腹が減っては戦はできぬ! 全国の同人イベントを渡り歩いた作者が贈る珠玉のグルメ同人誌司書メイドの同人誌レビューノート

秋葉原のカルチャーカフェ「シャッツキステ」の司書メイドことミソノが、同人誌のディープな魅力を紹介する連載企画。あなたの知らない同人誌の世界がここにあります。

» 2015年11月15日 11時00分 公開
[シャッツキステねとらぼ]
シャッツキステ

 皆さまごきげんよう、秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」で司書メイドをしておりますミソノと申します。本連載は、オリジナル創作や評論ジャンルの同人誌を中心に、奥深い同人誌の世界をよりすぐってご紹介する場となっております。

 一般にはあまり出会う機会のない同人誌。アニメ・マンガのパロディーや、コスプレ写真集などさまざまなジャンルがありますが、中でも作者さんの気持ちがぎゅっと詰まったオリジナル作品の同人誌は、濃縮された魅力にあふれていると感じます。連載を通して、皆さまそれぞれがお気に入りの同人誌を見つけることができましたら幸いです。

司書メイド ミソノ 司書メイド ミソノ:秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」でメイドとしてお給仕する傍ら、とある大きな図書館で司書としても働く“司書メイド”。その一方で、こよなく同人誌を愛し、シャッツキステでも「はじめての同人誌づくり」「こだわりの特殊装丁」の展示イベントを開く。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えた辺りで数えるのをやめました」と語る

今回紹介する同人誌

「地方同人イベントでおいしいご飯を食べる本」B5 48ページ 表紙・本文カラー

著者:髑髏中佐、十二月(挿絵)



地方同人イベントでおいしいご飯を食べる本 地方同人イベントでおいしいご飯を食べる本

 各地のおいしいものが載ったガイド本……。本屋さんでもさまざまなものがありますが、この作者さんは4年間かけて47都道府県の同人誌イベントに参加された方! ただでさえわくわくする「同人誌即売会」と、旅の楽しみ「食事」がセットになったこの切り口はうれしいですね!

定番名物も、地元ローカル名物も! おいしいものが続々と

 山形牛、ほうとう、長良川の鮎、讃岐うどん……とページをめくれば、作者さんが同人誌イベントにサークル参加した際に訪れ、実食した料理がおいしそうな写真付きで掲載されています。添えられたリポートには、味や値段はもちろん、「浜松のイベントで売り子をしてくれたレイヤーさんから紹介された『さわやかのげんこつハンバーグ』」など、ちょっとした現地のエピソードも盛り込まれ、各地の食事を楽しまれた様子が伝わってきます。名物はきちんと抑えつつ、中には見知らぬメニューも。三層構造になっているという気仙沼のお菓子「ゴッド」、食べてみたいな!

地方同人イベントでおいしいご飯を食べる本地方同人イベントでおいしいご飯を食べる本 おいしいものが各地から、47都道府県分勢ぞろい!

遠征先でトラブル発生!? 地方イベント参加のコツも

 なにはともあれ、47都道府県の同人誌イベントに参加って、すごいの一言です。同人誌サークルのよくある活動パターンは、気軽に足を運べる在住地で開催される同人誌即売会イベントに参加するか、たくさんの人が集う大都市での大型の即売会イベントに参加するかの2パターンあると思います。それに慣れた身としては、ちょこちょこ文中から伺える「イベント会場付近にコンビニがない。へたすると自動販売機もない」「車がないと行くのがつらい」といった地方イベント困ったあるあるや、「目的の料理が出てくる前に、飛行機の時間が迫ってしまって撤退」とか「大雪で帰れなくなった」という一文が新鮮です!

 でも作者さんも「それでも地方は楽しいんだよ」とおっしゃっている通り、その土地の気候や人々の暮らしにちょっとおじゃまするのは旅の醍醐味ですね。もちろんなんでもそろった便利な環境は魅力的ですが、どこも大都市と同じ風景……ではなく、その町らしさが見えるのもいいものではと、本を読みながら、まだ足を運んだとこのない場所の同人誌イベントに思いをはせました。

 各地の主な同人誌イベント情報も添えられていて「広島コミケの会場は2種類あるので注意」などのミニ情報もあり、実際に参加を検討するのにも役立ちそうです。

地方同人イベントでおいしいご飯を食べる本 扉ページや端々にいる女の子のイラストも鮮やかでとってもかわいい

地方同人イベントでおいしいご飯を食べる本 さすが北海道! お肉から甘味までそろっています

「地方」にこだわるそのわけは……?

 この本、実はものすごく偏りがあるんです。あれこれグルメがそろっていそうな東京の紹介は「万かつサンド」1点だけ。「大都市よりも地方を紹介したい!」という作者さんの意識が反映されていて、少し交通の便が悪くても、おいしいものがある地方のことがたくさん載っています。

 大阪在住の作者さんは「地方イベントが縮小していく中で、グルメや旅行という観点から、地方イベントに参加するきっかけになればよいな」という思いを持って活動されているそうです。そうなんですよね……地方の同人誌イベントは「同人誌が売れない」「同人誌即売会なのにグッズばっかり」という声も多く、この本でも「現在は同人誌イベント開催が確認できない」と書かれた県も。

 でも、そんな中でも、「奈良県で現在も継続的に開催されている唯一のイベントは、女子大学の学園祭内でのイベント」といったレア情報と巡り合い、さらにその学園祭で販売される「ならじょまん」がおいしい! と書かれているのを読むと、「へー! どんな雰囲気かな? 参加してみるのも面白そう!」と気分が高まるではないですか! ちなみに女子大学の学園祭内のイベントは外部からの参加も可能だそうです! まだ見ぬ土地へ、同人誌を携えて旅立つ……わくわく倍増の本です。

地方イベントに参加する思いには、震災への気持ちも……

サークル情報

サークル名:Markgraf

Webサイト:http://s-markgraf.net

同人誌入手先:COMIC ZIN

Twitter:@dokuro_markgraf

参加予定イベント:2016年5月5日コミティア(次回新作予定!)

他Webサイトで告知中(毎週末だいたいどこかに出没)


今週のシャッツキステ

 シャッツキステのTwitterから気になる写真をお届け。著者の方、出版社さまにご協力いただいて、新しく発行されたコミックスの展示を、本棚の一画にて行っております。からけみ先生から直々にお預かりした設定資料ファイルは初公開のものがたくさん! 「けいさつのおにーさん」好きのメイドが目をきらきらさせています。

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