「電子書籍より紙の本を買ってもらえるとうれしい」――漫画編集者の意見に賛否 「出版のシステム自体に問題があるのでは」

「紙の本が売れないと、次巻も売れないと見込まれて部数が減る」という理由に対し、「電子書籍の売り上げも評価に含めればいいだけでは」との指摘が寄せられています。

» 2018年09月15日 20時00分 公開
[沓澤真二ねとらぼ]

 「電子書籍より紙の本を買ってもらえるとうれしい」と主張する、編集者による漫画がTwitterで議論を呼んでいます。作者は『終末のワルキューレ』や『北斗の拳 拳王軍ザコたちの挽歌』を担当している山中(@ComicYamanaka)さん。個人的見解として、出版社の事情を伝えています。


アイキャッチ 「紙の本が売れないと、次巻を多く刷るのが難しくなる」という切実な問題が主な理由。ただ、「電子書籍版の売り上げは評価対象にならないのか?」といった疑問も

 ほとんどの漫画が紙と電子の両方で出版される昨今、山中さんはたまに読者から「紙と電子、どちらを買うほうが作家さんへの応援になりますか?」と聞かれることがあるそうです。山中さんの答えは「紙」で、理由は「紙が売れないと次巻の部数が減るから」というシンプルなものでした。


1-1

 その背景には、「単行本の刷り部数の決め方」がありました。当然ながら紙の本は売れないと赤字になるので、部数は売れ行きの予測から判断されます。2巻以降については前巻の販売数をみて決めるため、紙の売れ行きが悪いと部数を減らすことになるのだそうです。最悪、出しても採算がとれないと判断された場合は、連載が打ち切りになることも。


1-2

 一方、電子書籍はというと、在庫を持たなくて済むメリットがあるので、もし売れなくとも、紙のほうが売れていれば出し続けられるわけです。こうした事情から、山中さんは「買っていただけたら紙でも電子でもうれしい」としつつも、「特に3巻くらいまでは紙のほうが売れるとありがたい」と述べています。


1-3

 この漫画には、「紙の本を買って応援したい」「推しの作品は紙も電子も両方買う」と好意的な声が上がる一方、「電子書籍を軽視してはいないか」といった批判も多く寄せられました。「紙が売れないと次につながらないのは業界のシステムに問題があるのでは」という、厳しい指摘も。ほかにも、「紙の売上だけを見て売れてないと判断されて打ち切られてしまったら、作者、出版社、読者、誰も得しない」「電子書籍の売り上げも勘案するよう評価システムを変えればいいだけ」など、さまざまな意見が寄せられています。

 批判を受けて、山中さんは「電子書籍の売上を軽視しているわけではない。『時代に逆行して紙の本を買おう』といった意図はない」「あくまでも『どちらを買ったほうが作家さんへの応援になりますか?』という質問への個人的な回答」と説明。また、「紙のほうが売れないからといって、電子版が売れていても作品が打ち切りになることはない」と、漫画の内容を補足しています。


 物議を醸した漫画は先輩の目にも留まり、山中さんは「あの言い方はよくない。あと勉強不足」と注意されたそうです。そして、その出来事を後日談として漫画化し公開しています。


2-1

 電子書籍部門にいる先輩は、「漫画が紙しかなかった時代には連載が終わっていたかもしれない作品が、電子版があるおかげで続けられる場合もある」「電子版から火が点いてヒットする作品もよくある」と、山中さんの漫画の問題点を次々と指摘。そして、「連載を続けるかどうかの指標は売上だけでなく、作品の将来性や社会的意義など、いろいろな要素がからんでくる」と説いています。


2-2

 最後に「俺たちが扱っているのはただの商品じゃない、『作品』なんだ。相手にしているのはただのお客さんじゃない、『読者』なんだよ。それを忘れるな」と説き、先輩は去っていきました。山中さんは一連の出来事を省みて、件の漫画に不適切な内容があったと、あらためて謝罪しています。


2-3

作品提供:山中(@ComicYamanaka)さん

(沓澤真二)


