なぜコインハイブ「だけ」が標的に 警察の強引な捜査、受験前に検挙された少年が語る法の未整備への不満(2/3 ページ)
――Coinhiveの削除からしばらくたってから警察が訪ねてきたそうですね。
少年:Coinhiveの削除から半年以上がたったころの早朝、私が自室で休んでいると、親が私を起こす声が聞こえたので、起き上がって部屋の外に出ました。すると、自室の前までやってきた警察官数人が私の部屋の中へと入ってきました。突然のことに驚きつつも「令状を見せてほしい」と頼むと、「不正指令電磁的記録○○(※)」という表題で自分の名前が書かれた書類を見せられました。このとき、任意か強制かも確認しましたが、「強制」とのことで、何の事件で捜査されることになるのかを考えましたが、思い当たりませんでした。
(※)「不正指令電磁的記録○○」……情報提供者の少年によると、「○○」の部分に何が書いてあったのか記憶が定かでないとのこと。供用、保管、取得などと推測される。
――どこでCoinhive事件での捜査だと分かったのですか。
少年:当初は「借りているサーバか、自宅で動かしていたPC・サーバに何か仕込まれたのか」と、遠隔操作事件の事を思い出していましたが、次のやり取りから捜査の概要が見えてきました。
少年:(Coinhiveを設置したサイトのドメイン)〇〇ですか?
警察官:そうだ。(そのサイトで)何か使わなかったか?
少年:Coinhive?
警察官:そうだ。
少年:捜査員が「私が本当に悪いとされているものを使ったかのような口ぶり」だったことには違和感がありましたが、12月10日に掲載された日経新聞の記事の内容を思い出しました。
――いくつか物品の差し押さえを受けたそうですね。主にはどんなことを聞かれましたか。
少年:警察官によるPC操作でSNS、ドメイン、メールなどにログインし、情報の確認をされました。またそれらのIDとパスワードを紙に書きだすように言われ、従いました。IDやパスワードを伝えたり書き出したりする事は、家宅捜索の上で必要な事だとは理解していますが、情報やセキュリティを専門的に勉強している私にとって、それらの行為やスマートフォンの中身、SNS上の会話を見られることは非常に屈辱的でストレスを感じる行為でした。また矢継ぎ早な質問の中、Coinhiveに登録していた仮想通貨の出金先のアドレスがなかなか思い出せず私が悩んでいると、複数の警察官から「これだけしっかり覚えているのだからこれだけ忘れているのはおかしい」「何か隠しているだろう」「不利になるだけだぞ」と追い詰めるような言葉があり、少しパニックになったという場面もありました。
――その後はどういった流れで調べが行われましたか。
少年:差し押さえ等が済んだ後に、「あらためて話を聞くので警察署に来るように」と言われたので、「逮捕はされないようだ」と思いました。その後数回警察署に赴いて素直に取り調べを受けましたが、「単純に私が悪かったです。ごめんなさい」で終わらせてしまってはいけない事件なのではないか、と思い、警察官があらかじめ用意していた表現を修正してもらったうえで、調書には「現在これは悪質であり罰するべきという意見や、これは犯罪に当たらないのではないかという意見等さまざまありますが、私としては法的な判断を早く出してほしいと思っています」という内容を記述してもらいました。一方で「反省している」旨の記述は私の話を構成するうえでどうしても必要だとのことだったので、「反省しています」ということも書いてもらいました。
――取り調べ後はどんな行動をしましたか。
少年:警察からは「できるだけ外に(Coinhive事件のことを)言うな」と不可思議な口止めを受けましたが、有識者に相談をした方が良いと判断し、セキュリティ研究者の高木浩光先生にメールで相談をしました。
――高木浩光さんにコンタクトしたのはどういった思いからだったのでしょうか。
少年:Librahackや遠隔操作事件のような面倒な厄介事に巻き込まれたくないという思いや、将来自分の専門分野となるであろう情報・個人情報関連の法律(特に不正指令電磁的記録に関する法律など)は勉強をしておいた方がいいと、以前から自分なりに学習を続けていました。しかし、自分の「Coinhive利用での捜査には問題点があり、法律の解釈が問われるべき話だと思う」という考え方が誤り・思い違いである可能性もあったため、自分の行動が正しかったのか自信がなく、専門家の助言を仰ぎたかったからです。高木先生からはメールの翌日に連絡をいただきました。
――高木さんの見解はいかがでしたか。
少年:「これは不正指令電磁的記録供用罪に当たらず、警察・検察は不当な捜査をしている 重大な問題が進行中であると考えています」という回答をいただきました。これを見て不安の中でも少しだけ安心することができました。その後高木先生は複数の情報提供があったことから、5月19日に「高木浩光@自宅の日記」にて「緊急周知 Coinhive使用を不正指令電磁的記録供用の罪にしてはいけない」という記事を掲載しています。
審判不開始決定
――今回の場合、情報提供者さんは事件当時10代ですから「少年事件」ということになりますよね。処分はどうなったのでしょうか。
少年:私は「コンピュータプログラムに対する社会的信頼」を害したということで、「不正指令電磁記録の保管罪にあたる」ということでしたが、結果的には「審判不開始決定」が出ました。これは成人の刑事事件における不起訴のようなものです。家庭裁判所調査官との面談結果や少年照会書と呼ばれる書類を真摯に作成した結果ですが、当時私は受験を控えていたので、貴重な勉強時間を失ったことはとてもつらかったです。
