工事現場にひな人形、サンタ、カブトムシ! 仮囲いのディスプレイに熱注ぐ「ガテン系アート」 中の人にインタビュー(2/3 ページ)

» 2018年12月30日 18時00分 公開
[黒木 貴啓ねとらぼ]

櫻田: 最近の工事現場では、仮囲いが死角を生んで通行人がぶつかったりしないように、角を透明にして見通しをよくするところが増えているんです。そこで今回のように生まれた透明なスペースに、植樹したり造花を置いたりすることがあります。我々も何も置かないのは殺風景だなということで花をよく植えますし、他の現場でも見掛けますね。

工事現場 仮囲い ディスプレイ アート 作品 コーナー ガテン系アート 麹町工事現場 仮囲い ディスプレイ アート 作品 コーナー ガテン系アート 麹町 今回の現場も、最初は花を設けるだけだった

 ただ今回みたいに、定期的に展示物を変えたり、プロジェクターで絵を照射したりと、ここまでこだわったのは初めてです。

今野: 他の現場でも花を一つ置いているところはよく見掛けますが、ここまで凝っているのはあまり見ないですね(笑)

櫻田: クリスマスになるとタワークレーンから電飾を吊り下げてクリスマスツリーを作っている現場とか、そういったものは10年前ぐらいから見るようにはなりました……が、まだまだまれだと思います。この麹町から四ツ谷までの間の現場でも、うちぐらいでしたね。

――なぜここまでこだわるように……?

櫻田: 仮囲いを作ったのは2017年のGW明けでしたが、このスペースも最初は花を置いただけだったんです。ですがせっかく人通りの多い場所ですし、この一帯の現場でうちだけでも面白いことができないか、ということで、クリスマスに合わせて12月からサンタクロースの絵をプロジェクターで投射することにしました。

工事現場 仮囲い ディスプレイ アート 作品 コーナー ガテン系アート 麹町工事現場 仮囲い ディスプレイ アート 作品 コーナー ガテン系アート 麹町 プロジェクターで投射したサンタの絵

今野: 所長はプロジェクターを、ぼくは足元に設ける花を担当していたのですが……正直言うと、最初は所長のノリに付き合わされる形でいやいやながらやっていたんです(笑) 本物の花だと枯れてしまい手入れが面倒なので、11月上旬には造花に切り替えたくらいでした。

 ですがその時期にすごく強い台風が来て、コーナーのなかにイチョウの枯れ葉がたまってみすぼらしくなってしまって。せっかくコーナーを作っているのに現場が汚く思われては逆効果ですし、もともと上のサンタの絵との統一感も気になっていたので、百均ショップでクリスマスグッズを買って代わりに置いてみたんです。綿で雪を再現して、クリスマスの小物をちりばめて……全部で400円ぐらいでした。

工事現場 仮囲い ディスプレイ アート 作品 コーナー ガテン系アート 麹町工事現場 仮囲い ディスプレイ アート 作品 コーナー ガテン系アート 麹町 ここから足元のディスプレイがだんだん豪華になってゆく

――そんなスロースタートだったとは……。

今野: 現場が終わってから作業しなくてはいけないので早く帰りたかったですし、あのコーナーって上にしか出入り口がないので、展示のためわざわざ入り込むのが大変なんです(笑) あとは歩行者にぶつからないよう配慮するためのクリアパネルなので、展示に凝りすぎて注意を引いてしまうのも本質でもないのかな、とも思っていました。

櫻田: 仕事に向かう人々に、一つの憩いや癒やしを提供できたら、くらいの気持ちでしたね。心があたたまってもらうことで、仮囲いで仕切られている工事現場の世界と世間の人たちとの間に、ちょっとでもつながりが生まれるのではないかと。


仮囲いのため週末は百均ショップへ行くように

――どうやって展示がエスカレートしていくのですか?

今野: それが季節ものにしてしまったせいで、シーズンが終わるたびにディスプレイを更新しなくちゃいけなくなったんです。

 1月に入るとクリスマスはもう似合わないので、急いで百均で赤い布、鏡餅、門松を2つ買って、400円で正月らしい展示を作りました。でも小正月が終わるタイミングで現場の人から「もう正月じゃないじゃん」「次どうするの」って指摘が来まして、次は節分、その次はバレンタイン、ひな人形……と。

工事現場 仮囲い ディスプレイ アート 作品 コーナー ガテン系アート 麹町 「正月」

工事現場 仮囲い ディスプレイ アート 作品 コーナー ガテン系アート 麹町 「節分」

――終わらない流れじゃないですか。

今野: 自分としては忙しいし材料費も自腹だったので、前田建設のオリジナルキャラクターの人形を置いて終わりにしたいと言っていたんですが、会社のPRとなるようなものは公道に向けて設置するのもNGらしく……。

 それでも現場の人たちから反応をもらっていくうちに、「次はこんなテーマで行ってみよう」と、義務感ではなく自分で展示づくりを楽しむようになっていきました。うちの近所に百均ショップがたくさんあるので、週末はだいたい必ず3店巡ってディスプレイ用にいい感じのアイテムがないか探す生活になっていましたね。

――完全にライフワーク。

今野: 特に夏は百均にアイテムがめちゃくちゃ多くて……「カブトムシ」「海」「ひまわり」の3パターンも思い付いてしまったので、全ての材料を買って家で用意していました。忙しくて展示を入れ替える時間がなさすぎて、お盆休みのある日、「海」をセットするためだけに現場に来たこともあります。

