初詣の「ベビーカー自粛」騒動を振り返り、寺の住職が事情を説明 「差別的な意図は一切無い」
混雑が予想される場所でのベビーカー利用の是非から差別、少子化問題などに議論が広がった。
「ベビーカーご利用自粛のお願い」――東京都板橋区にある乗蓮寺が大みそかと正月三が日に掲出した看板をめぐり、ベビーカーに赤ちゃんを乗せて初詣に参拝することの是非について話題となった。乗蓮寺の住職・若林隆壽さんに事情を聞いた。
事の発端はある参拝客による「何の落ち度もない単に小さい子供を連れたママさんが初詣に来て、これを見て嫌な気持ちになると想像できないだろうか。なら松葉杖の人も、車椅子の人も足の悪い高齢者も、視覚障害者も全部遠慮しろと?」というツイート。看板の写真とともに投稿されたツイートは、またたく間に拡散され、ネットでは著名人らも巻き込んで差別や少子化問題にまで議論が広がった。
乗蓮寺は2年前まではベビーカー優先の誘導を行っていたが、なぜ「ベビーカーご利用自粛のお願い」することになってしまったのか。住職による看板設置に至った経緯を掲載する。以下、住職のコメント。
同上掲示についてツイッター上で私どもの予期せぬ「ベビーカー論争」の形で議論がなされていることは承知しております。以下、掲示に至った当寺の個別の事情をいくつかお話しさせていただきます。
古くは昭和31年の「彌彦神社事件」、近年では平成13年の「明石花火大会歩道橋事故」に代表されるように、「群衆事故」は往復の流れがぶつかることや、下りに階段を利用すること、「ボトルネック」といわれる出口が急に狭くなる現象などによって発生します。その発生を防ぐためには、
1:人の流れを一方通行にすること、
2:階段は上り専用に利用すること、
3:出口をスムーズに流すこと、
等が求められます。私どもは中世の豪族・千葉氏の山城「赤塚城二の丸跡」にあり、正門から境内までは57段の階段を上らなくてはなりませんので、この「事故防止の原則」に従って大みそかから三が日に限り、この1〜3の対策を取らせていただいております。
この期間には4万人程のご参拝があり、時間帯によっては境内は身動きできないほどになることもあります。また、参拝をお待ちになる行列が、松月院前の信号付近まで数百メートル近く延び、最後尾からご本堂まで1時間以上かかってしまうこともあります。
実は、私どもも2年ほど前までは、ベビーカーをスロープのある南門から、ご指摘のように「ガードマンの誘導」で優先的にお入り頂いておりました(車イスの方は現在も同様に対応させていただいております)。
ところが、まことに残念なことですが、「ベビーカーを押してさえいれば優先的に参拝できる」というウワサが広まってしまい、明らかにベビーカーを必要としない小学校の中高学年と見えるようなお子さんを、門に入るところまで無理やりベビーカーに乗せて入ったところに降ろし、その子は一方通行を逆走して駆け出し、参詣者の流れを遮る、しかも、その一台のベビーカーに大人が何人も同行するという想定外の事態が続出し、長く並ばれた方との間で「割り込みだ」「ズルだ」などの口論に発展したことがございました。
そこで、公平に期すために「ベビーカーを押す方お一人だけ入門可」としたところ、家族を待つためにベビーカーが境内に滞留し、お酒を召しておられたと思われるお年寄りが、雑踏の中で車輪に足をとられ転び、ベビーカーも倒れてしまうという事故が発生してしまいました。
このため、当面の事故防止、トラブル回避のため、「最善の策」ではないかもしれませんが、やむなく最も混雑する大みそかから正月三が日という期間に限って、平成27年の大みそかから前記の看板の設置に至りました。
ただし、階段を重いベビーカーを持ったまま上がることを避けるために、ベビーカー専用の駐輪場を境内入り口駐車場の中に設置をいたしましたし、期間中はそこにガードマンを配備して対応させていただいておりました。
所轄の高島平警察署の支援、ご指導を受けながら、今年度は雑踏警備、安全確保のため期間中連日36人のガードマンを配置しましたが、近年イオンなどの大規模商業施設などとの奪い合いで、年末年始はガードマンの確保が年々難しくなっている中、これ以上の人員増加は困難なのが実情です。
また、「渋滞学」的な見地からも、安全確保のため境内の一方通行を取りやめることはできませんし、ベビーカー専用の通行帯を設けることも立地上不可能だと思われます。しかし、今回さまざまな議論があることを知りましたので、真摯に受け止め、警察署や警備会社とも協議しながら、「看板の文言」も含め、期間中のベビーカー用駐車場の設置など、皆さまに気持ちよく、安全に事故なくご参拝いただけるよう努めてまいりたいと存じます。
従って今回の看板について、差別的な意図は一切無く、「安全第一」「事故のないように」ということを第一義に考えてのことであったことをご理解頂ければ幸いです。
住職によれば、ツイッターの投稿主とも書簡で事情を説明する機会があり、建設的な提案もいただいたとのこと。件の看板は既に3日の段階で取り外されているという。
関連記事
- 娘の口に母がキス、あり? ヴィクトリア・ベッカムの投稿した画像が「性的虐待」と批判され論争に
一方そのころ夫は……。 - 渋谷ハチ公前の喫煙所が撤去されタバコのポイ捨て激増 ネットで賛否両論、渋谷区は「喫煙者のマナーの問題」
喫煙所の撤去そのものを批判する声に対し、ポイ捨てそのものが悪いとする声も。 - 「3.9+5.1=9.0」は減点対象 小学校算数の奇習に茂木健一郎が苦言“子どもたちへの虐待である”
「文科省にもきちんとした対応をとっていただきたい」。 - 「悪趣味」と炎上 スペースワールド5000匹の魚を氷漬けにしたアイスリンク演出、展示意図を聞いた
