うつ病の母の介護に限界が 公的支援サービスで“依存を分散させた”体験漫画が参考になる
いつか役立つときに備えて、読んでおきたい。
うつ病のお母さんを介護していたら自分にも限界が来て、危うく共倒れに――。そんなとき公的支援サービスを積極的に利用することでお母さんが回復していった、という体験漫画「鬱病(その他の精神疾患)の家族をもつ方へ」にTwitterで共感や関心が集まっています。作者は漫画家・イラストレーターの小日向まるこ(@MARU_CO_415)さんです。
小日向さんのお母さんは、シングルマザーとしてバリバリ仕事と家事をこなしていましたが、あるとき身体を壊して働けなくなってしまいます。責任感が強く家族を養ってきたことがアイデンティティだったお母さんは、働けなくなったショックもあり徐々に心身を病んでいってしまいます。
うつには個人差がありますが、お母さんの場合は判断力が低下したり感情が乏しくなったり、希死念慮がひどいときには自殺未遂に至ることもありました。小日向さんはそんなお母さんに寄り添い、1年半前までは家事、病院の付き添い、犬の散歩など週に1度の居宅支援のヘルパーさんに入ってもらう以外のことはほぼ全てこなしていました。心を病んだ人と1日中一緒にいるのはなかなかのストレスだった、と振り返ります。
ある日、お母さんに首を締めながら「殺してくれ」と懇願される事態が発生してしまいます。限界を感じて離れて暮らす実父と兄に相談したところ、自分と母は共依存状態に陥っていたことを認識。2人に背中を押されてお母さんと距離を置くことにします。
そこで活用してみたのが公的支援サービス。ホームヘルパーが料理や掃除をしてくれる居宅支援や、外出時の移動を支援してくれるガイドヘルパーなどに片っ端から申し込んだのです。3カ月ほどでお母さんは体調がよくなり、1年半後にはすっかり元気に。家事も一人でこなし旅行に行ったり、活き活きしているのだといいます。何よりうれしかったのは、もう見れないと思った笑顔が戻ってきたことだったと小日向さん。
サポートに来てくれていたヘルパーさんいわく「家族だけの介護は3カ月が限界」とのこと。小日向さんは自立とは1人で生きることではなく、習い事や趣味、友人、ヘルパーさんなど依存先を増やし分散させることだと述べています。そして、今、介護をしている方に向けて「どうか家族だけで抱え込まず、プロの、第三者の手を借りることを検討してみてください。」とアドバイスしています。
漫画の後半では公的支援サービスの受け方も紹介しています。うつ病の人はどれくらいの段階で利用を検討すべきか、どの窓口でどんな審査を受けることになるのか――小日向さんが体験と知見に基づいて詳しく説明しているので、1つ参考にするといいかもしれません。
※漫画で「精神健康福祉士」という職業名が登場しますがこちらは誤記で、正しくは「精神保健福祉士」です。また作者の母親が受けた区分認定は障害者総合支援法における「障害支援区分」の「区分4」で、漫画では「要介護1〜要介護5」と書かれていますが、正しくは「区分1〜区分5」になります。
介護は「家族のことだから」と周囲に迷惑を掛けずなんとか家族内で……と思いがちですが、介護する側が疲弊して共倒れになってしまっては元も子もないです。お互いに幸せになるために、早めに公的支援サービスを使う選択をする。そこに後ろめたいことは何もありません。誰しも介護者にも要介護者にもなり得るので、必要なときに素直に公的支援サービスを利用できるよう、小日向さんの体験談をより多くの人に知ってほしいです。
漫画の読者からは「家族だけの介護は3カ月が限界という言葉に昔を思い出し、救われた」「できる誰かに任せる方が良い結果に繋がることを体験談として知れた」「共依存から抜け出すのは大変なこと」など、同じく介護を経験した人はもちろん、誰にでも起こりうるので勉強になったという声も届いています。
小日向さんは小学館の青年漫画誌『ビッグコミック』で『アルティストは花を踏まない』を連載し、3月に単行本が発売されました。noteでもイラストなどを更新しています。
画像提供:小日向まるこ(@MARU_CO_415)さん
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