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2410/13/news078.jpg フリーアナウンサー、13歳娘が“超難関国家資格”に合格したことを報告 「ひー! すごすぎます」「おめでとうございます」
  2. /nl/articles/2410/14/news047.jpg 「怖すぎる」 昔のCDのバックアップを試みたら…… “悲惨すぎる結果”が280万表示 「こんな壊れ方するんか」
  3. /nl/articles/2410/14/news038.jpg 尻尾がちぎれた子猫をサーキット場で保護→1年後“ムキムキ最強生物”に 驚異の成長ビフォアフが大反響 さらに1年後……飼い主に話を聞いた
  4. /nl/articles/2410/12/news045.jpg 「ワロタw」 “最近のAIの賢さ”が一目で分かる会話が12万「いいね」の人気 「コントだ」「草」
  5. /nl/articles/2410/10/news018.jpg 「どえらいもん売ってた!!」 ハードオフに2万2000円で売ってた“まさかの商品”に「必要性ないけど欲しいw」
  6. /nl/articles/2410/13/news007.jpg 高級メロンの種を植え、4カ月育てたら…… 予想外の展開に「人生で初めてメロンを応援しました」「まるで魔法のよう」
  7. /nl/articles/2410/14/news011.jpg 柴犬に新車をプレゼントしたら…… まさかの展開に「なにこれ最高じゃん」「オレンジのJeepバチくそお似合いです」と61万再生
  8. /nl/articles/2410/10/news047.jpg 東京駅で“あるはずのない落とし物”が見つかり話題に 深まる謎に「未使用なのか」「すげぇ」「意味が分からない」
  9. /nl/articles/2410/13/news020.jpg 「変な声出た」 独特な“芸術”の2文字→よく見ると……  分かると気持ちいい仕掛けに10万いいね 「何度もスマホくるくるした」
  10. /nl/articles/2410/13/news034.jpg “韓流ブーム”の元祖「冬のソナタ」から22年、出演キャストらの現在 突然の逝去にファンに衝撃も
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  2. 「驚愕の修理代」の金額明かす お見送り芸人しんいち、約2000万円の愛車が故障で「終わった」「お金がないです」
  3. プロ警鐘「エアコン、夏が終わったらコレやらないと……」が530万再生 水漏れや“内部のスライム化”を防ぐコツが目からウロコ
  4. “医療ミス”で両頬に大きな火傷 「鏡見るたび涙が止まらない」フォロワー24万人のモデルが悲痛の声 「周りの目が怖い」
  5. スーパーで買ったニンニクを土に植えると…… ぼこぼこ増える驚きの簡単栽培に「たくさん出来て最高」「植えてみよう」
  6. 「これは合格出せない」 リンガーハットがジョブチューン挑戦→“まさかの不合格メニュー2品”に騒然
  7. 「全く動けません」清水良太郎がフェスで救急搬送 事故動画で原因が明らかに「独りパイルドライバー」「これは本当に危ない!!」
  8. 「本当に56歳…?」 “王騎”大沢たかお、“腕と足の太さがほぼ同じ”の圧倒的肉体を披露 「かっこよすぎる」
  9. モグラに似てる“ヤベぇ虫”を、2カ月育ててみたら…… 感動の展開に「これはマジで凄い」「学術発表レベル」
  10. カインズの「撒くだけで防草できる砂」本当かどうか検証してみたら…… 驚きの結果に「魔法のような砂、買いに行きます!」「これさえあれば」
先月の総合アクセスTOP10
  1. “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
  2. 「しまむら」に行った58歳父→買ってきたTシャツが“まさかのデザイン”で3万いいね! 「同じ年だから気持ちわかる」「欲しい!」
  3. 友人に「100円でもいらない」と酷評されたビーズ作家、再会して言われたのは…… 批判を糧にした作品が「もはや芸術品」と490万再生
  4. 高校3年生で出会った2人が、15年後…… 世界中が感動した姿に「泣いてしまった」「幸せを分けてくださりありがとう」【タイ】
  5. 「ま、まじか!!」 68歳島田紳助、驚きの最新姿 上地雄輔が2ショット公開 「確実に若返ってる」とネット衝撃
  6. 荒れ放題の庭を、3年間ひたすら草刈りし続けたら…… 感動のビフォーアフターに「劇的に変わってる」「素晴らしい」
  7. 食べた桃の種を土に植え、4年育てたら…… 想像を超える成長→果実を大収穫する様子に「感動しました」「素晴らしい記録」
  8. 「天才!」 人気料理研究家による“目玉焼きの作り方”が目からウロコ 今すぐ試したいライフハックに「初めて知りました!」
  9. 「エグいもん売られてた」 ホビーオフに1万1000円で売られていた“まさかの商品”に「めちゃくちゃ欲しい」
  10. 義母「お米を送りました」→思わず二度見な“手紙”に11万いいね 「憧れる」「こういう大人になりたい」と感嘆の声