――こだわりがどんどん半端ないことに。

工事現場 仮囲い ディスプレイ アート 作品 コーナー ガテン系アート 麹町工事現場 仮囲い ディスプレイ アート 作品 コーナー ガテン系アート 麹町 夏の三部作の第一部「カブトムシ」。虫かごに入っている砂は左官用のものだそうな。カブトムシも虫取り網も全部百均でそろえました

工事現場 仮囲い ディスプレイ アート 作品 コーナー ガテン系アート 麹町 二部「海」。左官用の砂をトレイにいれて砂浜に見立てたり、後ろの花もハイビスカスに変わっていたりと、個人的にもっとも芸術性を感じる作品

工事現場 仮囲い ディスプレイ アート 作品 コーナー ガテン系アート 麹町 そして幻となった三部「ひまわり」。忙しくて入れ替える暇がなく、結局ロッカーにお蔵入りとなってしまった

櫻田: 自分のプロジェクターは、サンタが終わった次は歩道に魚が泳ぎ回っているような絵を投影しようと思っていたのですが、敷地の外ですしお子さんが注視してしまって事故につながる可能性もあったので断念しました。これだけ構想を練っていたんですが……(方眼紙を見せる)。

工事現場 仮囲い ディスプレイ アート 作品 コーナー ガテン系アート 麹町

工事現場 仮囲い ディスプレイ アート 作品 コーナー ガテン系アート 麹町

――うわ、方眼紙にラフ絵がびっしり……!

櫻田: なので引き続きサンタと同じように、絵をデザインしてはそれを投射するための専用レンズを機械機器のリース業者さんに作ってもらい、コーナーの壁に映し出してきました。

 春は子どもたちがランドセルを背負っている絵、夏は天の川を眺めている絵……これも注文と違うイメージが仕上がってきたりとか、なかなか大変なんですよ。最初は2週間くらいで作る予定だったのに、どんどん制作時間がのびていって……最後の作品は3カ月くらいかかっていました。

工事現場 仮囲い ディスプレイ アート 作品 コーナー ガテン系アート 麹町工事現場 仮囲い ディスプレイ アート 作品 コーナー ガテン系アート 麹町 ラフ絵を3DCGに起こして……

工事現場 仮囲い ディスプレイ アート 作品 コーナー ガテン系アート 麹町工事現場 仮囲い ディスプレイ アート 作品 コーナー ガテン系アート 麹町 そこから専用レンズを作って、照射器にハメ込んで投影していた

――こっちも裏でそんな手の込んだことを……夜にプロジェクターに気づいたときは「こんなことまでやっていたのか」と本当に驚きました。

櫻田: 今野くんがだんだんいいディスプレイを下で作ってくれるようになったので、私も負けないつもりで相乗効果が生まれていきましたね

――音楽ユニットのインタビューみたいな発言ですね。お二人で印象に残っている展示はありますか?

今野: 節分の展示をしたとき、一悶着(ひともんちゃく)あったんですよ。

――一体どんな……(ゴクリ)。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. /nl/articles/2412/14/news019.jpg ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. /nl/articles/2412/15/news011.jpg 「懐かしい」 ハードオフで“30年前のPC”を購入→Windows 95をインストールしたら“驚きの結果”に!
  4. /nl/articles/2412/16/news107.jpg 「靴下屋」運営のタビオ、SNSアカウント炎上を受け「不適切投稿に関するお詫び」発表 「破れないストッキング」についてのやりとりが発端
  5. /nl/articles/2412/15/news035.jpg 餓死寸前でうなり声を上げていた野犬を保護→“6年後の姿”が大きな話題に! さらに2年後の現在を飼い主に聞いた
  6. /nl/articles/2412/15/news002.jpg 毛糸でフリルをたくさん編んでいくと…… ため息がもれるほどかわいい“まるで天使”なアイテムに「一目惚れしてしまいました」「うちの子に作りたい!」
  7. /nl/articles/2412/10/news133.jpg 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  8. /nl/articles/2312/15/news032.jpg 放置された池でレアな魚を狙っていた親子に、想定外の事態 目にしたショッキングな光景に悲しむ声が続々
  9. /nl/articles/2412/15/news028.jpg 脱北した女性たちが初めて“日本のお寿司”を食べたら…… 胸がつまる現実に考えさせられる 「泣いてしまった」「心打たれました」
  10. /nl/articles/2412/16/news023.jpg 父「若いころはモテた」→息子は半信半疑だったが…… 当時の“間違いなく大人気の姿”に40万いいね「いい年の取り方」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  2. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  3. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  4. 高校生のときに付き合い始めた2人→10年後…… 現在の姿に「めっちゃキュンってした」「まるで映画の世界」と1000万表示突破
  5. 大谷翔平の妻・真美子さん、ZARA「8000円ニット」を着用? 「似合ってる」「シンプルで華やか」
  6. 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」 投稿者に感想を聞いた
  7. 高校生時代に父と撮った写真を、29年後に再現したら……再生数1000万回超えの反響 さらに2年後の現在は、投稿者に話を聞いた
  8. 散歩中、急にテンションが下がった柴犬→足元を見てみると…… 「そんなことあります?」まさかの原因が860万表示「かわいそうだけどかわいい」
  9. コメダのテイクアウトで油断して“すさまじい量”になってしまった写真があるある 受け取ったその後はどうなったのか聞いた
  10. 「やめてくれ」 会社で使った“伝言メモ”にクレーム→“思わず二度見”の実物が200万表示 「頭に入ってこない」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」