そば屋やうなぎ屋で見かける「読めない看板」の文字、意味と読み方は?

読めそうで読めない。

» 2017年08月24日 11時00分 公開
[QuizKnockねとらぼ]
生そば=きそば、と読みます

 赤門で有名な東京大学本郷キャンパスから徒歩5分のところに、「かねやす」という由緒正しきお店があります。筆者は入ったことがないのですが、調べてみると小間物屋(つまり雑貨屋)のようです。

altテキスト 「かねやす」の看板

 ところでこのお店の看板、どうにも違和感がありませんか? 「ね」は右側の形が普段と違いますし、「す」に至ってはもはや「そ」にしか見えませんよね。

altテキスト こちらも本郷キャンパス近くのとあるお店の看板。不思議な文字がたくさんありますが……

 このほかにも、うなぎ屋、天ぷら屋、寿司屋など……歴史ある日本料理のお店の看板で似たような文字を見かけたことがある方は多いと思います。では、この暗号のような文字の正体は一体何なのでしょうか?

 私たちが普段慣れ親しんでいるひらがなの中に、突然割り込んでくる謎の文字。それが「変体仮名」です。

 ……えっ、言葉の響きがいかがわしい? まあそう言わずに。変体仮名たちの歴史を知り、彼らの悲しき運命(さだめ)をたどれば、きっとあなたも涙をホロリと落とさずにはいられないでしょう。

変体仮名のはじまり

 ことの始まりは10世紀初頭。このころ平安時代の中期だった日本の貴族社会では、それまで文章に用いていた漢字を、一部を省略することで簡単に書き記すようになりました。これがひらがなの起源です。つまり、ひらがなが発明される以前は、文章を書くために漢字しか使わなかったんですね(例えば「(植物の)アシビの花」は「安之婢乃波奈(あしびのはな)」と表記されていました)。

altテキスト 簡単にいうと、漢字を書くのが面倒臭かったのです

 ここで忘れてはいけないのが、ひらがなの発明以前、1つの音を表記するために用いられていた漢字が必ずしも1種類ではなかったということです。例えば「ka」という音を表記するために、「加」「可」「賀」といった漢字が同時に使われていました。詳しい説明は省きますが、おおよそ区別の必要はなく、どの漢字を使ってもよかったそうです。

 発音と文字が1対1で対応していなかった状況で、漢字を省略するブームが発生。さて、どうなったでしょうか?

 なんと、100種類を超えるひらがなが生まれました。

 100種類と聞くと、とんでもない数のように思えるかもしれません。ですが当時の人々はそれらを難なく使いこなしていました。なにせ、現代の小学1年生が習う漢字ですら80文字ありますからね。

 これらのひらがなは時の流れの中で、書きやすさなどの点から一部形を変えたり、使われなくなったりしたものもありますが、多くの文字は長い間等しい扱いを受けていました。この状況は、幕末の混乱を乗り越えて明治時代まで続いていました。

 そんな和気あいあいとしたひらがなの世界に、突如として激震が走ります。1900年(明治33年)、小学校令施行規則の改正が行われ、「学校教育で用いるひらがなは1つの音につき1文字、全部で48文字に限る」という内容のお触れが全国に出されたのです。

 これにより、ひらがなはその半数以上が私たちの日常生生から姿を消し、古文書の中にだけ登場する化石となってしまいました。「ka」という発音に対応する文字には「加」を省略した「か」が選ばれ、「可」「賀」を省略した文字はもはやめったにお目にかかることができません。

 こうして化石となった「選ばれざる文字」は、まるで傷跡に塩を塗り込むかのように、「変体仮名」というやや気になる(?)名前まで授けられ、現在に至るのです。

制作協力

QuizKnock


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

先週の総合アクセスTOP10
  1. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  2. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  3. 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
  4. 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
  5. “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
  8. お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
  9. 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
  10. 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」