(追記)魚の多くは商品にならない「規格外」品だったとのことです。 - 先端だけ食べて捨てないで! イチゴ農家の呼びかけに「もったいない」の反響がたわわに実る
もったいない。 - 電車で女性が化粧をするのは「みっともない」? 東急電鉄のマナー広告が物議を醸す
「迷惑」ならまだ分かるとしつつも、「みっともない」という主観的な表現が使われていることに対し、意見が割れています。 - 知事が妊婦になっちゃった? 男(ダン)ディ知事3人が“世界一”育児をしない日本の夫を代表して妊婦体験
妊婦体験で夫の心に変化が見られる……らしい。 - 東京メトロでホームドア設置計画が前倒しへ 事故のあった九段下駅・青山一丁目駅は優先設置
銀座線は2018年度上期、東西線・半蔵門線は2019年度末の設置完了を目指します。 - 二度と同じ事故を発生させないための対策を 東京メトロが「ベビーカー引きずり事故」への取り組みについて発表
「全乗務員に対する教育訓練の強化」と「設備補完などによる安全性向上」。 - 国交省、ベビーカー優先マークを決定
今後は周知を。 - 佐川急便、「ドライバーが伝票書き換え料金を多く取った」とするTwitter上の指摘認める
利用者には返金と謝罪を行ったとのこと。 - 電車で女性が化粧をするのは「みっともない」? 東急電鉄のマナー広告が物議を醸す
「迷惑」ならまだ分かるとしつつも、「みっともない」という主観的な表現が使われていることに対し、意見が割れています。 - 北九州市「スペースワールド」2017年12月末に閉園 公式サイトにて発表、博多華丸さんら惜しむ
突然の閉園発表となりました。 - ネットは1日25時間:人間こわい! 「電車内ベビーカー問題」が解決する日は本当にくるのか?
ちょっと長いダイイングメッセージだと思って読んでいただければ幸いです。 - ネット署名は世の中を変えることができるのか 署名サイトChange.orgの4年間
民主運動の1つとして今やすっかり定着しているネット署名。そのお手軽さから、国の制度までも変える力は持っているのだろうか。国内最大の署名サイトChange.orgに成功例を聞いた。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
「情報を漏らされ振り回され……」とモデラー“限界声明” Vtuberのモデル使用権を剥奪 「もう支えられない」「全サポート終了」
-
「うどん屋としてあるまじきミス」→臨時休業 まさかの“残念すぎる理由”に19万いいね 「今日だけパン屋さんになりませんか」
-
“ドームでライブ中”に「76万円の指輪紛失」→2日後まさかの展開に “持ち主”三代目JSBメンバー「誰なのか探しています」
-
高畑充希と結婚の岡田将生、インスタ投稿めぐり“思わぬ議論”に 「わたしも思ってた」「普通に考えて……」
-
「本当に同じ人!?」 幼少期からイボをいじられていた男性→美容師の“お任せカット”が衝撃 「めちゃくちゃ大変身」
-
「おててだったのかぁああああ」「同じ解釈の人いた笑笑」 ピカチュウの顔が“こう見えた”再現イラストに共感続々、464万表示
-
「腹筋崩壊」 ハスキーをシャンプー&パックしたら…… “予想外のハプニング”に「こ〜れは大変だわ」「沼にでも落ちたのかとwww」
-
“歌姫”ののちゃん、6歳現在の姿に驚きの声「あれっ!?」「ビックリしてます!」 2歳で「童謡こどもの歌コンクール」銀賞受賞
-
黄ばみのある68年前のウエディングドレスを修復すると…… 生まれ変わった姿に「泣いた」「受け継ぐ価値のあるドレス」
-
走行中の車から同じ速さで後方へ飛び降りると? 体を張った実験に反響「問題文が現実世界で実行」【海外】
- 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
- ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
- 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
- まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
- 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
- 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
- ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
- 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
- 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
- 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
- フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
- 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
- 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
- ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
- 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
- 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた