視覚障害者の「白杖SOSシグナル」めぐり議論 「広めるべき」「広まってほしくない」――協会に聞いた
サインを考案した福岡県盲人協会に聞いてみました。
人混みの中で、白い杖をまっすぐに掲げて立ち止まる視覚障害者。「白杖(はくじょう)SOSシグナル」と呼ばれるこの独特のポーズがTwitterで話題になっています。東京新聞の記事を引用しつつ、「(このサインを)見かけたら声をかけてあげてください」「この記事をシェアするだけでだれかの『困った』を解消して助けるコトができます」と呼びかけるツイートは、現在までに5万7000回以上リツイートされています。
この「白杖SOSシグナル」はもともと福岡県盲人協会が考案したもので、視覚障害者が「今、助けてほしい」と思った時に、白杖を掲げることで周囲に助けを求めるというもの。実は40年ほど前から存在していましたが、残念ながら今のところ世間一般ではあまり知られていない、というのが実情でした。
一方、この「白杖SOSシグナル」については以前から反対する声もありました。そもそもこのサイン自体が、視覚障害者の間でもあまり知られておらず、このままサインの意味だけが広まってしまうと「サインを出していない=困っていない」と受け取られてしまう危険性がある――というのが主な理由。ツイートが話題になると、今回も「むやみに拡散してほしくない」という声が少なからず見られました。
そもそもこのサインはなぜ生まれたのか。一部で指摘されているように、安易に拡散すべきではないのか。福岡県盲人協会に聞いてみました。
――このサインを考案した経緯を教えてください。
福岡県盲人協会:もともとは視覚障害者の人権擁護のために考案しました。なかなか普及が進まないため、5年ほど前に再度ポスターを作って日本盲人会連合へ応募したところ、岐阜大会にて取り上げられ、また内閣府のサイトにも啓発シンボルマークが掲載されるようになり、注目が集まったものと思われます。
――しかし注目度のわりには、あまり見かけないような気もします。
福岡県盲人協会:そのあたりはこちらとしても苦慮しているところです。声だけではなかなかSOSが表現できない視覚障害者に使っていただきたいのですが、このシグナル自体が浸透しないと、意味がありませんので。
――「サインが出ていないから大丈夫」という誤解を招くのでは、との指摘もあります。
福岡県盲人協会:それについては、周知徹底を図りたいところです。ですが、この活動の本来の目的は「白杖=視覚障害者」というのを健常者に向けてアピールすることなんです。大規模災害などで現場が混乱していると、ただの杖と白杖の違いを見分けられない人もいらっしゃいます。まずはそういった方々に「白杖」というものを知っていただく、という活動が主ですね。
――白杖を地面から離すことへの抵抗感がある方もいるようです。
福岡県盲人協会:はい。そのことも把握しています。そういった場合は、周囲へ声をかけるなどの対応をしていただきたいと思っています。周囲の健常者の方々も、手助けが必要な方がいれば積極的に手を貸してほしいですね。
なお、友人の1人に全盲の視覚障害者がいたため個人的に話をうかがったところ、「このようなシンボルは知らなかった。困った時は声を上げるか布を振って助けを呼ぶ」とのことでした。
友人は生まれつきの全盲で、小さいころからの教育もしっかりと受けているはずですが、それでも「知らない」のですから、確かにシグナルの普及率についてはまだまだだと言えそうです。まずは「視覚障害者を助けよう、人権を保護しよう」という根本に立ち返り、困っている人がいれば、障害者であろうとなかろうと、積極的に手助けを行い、少しでもお互いが理解しあえるようにしていくのが第一かもしれません。
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