「きのう何食べた?」山本耕史の演技力の幅がすごすぎた3話。視聴者「クマみが足りないのでは……」→「マジ小日向さん!」
シロさんと話すときは渋い低音、ジルベールと話すときはとろけきった甲高い声←ギャップ最高。
「小日向さん最高!」「マジ小日向さん」「小日向さん可愛すぎ!」と山本耕史への絶賛の声が相次いだ、ドラマ24「きのう何食べた?」(テレビ東京)3話。西島秀俊扮する弁護士・筧史朗(シロさん)と内野聖陽扮する美容師・矢吹賢二(ケンジ)という同居中の同性カップルの姿を描いた“平成最後のホームドラマ”だ。原作はよしながふみ。原作コミック1〜2巻が無料キャンペーン中。
先週放送された3話は、人気キャラクター小日向大策の登場回ということで注目を集めていた。小日向さんは物語に登場するもう一組の同性カップル。竹宮恵子のコミック『風と木の詩』に登場する美少年ジルベール似(?)の航(わたる)という恋人と同居している。
原作の小日向さんはガッチリしたクマ系のルックスで、「ゲイなら8割方が『あ かっこいい』って思う見た目の人」(原作でのシロさんのコメント)。ところが、それを演じる山本耕史は179センチ65キロとスラッとした体形。キャストが発表された折は「クマみが足りない」など不安視する声が多かったが、山本の演技力でねじ伏せた結果、冒頭のような絶賛になった次第。
シロさんと話すときは渋い低音で、ジルベールと話すときはとろっとろにとろけきった甲高い声で話すギャップにやられてしまった視聴者も多かったようだ。「あっ、あっ、かわいい」にはさすがに笑ってしまった。
それにしても原作では5巻(連載開始後4年経過していた)に登場した小日向さんを早々に3話で登場させたドラマ制作スタッフは、原作ファンの気持ちを完全につかんでいる。小日向さんが語るジルベールのエピソードを、ジルベール役の磯村勇斗ではなく本当に美少年(日米ハーフのアロハ・シェアード)に演じさせたのもわかってる感がすごい。
ちなみに『風と木の詩』は1981年に発表された「少年愛漫画の金字塔」とも言われる作品。美しく妖艶な主人公のジルベールに誠実なセルジュが献身的な愛を捧げる。航をジルベールと呼ぶ小日向さんは、自分を「誠実で献身的なセルジュ」に投影しているのだろう。一方、わりとドンピシャな世代にもかかわらず『風と木の詩』をまったく知らなかったシロさんは、クマ系でもなく耽美主義的でもないという意味で、この世代の同性愛者としては異端の部類に属するということになる。
いろいろな形の「家族」
小日向さん登場に目を奪われがちだが、“平成最後のホームドラマ”らしく、3話のメインテーマは「家族」だった。原作のエピソードを巧みにシャッフルしてテーマをしっかりと伝える脚本・安達奈緒子の手腕にうならされる。
シロさんと両親(梶芽衣子、志賀廣太郎)は、血はつながっているけど大事なことを話そうとするとピントが外れてしまう。同性愛者と犯罪者を同一に扱うのはひどい。シロさんでなくても、うんざりするだろう。
シロさんとケンジは毎日一緒にいて仲良しなのに、何でも話し合えるというわけではない。シロさんは実家の話をしたがらないし、父親にがんが見つかってケンジに真剣に心配されても笑顔ではぐらかす。
ここでシロさんの依頼人・今田聖子(佐藤仁美。今週の原作そっくりポイントはジルベールとこの人)が登場する。新しいママと一緒に遊園地で遊ぶ血のつながった息子を、遠くから見ることしかできない今田さん。新しい家族を目の当たりにした今田さんは号泣する。彼女は家族を失ったのだ。
もうひとり、家族の話をするのが美容室の店長・三宅(マキタスポーツ)。妻とは普段会話がなく、子どもの話と大事な話ぐらいしかいないとこぼす三宅に、ケンジは複雑な表情を浮かべる。「そりゃまぁ、一応、家族だし」と話す三宅を見て、ケンジは「普段そっけなくても、大事な話はしてくれるんでしょ? そっちのほうがいいじゃない」と呟く。
今田さんはシロさんと別れ際、感謝の言葉を告げる。「気持ちがしんどいときって、誰か一人でも親身になって話を聞いてくれる人がいると、安心するんですね」。
いろいろな形の人の集まりが次々と登場して、それは世間的に家族と言われるものだったり、そうでなかったりするのだが、究極的には「親身になって話を聞いてくれる人」がいて「安心」できるのが家族なのかもしれない。シロさんは今田さんの言葉を聞いて、ケンジに心を開く。こうして少しずつ家族は形作られていくのだろう。「きのう何食べた?」はふたりが長い時間をかけて家族になっていくお話なのだ。
1話名シーン
2話名シーン
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