――少年事件ならではの難しさもあったとうかがいました。
少年:本件はある種、法的な解釈が問われるようなのですが、少年事件ではそれが罪であるかどうか分からないうちから反省が求められることが多いということ、少年に対しては略式起訴や起訴猶予というものが存在せず家庭裁判所での審判をするしかないということ、家庭裁判所での審判ではあくまで反省と更生がメインとなってしまうという点が問題だと感じました。
家庭裁判所での審判でも弁護人にあたる「付添人」として弁護士を付けることは可能で、無罪にあたる不処分を争う余地は一応ありますが、それには非常に多くの費用や時間がかかってしまいます。また私個人としてはモロさんの件が注目された事によって、この件でなされるべき問題提起は果たされたと思っており、自分の時間を犠牲にしてまで争う必要は無いと判断しました。Coinhiveにモラル的な問題があるという点については理解をしていますし、少し疑問に思うところもありますが、最初から自分が本件について反省をすること自体に異論はありませんでした。
結果的に弁護士を選任したり争うことも無く、審判不開始処分となりましたが、今まで警察のお世話になった様な事が一切なかっただけに精神的なダメージがあった事も今回の事件のつらさの一つでした。
当事者が抱くCoinhive事件の疑問点
――Coinhive事件では、情報提供者さんを含め複数人が検挙されました。中でもフリーランスWebデザイナーのモロさんは、罰金10万円の略式命令を受けましたが、これに異議を申し立てて刑事裁判が進行中です。これについてはどう見ていますか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
「大物すぎ」「うそだろ」 活動中だった“美少女新人VTuber”の「衝撃的な正体」が判明 「想像の斜め上を行く正体」
-
川で拾った普通の石ころ→磨いたら……? まさかの“正体”にびっくり「間違いなく価値がある」「別の惑星を見ているよう」【米】
-
中村雅俊と五十嵐淳子の三女・里砂、2年間乗る“ピッカピカな愛車”との2ショを初公開 2023年には小型船舶免許1級を取得
-
大きくなったらかっこいいシェパードになると思っていたら…… 予想を上回るビフォーアフターに大反響!→さらに1年半後の今は? 飼い主に聞いた
-
「壊れてんじゃね?」 ハードオフで買った110円のジャンク品→家で試したら…… “まさかの結果”に思わず仰天
-
猫だと思って保護→2年後…… すっかり“別の生き物”に成長した元ボス猫に「フォルムが本当に可愛い」「抱きしめたい」
-
なんと「身長差152センチ」 “世界一背が低い”30歳俳優&“世界一背が高い”27歳女性が奇跡の初対面<海外>
-
大谷翔平と真美子さん、「まさかの服装」に注目 愛犬デコピンも大谷家全員で“歩く広告塔”ぶり発揮か
-
「こんなことが出来るのか」ハードオフの中古電子辞書Linux化 → “阿部寛のホームページ”にアクセス その表示速度は……「電子辞書にLinuxはロマンある」
-
「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
- 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
- ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
- 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
- まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
- 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
- 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
- ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
- 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
- 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
- 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
- フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
- 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
- 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
- ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
- 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
- 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた