「時計」は時間を測る領域を超えた 2台の時計が宇宙年齢138億年で1秒も狂わない再現性、東京大学が実証
なんかすごそうだけど、どういうこと?
科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業において、東京大学 大学院工学系研究科の香取秀俊教授と理化学研究所 香取量子計測研究室の高本将男研究員らは2月10日、「次世代時間標準『光格子時計』の高精度化に成功」したことを発表した。新聞などでも多く取り上げられている発表ですごい研究のようだが……なるほど分からん!
リリースを読めば、何やらものすごく精密な時計を作るための重要な基盤技術ができたとのこと。そこで少し調べてみることにした。参考文献にあった「理研の博士に聞いてみよう」を読んでみると、多くのヒントが隠されている。
そもそもこの世界は、重力によって時間の進み方が異なる。例えば山頂など標高の高い場所に比べ、山のふもとなどの標高の低い場所では時間がゆっくりと進む。家の中でも、2階にいる人に比べて1階にいる人の時間の方が非常にわずかではあるがゆっくりと進んでいるのだそうだ(参考:「理研の博士に聞いてみよう」)。このことは、アルベルト・アインシュタイン氏の「相対性理論」に基づく。
逆に言えば、精度の高い時計が開発されればわずかな時間のズレから「重力の変化」の観測が可能となり、「重力の変化」に伴う「時間の変化」を観測することで、地下資源探査、地下空洞、マグマ溜まりなどの発見に応用できる可能性がある。これは、災害予知などにも役立つと考えられている。
そこで開発されたのが、精度の高い時計「光格子時計」。現在1秒の長さは3000万年に1秒狂わないとされる精度の「セシウム原子時計」が用いられて計測されているが、セシウム原子(=1秒間に91億9263万1700回振動)よりもさらに振動数が多いストロンチウム原子(=1秒間に429兆2280億422万9873.4回振動)を用いることで測定する際に受ける外部からの影響を最小限にとどめている。
また、その振動数をできるだけ短い時間で正確に数えるためにはたくさんの原子を集め平均の数を出すのだが、そうしたとき原子同士がぶつかったり他からの影響を受けないように、卵のパックのような原子を閉じ込める容器が必要となる。それが香取教授が発明した「光格子」。レーザー光で作られたこの「光格子」を用いた時計が「光格子時計」である。
光格子時計は既に精度の高い時計であったが、今回の発表では、低温環境でストロンチウム原子を分光することによって黒体輻射の影響をこれまでの100分の1に低減することに成功し、「低温動作・光格子時計」の開発に至った。この「低温動作・光格子時計」の精度は、2台の時計で1秒のずれが生じるのに160億年かかることに相当し、それはつまり宇宙年齢138億年で1秒も狂わないことを意味する。
――研究者らは、「時計はもはや『従来の時間を共有するツール』としての役目を超えて、『重力で曲がった相対論的な時空間を見る新しい計測ツールになる』」と話す。
3000万年に1秒も狂わない「セシウム原子時計」では、10メートルの高さの違いによる時間の進み方の違いを区別できた。そして、300億年に1秒も狂わない「光格子時計」ならば、わずか1センチの高さの違いによる時間の進み方の違いまで区別できるようになる。私たちは近い将来、「時計」を「時間を測る道具」以外の、どのような道具としてみているだろうか。
(太田智美)
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