「肩甲骨はがしってなに? 本当にはがれるの?」→はがれません! 指圧師が解説する“肩甲骨の構造”

はがれません(指圧師談)。

» 2017年08月10日 11時00分 公開
[斎藤充博ねとらぼ]

 こんにちは。指圧師をしている斎藤充博です。書店やコンビニで、タイトルに「肩甲骨はがし」という言葉が入った本を見かけたことはありませんでしょうか。

 肩甲骨はがしという言葉は、すっかり定番になっているように感じます。マッサージ店の看板にも「肩甲骨をはがそう」というような言葉が書いてあるのを見たことがあります。グーグルで「肩甲骨はがし」で検索すると、検索流入目当てとみられる記事がたくさん上がってきます。

 ところで、肩甲骨って本当に「はがれる」のでしょうか。結論から言うと構造上、はがれるようなことはありません。


ライター:斎藤充博

斎藤充博

インターネットが大好きで、ウェブ記事を書くことがどうしてもやめられない指圧師です。「下北沢ふしぎ指圧」を運営中。

Twitter:@3216ライター活動まとめ


肩甲骨と周りに付いている筋肉

 肩甲骨は鎖骨と関節しています。また、肩甲骨の周りには17もの筋肉が付いています。

 その中の「前鋸筋(ぜんきょきん)」という筋肉に着目してみましょう。この筋肉は肩甲骨の内側の縁から始まり、そのまま肩甲骨の裏側を通り、胸の横側あたりで終わります。

 つまり、この筋肉は肩甲骨の裏側と胴体をくっつけているのです。この筋肉の付着のラインを見れば、「肩甲骨ははがれない」ということが分かるのではないでしょうか。(もちろん他の筋肉も肩甲骨の位置を安定させています)

肩甲骨はがしの本を読んでみた

 試しに一冊、コンビニで肩甲骨はがしのムックを買ってきました。『がんこなこりが一気に消える! 肩甲骨はがし』(宝島社)という本です。

 「はじめに」にはこんなことが書いてありました。

「肩甲骨はがし」とは、このガチガチに固まった筋肉を筋肉のこわばりからはがして、コリから解放すること。

『がんこなこりが一気に消える! 肩甲骨はがし』(宝島社)より

 「肩甲骨はがし」という言葉はカッコ付きで表現されています。また、紹介されているのは、肩甲骨のまわりのストレッチです。やはり本気ではがそうとしているようには思えません。そりゃそうかもしれません……。

 念のため言っておくと、ムックの内容はとてもいいです! 539円で肩こり解消のこんなまとまった情報得られるなんて、超素晴らしい。

はがれないのになぜ「肩甲骨はがし」なのか

 さて、これらになぜ肩甲骨はがしという言葉がつけられているのか。想像に過ぎませんが、こんな状況が考えられます。

 肩や背中がこると、肩甲骨が動きにくくなってきます。感覚的な話ですが、まるで肩甲骨が背中に「貼り付いている」かのように思えてきませんか。

 まるで「貼り付いている」状態をなんとかしたい。その気持ちが「貼り付ける」の対義語である「はがす」を使って表現されているのだと思います。つまり「肩甲骨をはがす」は、「文学的な表現」というか「例え」みたいなことでしょう。

でも構造は知っておきたい

 「肩甲骨はがし」という表現を否定する気はないのですが、やはり実際の肩甲骨の構造は知っておくべきです。

 というのも、僕は過去に一度やらかしてしまっています。あれはまだ、僕が治療家にあこがれているだけで、専門学校にも通っていなかったころのことです。

 そのときに買った一般向け整体の本に「肩甲骨は本来背中に対して浮いている」「友達の肩甲骨と背中の間に思いっきり4本の指を入れてグリグリすると肩がスッキリする」というようなことが書いてあったのです。

 これを真に受けた僕は、友達の肩甲骨の裏側に思いっきり4本の指を突っ込んで、限界までグリグリしてしまいました。

 友達は痛がっていましたが「大丈夫、本に書いてあるよ」と、どんどん自信を持って続けたのです。ところが、まったく肩こりは改善しませんでした。次の日友達は、激しい筋肉痛に襲われたそうです。1日程度で痛みは引いて、大事には至りませんでしたが……。今思い出しても冷や汗が出ます。

 肩甲骨はがしの本を読んで実践したり、プロの施術を受けたりすることで、こんなことが起こるケースはまずないとは思うのですが、「セルフケアのキャッチフレーズは必ずしも実態に即しているとは限らない」と覚えておくといいかもしれません。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/21/news027.jpg 大きくなったらかっこいいシェパードになると思っていたら…… 予想を上回るビフォーアフターに大反響!→さらに1年半後の今は? 飼い主に聞いた
  2. /nl/articles/2411/20/news049.jpg 高校生の時に出会った2人→つらい闘病生活を経て、10年後…… 山あり谷ありを乗り越えた“現在の姿”が話題
  3. /nl/articles/2411/20/news222.jpg ディズニーシーのお菓子が「異様に美味しい」→実は……“驚愕の事実”に9.6万いいね 「納得した」「これはガチ」
  4. /nl/articles/2411/20/news050.jpg プロが教える「PCをオフにする時はシャットダウンとスリープ、どっちがいいの?」 理想の選択肢は意外にも…… 「有益な情報ありがとう」「感動しました
  5. /nl/articles/2411/20/news054.jpg 「防音室を買ったVTuberの末路」 本格的な防音室を導入したら居住空間がとんでもないことになった新人VTuberにその後を聞いた
  6. /nl/articles/2411/20/news027.jpg 「こんなことが出来るのか」ハードオフの中古電子辞書Linux化 → “阿部寛のホームページ”にアクセス その表示速度は……「電子辞書にLinuxはロマンある」
  7. /nl/articles/2411/21/news083.jpg 間寛平、33年間乗り続ける“希少な国産愛車”を披露 大の車好きで「スカイラインGT-R R34」も所有
  8. /nl/articles/2411/21/news085.jpg 「もしかしてネタバレ?」 “timeleszオーディション”候補者がテレビ局を退社 ディズニーの“船長”としても話題
  9. /nl/articles/2411/18/news107.jpg 走行中の車から同じ速さで後方へ飛び降りると? 体を張った実験に反響「問題文が現実世界で実行」【海外】
  10. /nl/articles/2411/21/news018.jpg グルーミングが出来ない生まれたての子猫、とんでもない体勢になり…… 想像以上のへたくそっぷりに「どこにも届いてないww」「反則級」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた