ねぇねぇ、みんなの二次元の初恋って誰だった? 「ヲタクに恋は難しい」11話(1/2 ページ)
【ネタバレあり】成海さん、いい恋してますね。
趣味人には好きなものがたくさんある。それが足を引っ張ることもあれば、趣味人だから人とつながるものもある。
「ヲタクに恋は難しい」は、好きなものがある人間たちの、恋なのかなんなのかわからないモヤっとした感情を描いたラブコメディ。ヲタクのみならず、いろんな若い人の背中を押してくれます。
大きな一歩、成海のケース
ゲーマーの二藤宏嵩と、隠れBL同人作家桃瀬成海は、幼馴染。付き合い始めたきっかけは、お互いのヲタク趣味を隠さなくていいから、というものでした。最初のうちは友達感覚だったものの、一緒にいる時間が増えていくうちに、恋人らしくするってどういうことなのかで、迷い始めます。
いつもは宏嵩についていって、彼の家で遊んでいる関係の2人。今回は「1人でアポなしで遊びに行く」という、成海的に大きな一歩を踏み出そうとしています。
家にいるのは確認済み。まあいなくてもいいかな、くらい。ただアポなしとはいえ「迷惑そうなら早めに帰ろう…」という思考は、どうにもちょっと寂しい。「連休の使い方はヲタクそれぞれだし…」
ヲタクといえども趣味が違えば、時間の使い方はまるで別物。「のめりこむ心理」がわかっているからこそ、気を使ってしまう。
恋人的には「来てくれてうれしい」と言ってほしいもの。でも成海は、邪魔って言われたらどうしようと不安ばかり募る。視聴者視点だと、宏嵩は顔に出さず喜ぶと思うけどねー。
成海はコミュニケーション能力が非常に高い子で、会社のいろんな人に好かれています。けれども宏嵩に対してだけは、どうも気を使ってしまう。気を使わないで済むから付き合ったはずなのに。
彼女の心が「ヲタク友達」から「恋愛」にステップアップした証です。そこからまた気を使わなくなるようになるには、もう1ステップ必要かも。
家では宏嵩はゲームやりすぎでダウン。成海が彼の世話をドタバタする羽目になりました、というオチ。「不眠不休でゲームなんてやらないでしょフツー!」と成海はキレてましたが、いや、やるよフツー。
にしても、付き合っているのを全部知っている先輩たちに対してでも、「自分の意思で彼の家に遊びに行った」と知られるのが恥ずかしい成海。すっかり恋する乙女じゃないですか。遊園地回あたりからの恋愛加速度っぷりが半端じゃない。
この2人、キスしたの最初の一回だけなんじゃないかってくらいにウブ。成海と宏嵩の場合は背伸びせず、考えすぎずに、自分たちのペースでいることが、うまくいくコツのようです。
大きな一歩、樺倉のケース
一方樺倉太郎と小柳花子のカップル。小柳は大のBL好きで、BLソムリエ成海に勧められて本を買いあさっているところ。
樺倉もそこそこマンガを読んではいるものの、BLのよさは全くわからない。
「BLねー…男同士でなんでそんなふうに考えるんだか…フツーに男女の恋愛ものでいいじゃん」
なんてことを言うんだ……! まあでも、そう考える人はいますわな(なお本人は百合は好きらしい)。
一見樺倉が頑固すぎる上にBLに偏見持ちすぎなように見えますが、そうじゃない。彼は生真面目なだけです。相手が大好きなものを、うわべで「好きだよ」と言えない。作品への向き合い方が真摯。
自分の趣味を隠さず共有する楽しみを知りやすい時代です。ネットで趣味仲間をすぐ見つけて「いいよねー!」と言えるし、布教したりされたりも簡単。
共有ありきで楽しむ人の代表が、成海。宏嵩がゲーム以外にあんまりこだわりがないため、成海の「好き」語りの熱量をすんなり受け止められる、いいあんばいの関係です。
小柳「アンタの好き嫌いが強いのは『好き』って言葉を軽い気持ちで使えないからでしょ?」「だから地雷も多くてネサフもできないし 人と楽しさを共有するんじゃなく 1人でしっぽり浸りたいタイプってわかってるけど」
この小柳の評価は、樺倉のキャラクター性を非常によく表現した一文です。好きなマンガを買ったりアニメを録画したりして、1人でじっくり楽しむ。誰かと共有しなくても満足できるので、樺倉が他のメンバーにヲタク話をしたがっているシーンはほぼありません。
ここまでの話は「ヲタク」趣味嗜好の話。恋人と一緒にいる時間の中で、より大事なものを考えた結果、樺倉は小柳の「共感したい」気持ちを優先しました。
まあ、そのあとめっちゃハマるんですけどね。心底まっすぐで素直で不器用な人です。
ヲタクたちの初恋
初恋の話になった4人。こういうのは大体成海のせい。もっともリアルな初恋の話よりも、二次元の初恋の話の方が盛り上がるのが、ヲタクのサガです。
ただこの4人の中でも、宏嵩と成海は幼馴染だったというのを忘れてはいけない。一時疎遠だったとはいえ、お互いの子供時代を知っている関係です。うかつなことは言えない。
この作品は幼いときに好きだった女の子と再開し、初恋をかなえて、付き合い始めた不器用な青年の物語だと考えると、胸キュン度合いが加速します。改めて全編宏嵩目線で見直すと、「実はこのとき宏嵩の心中は…」というニヤニヤなシーンが多いです。
「ヲタクに恋は難しい」は、ディープな趣味を持っていることが、生活や人間関係に影響を与えていることも描いています。しかしゲームやBLや萌えやコスプレが、少なくとも2つのカップルの間ではマイナスに作用はしていません。みんな人生楽しそうです。だから恋人付き合いの中でも、過干渉せず適切な距離感を保ち、うまく幸せになっています。
アニメ4話「ヲタクだから 楽だから そんな理由で一緒にいるんじゃなくて 好きなことしてるときの成海が大好きなので」という宏嵩のセリフ。もし成海が洋服が好きだったとしても、旅行が好きだったとしても、やっぱり宏嵩は成海を好きになっていたに違いない。
原作コミック5巻以降、大きな事件はあまり起こらないけれども、ちょっとずつ前に進む様子を見ることができます。
特に宏嵩がどんどん自主的に成長しようとしていきます。ぜひ追ってみて、応援してあげてください。
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