl/articles/2312/06/news018.jpg 超大型ワンコ、予想を裏切る“ギャップ萌え”食事シーンが500万表示! お坊っちゃま感あふれる甘えっぷりに「可愛い〜」「品が良いですねw」
  4. /nl/articles/2312/06/news022.jpg インコが“断捨離”したドールハウス、中をのぞいてみると……? 衝撃の光景に「廃墟w」「大変なことにww」
  5. /nl/articles/2312/06/news111.jpg ユージ、新たな愛車は「世界一贅沢なトランポ」 ペルシャ絨毯使用のカスタムカー披露も「僕はバイクを乗せるつもりですが笑」
  6. /nl/articles/2312/06/news036.jpg 掘り起こした土がなかったときのウサギ→ぼう然 では土があったときは? うさうさブルトーザーに「想像を絶する可愛さだった」
  7. /nl/articles/2312/05/news190.jpg 「たった1カ月で行ってしまった」 桃井かおり、YOSHIKIの米国マネージャー追悼 “40年来の無二の親友”だった夫は「涙まだ止まらず」
  8. /nl/articles/1705/16/news143.jpg 「同性愛者を入店させないで」と投書した客に「もう来ないでください」 お店の回答に称賛の声集まる
  9. /nl/articles/2312/06/news097.jpg 「何処に行っちゃったのかな」 白鳥久美子の息子、生後1か月にして“ちょっと心配”な症状 初受診で医師「この時期に通院する赤ちゃんはいる」
  10. /nl/articles/2312/05/news138.jpg 田中みな実、“共演した姉”の存在に反響「居るとは聞いていたけど」「激似やなぁ」 すらっとしたたたずまいに「品のあるお方」
先週の総合アクセスTOP10
  1. オール巨人、30年モノな“伝説の1台”に自負「ここまでキレイな車はない」 国産愛車の雄姿に称賛の声「気品がある」「凄くエレガント」
  2. 「明らかに写真と違う」 東京クリスマスマーケットのフードメニューが物議…… 購入者は落胆「悲しかった」
  3. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  4. 田中みな実、“共演した姉”の存在に反響「居るとは聞いていたけど」「激似やなぁ」 すらっとしたたたずまいに「品のあるお方」
  5. 藤本美貴、“全然かわいくない値段”のテスラにグレードアップ スマホ一つでの注文に「震えちゃ〜う!」
  6. マックで「プレーンなバーガーください」と頼んだら……? 出てきた“予想外の一品”に驚き「知らなかった」
  7. 伊藤沙莉、“激痩せ報道”の真相暴露→広瀬アリスの株が上がってしまう 「辱めったらない」告白に「アリスちゃん、ええ人や〜」
  8. 「あなたは日本人?」突然送られてきた不審なLINE、“まさかの撃退方法”に反響 「センス良い」「返しが秀逸」
  9. “鬼ダイエット”で激やせの「Perfume」あ〜ちゃん、念願の姿に「着れる日が来るなんて」と大喜び
  10. 900万再生のワンコに「電車で笑ってしまった」「つられてめちゃくちゃ笑っちゃうw」 “突然魔王になった犬”に腹を抱える人続出
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「酷すぎる」「不快」 SMAPを連想させるジャンバリ.TVのCMに賛否両論
  2. 会話できる子猫に飼い主が「飲み会行っていい?」と聞くと…… まさかの返しに大反響「ぜったい人間語分かってる」
  3. 実は2台持ち! 伊藤かずえ、シーマじゃない“もう一台の愛車”に驚きの声「知りませんでした」 1年点検時に本人「全然違う光景」
  4. 大好物のエビを見せたらイカが豹変! 姿を変えて興奮する姿に「怖い」「ポケモンかと思った」
  5. 渋谷駅「どん兵衛」専門店が閉店 店内で見つかった書き置きに「店側の本音が漏れている」とTwitter民なごむ
  6. 西城秀樹さんの20歳長男、「デビュー直前」ショットが注目の的 “めちゃくちゃカッコいい”声と姿が「お父さんの若い頃そっくり」「秀樹が喋ってるみたい」
  7. “危険なもの”が体に巻き付いた野良猫、保護を試みると……? 思わずため息が出る結末に「助けようとしてくれてありがとう」【米】
  8. 「やばい電車で見てしまった」「おなか痛い、爆笑です」 カメがまさかの乗り物で猫を追いかける姿が予想外の面白さ
  9. おつまみの貝ひもを食べてたら…… まさかのお宝発見に「良いことありそう」「すごーい!」の声
  10. 「3カ月で1億円」の加藤紗里、オーナー務める銀座クラブの開店をお祝い “大蛇タトゥー”&金髪での着物姿に「極妻感が否めない」