工事現場にひな人形、サンタ、カブトムシ! 仮囲いのディスプレイに熱注ぐ「ガテン系アート」 中の人にインタビュー(3/3 ページ)
今野: ぼくの地元の東北では、節分では落花生をまいているんです。だからコーナーに落花生を置いてみたんですが、現場から「なんだあれは」「節分といえば大豆だろ」「落花生ってお前」と総ツッコミを受けたんです。所長からも批判されました。
櫻田: 節分は大豆でしょ。
――すごく楽しそうな現場ですね。
今野: あとバレンタインのディスプレイでは、奥さんが「これをちりばめたらいいんじゃないですか」とハート型の装飾をいっぱいプレゼントしてくれたんです。百均で白い布とプレゼント箱を3つ買って、そこへ実際にハートをちりばめてみたらかわいらしくって、さすが女性の感性は違うなぁと感心しました。
――ステキな夫婦ですね……。
今野: 5月は母の日の土日だけ、カーネーションを展示しました。「端午の節句」と「あじさい」の間の、幻のカーネーションですね。
――2日間限定の展示まであったんですか!? しかもビジネス街で土日だけとはなんというレア感……見逃したの悔しいです。
櫻田: 絵に関しては、最後に照射していた赤とんぼの風景は、実は麹町とかかわりがあったんですよ。この現場の近くに大久保利通さんの哀悼碑が立っている「清水台公園」があると思うんですけど、昔あのあたりで子どもたちがよく赤とんぼを追い回して遊んだ、という話を聞いていたので、時代を超えてその原風景を映し出してみました。
――お二人のコーナーへの情熱がよーくわかりました。
外でも中でもコミュニケーションが生まれた
――周囲の反応はどうだったんでしょうか。
櫻田: 冬にサンタの絵を照射したとき、100人通る間に何人反応あるか試しに数えてみたんですよ。
今野: そんなことやっていたんですか(笑)
櫻田: そのときは2、3人くらい食いついた方がいました。親子2人組のお子さんだけが食いついただけでなく、OLらしき女性2人が写真を撮っていたのはびっくりしましたね。その後も子どもや女性が反応してくださるのをちょくちょく見掛けました。
今野: ぼくは仮囲いの中で作業しているので外の様子は全然わからないんですけど、夏にカブトムシのフィギュアを展示していたとき、展示を見た男の子に「カブトムシください」って直接言われたことがありました(笑) そのときばかりは「ちゃんと子どもたちに見てもらえているんだなぁ」と、胸にじんと来ましたね。
――なんだかんだで現場の方と通行人たちとでコミュニケーションが生まれていたわけですね。
今野: 仮囲いが撤去される直前がハロウィーンシーズンだったので、パネルの外にかぼちゃやコウモリなどそれらしいステッカーを貼っていたのですが、通りがかった子どもに「コウモリほしい」って言われたので「いいよいいよ!」ってあげました(笑)。
櫻田: ハロウィーンは子どもが食いついているのを2回くらい見たよ。
――もう仮囲いは無くなってしまいましたが、あらためてディスプレイをやってみていかがでしたか?
今野: 最初は面倒なので早く仮囲いが無くなってほしかったですが(笑)。結果的には仮囲いの外でも中でもいろんな交流が生まれたので、今はやってよかったと思います。
普段から現場の人たちとは会話はしますが大体は仕事の話なので、「次何の展示するの」「節分で落花生は違うんじゃない」と話したり、ディスプレイが変わるたびに写真を撮ってくれる職人さんがいて仲良くなったり、内側でもぼくらと職人さんたちでコミュニケーションするいいきっかけになりました。
櫻田: 世間様からすると仮囲いの中でどんな人たちが働いているのかってわからないですよね。一方で我々は第三者のすぐそばで工事をする上で、みなさまをケガさせてはいけないように、実はいつも外の方々のことを気に掛けてはいるのです。
ディスプレイを設けることで、そういう存在にちょっとでも気づいてもらえたら、そして現場も外により配慮して丁寧な作業ができればいいなと思っていました。工事現場は騒音などご迷惑かけてしまう立場ですが、イメージ改善に少しでもつながったらうれしいです。
――次の現場でもガテン系アートは見られそうでしょうか……?
今野: もう一回やれと言われたら悩みますが……次やるときはもっと展示コーナーに入りやすいよう扉を設けましょうよ(笑)
櫻田: そうしようか(笑)
* *
通勤中にぼくに癒やしを与えていた仮囲いはもう無くなってしまった。しかし今もビルの前を通りがかると、「とうとう完成したんだなぁ」と親近感をもって見上げたり、ひな人形との出会いを思い出して口元を緩めたりする。まったく他人のビルなのに。これが仮囲いのディスプレイに気づいた者だけにしか湧いてこない感覚だと思うと、特別なつながりに思えて、ますますにやけてしまうのだった。
今日も日本のどこかでガテン系アートが、工事現場の人々と通行人の心をつないでいるのかもしれない。
(黒木貴啓)
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