全部面白い! 帰ってきた俺ちゃん「デッドプール2」ネタバレなしレビュー

待ってた❤

» 2018年06月02日 11時15分 公開
[将来の終わりねとらぼ]

 「シリーズ物みたいなヒーロー名だな!」(That sounds like a fucking franchise.)と1作目で自嘲した通り、史上最高興行収入のR指定映画がついに帰ってきた。

帰ってきた俺ちゃん! 「デッドプール2」ネタバレなしレビュー (C)2018Twentieth Century Fox Film Corporation

 ボブの絵画教室を盛大にパロった予告、セリーヌ・ディオンとのコラボMV、「ウルヴァリン: X-MEN ZERO」「ローガン」のヒュー・ジャックマン主演作「グレイテスト・ショーマン」の人気に嫉妬する日本特別映像、デヴィット・ベッカムとのコラボCM……と、トレイラーが公開されるたびに世界中のアメコミファン、メディア、そして何よりヒーロームービーファンを沸かせてきた「デッドプール2」

ヒュー・ジャックマンに嫉妬

 暴力、流血、Fワードはもちろん、おなじみのパロディーや小ネタも満載。おしゃべりで不死身、強いのに脆い。ふざけているかと思ったら突然のシリアス。そんな最強無責任ヒーローこと"俺ちゃん"主演作は前作にも増してアクセル全開、フルスロットルの最強コメディーだった。

 どこが面白いかを指摘するのは難しい。全部面白い。


「隣人のような」ヒーロー

 本作はとにかく自由だ。いきなり他作品のヒーローのフィギュアを灰皿がわりにするわ、忽那汐里扮するユキオのキャラクターに某お馬さんアニメを引き合いに出すわ(しかも後半になって初めて分かる二段オチである)、怒涛の勢いで放たれる軽口に仕込まれたユーモラスなギャグとパロディー。

帰ってきた俺ちゃん! 「デッドプール2」ネタバレなしレビュー 撃たれまくった銃痕を確認する俺ちゃん

 映画、コミック、アニメなどで“おきて破りのヒーロー”というキャラクターが珍しくなくなってきた昨今にあっても、これほどキュートで魅力的なヒーローは珍しい。というのも(例えば)マーベル・シネマティック・ユニバースの面々と比べ、なぜだか彼はとても身近だからだ。彼が戦うのは国家レベルの陰謀ではなく、宇宙規模の侵略者でもない。敵に捕らわれた恋人を救うためであり、悪の道に落ちようとする少年を救うためである――彼がウルヴァリン(というよりヒュー・ジャックマン)に次いでライバル視している、スパイダーマンのように。


仮面の下の人間らしさ

 前作「デッドプール」はヒーロー誕生の物語であり、コメディーでありながらも全体のストーリーを包んでいた雰囲気は悲痛なものだった。荒れた人生の中、ようやく出会った運命の女性と恋に落ちたという幸せの絶頂に不治の病が発覚。怪しげな治療法の誘いに乗って訪れた先で肉体を改造され、不死の醜いミュータントへと変えられてしまう。

帰ってきた俺ちゃん! 「デッドプール2」ネタバレなしレビュー 強敵に痛めつけられる素顔のデッドプール

 X-MENのいうミュータントとは、作中でも語られるように、迫害されてきた民族、マイノリティーの象徴だ。フードをかぶり、醜い顔を見られないよう身を隠す彼に感じ取れるのはピエロの陽気さではない。自らの痛みを客観的に見て、笑い飛ばすことでなんとかそれを受け入れるという彼なりの自己防衛だ。

 しかしそれは同時に、自らが手にしている幸せも遠くから見つめてしまうことにほかならない。それを表していたのが前作のラストシーンであり、そのペシミストぶりとポップアイコンとしての両立が、彼を「最もふざけているように見えて、最も人間らしい」キャラクターにしている。

 「2」は彼のその先を描いている。自分の幸せを自分のものとして素直には受け止め切れなかったウェイド・ウィルソンが、ついに自分の幸福と向き合い、真の幸せを手に入れるための物語だ。

 ある意味本作におけるヴィランは、過去のデッドプール自身ともいえる。徹頭徹尾ふざけきっている彼だからこそ、そのマスクを脱いだときの悲哀は胸を打つものであり、そしてその効果を最大限に発揮するために全編にわたって畳み掛けられるジョーク・下ネタ・不謹慎ギャグの連打は、分かっていてもとてもじゃないが笑いをたえられるようなものではない。

帰ってきた俺ちゃん! 「デッドプール2」ネタバレなしレビュー

 現実世界で起こったディズニーによるFOX買収、マーベル・シネマティック・ユニバースへの言及、(ちょっとばかりの)人種差別問題、イースターエッグ。それら全てを一度の鑑賞で拾うのはとても不可能だ。屈指の原作ファンであり、主演・共同脚本・製作を手掛けたライアン・レイノルズが「デッドプールだけに専念した」と語る通り、演技、演出、撮影、編集、音楽、全てのクオリティーが非常に高い、最高に満足のいく119分だった。

 さて全編にわたって笑い通しとなる本作、その最大の笑いどころはこの物語最大の功労者、彼もまた幸せを奪い取るところだ。知識ゼロでも十二分に楽しめる本作だが、余裕があれば上であげたような関連作にも目を通してほしい。

 緑のヤツも、言われてるほど悪くはないぞ。

将来の終わり

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/20/news096.jpg 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  2. /nl/articles/2412/20/news034.jpg 「博物館行きでもおかしくない」 ハードオフ店舗に入荷した“33万円商品”に思わず仰天 「これは凄い!!」
  3. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  4. /nl/articles/2412/20/news050.jpg 「マジかーーー!」 新札の番号が「000001」だった…… レア千円を入手した人が幸運すぎると話題 「555555」の人も現る「御利益ありそう」「これは相当幸運」
  5. /nl/articles/2412/20/news148.jpg 浅田真央、男性と“デート” 驚きの場所に「気づいた人いるかな?」
  6. /nl/articles/2412/20/news016.jpg 身内にも頼れず苦労ばかりの“金髪ギャルカップル”→10年後…… まさかまさかの“現在”に「素敵」「美男美女でみとれた」
  7. /nl/articles/2412/18/news144.jpg 海岸で大量に拾った“石ころ”→磨いたら…… 目を疑う大変貌に「すごい発見!」「石って本当にすてき」【カナダ】
  8. /nl/articles/2412/18/news047.jpg トイレットペーパーの芯を毛糸でぐるっと埋めていくと…… 冬に大活躍しそうなアイテムが完成「編んでるのかと思いきや」【海外】
  9. /nl/articles/2412/15/news077.jpg 生後1カ月の保護子猫、後頭部を見るとあのアルファベットが……→9カ月の現在にびっくり 「プレミアム猫」「本当にPですね」
  10. /nl/articles/2412/19/news190.jpg 辻希美、17歳長女・希空に「ダサすぎるって」とツッコんだ格好 
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」