『地球の歩き方』を100冊読んで発見した、「最も詩的な一節」を発表する(1/5 ページ)

旅は人を詩人にする――。

» 2019年09月01日 12時00分 公開
[岡田悠ねとらぼ]


 旅行が好きだし、旅行ガイドが好きだ。なんなら旅行しなくてもガイドさえ読んでいればいい。見知らぬ土地のガイドを読みあさり、空想にふけるのは楽しい。

 旅行ガイドの目的はあくまでも現地の情報を正確に伝えることだけれど、僕が好きなのはガイドの中でもこういう表現だ。

密林の中に忽然と姿を表すアンコール・ワット。独自の世界観を持つ小宇宙がここにある。

『地球の歩き方 アンコール・ワットとカンボジア 2019〜2020』より



 小宇宙。詩的だ。アンコール・ワットがどこにあるかはGoogleMapを見ればわかるが、アンコール・ワットが小宇宙だという情報は載っていない。それも旅行記や小説ではない、ガイドブックにそう言う表現が載っていることが大事なのだ。

 あくまでも客観性が重視される「ガイド」という制約の中で、思わずにじみ出てしまった筆者の主観的な旅の記憶。そういうものに旅情がかき立てられるのである。

 特に『地球の歩き方』シリーズはその傾向が強いように思う。僕は昔から家にある古い地球の歩き方を読んでは、筆者の見た景色を想像するのが好きだった。


岡田悠

夜は旅行記やエッセイを書き、昼は会計ソフトを作ってる人。2019年、noteに投稿した「経済制裁下のイランに行ったら色々すごかった」と「近所の寿司屋のクーポンを記録し続けて3年が経った」により、一躍“イランと寿司の人”となる。好きな会計用語は旅費交通費。

Twitternote



『地球の歩き方』の“にじみ出てしまった”部分

とにかくモロッコという国は、あらゆる側面において強烈な個性を放っている。初めて訪れる人にとって、旅は驚きの連続になるだろう。

『地球の歩き方 モロッコ 2006〜2007』より



 地球の歩き方には、「扉絵」となるページが最初に挟まれていることがある。扉絵では鮮やかな写真が両面に広がり、その国を象徴するような美しい一節が並んでいる。上述の文章はモロッコ編の扉絵に載っていたもので、僕を初めてのバックパック旅行にいざなった忘れられない一節だ。

 残念ながら扉絵は近年減少傾向となり、モロッコ編においても扉絵は無くなってしまっている。その代わり現地のアクティビティやレストランなどがイラストで細かく解説されるなど、実用的な情報がより充実するようになった。ガイドとしてはまっとうな進化だと思うけど、どこか寂しい気もしてしまう。

 そこで地球の歩き方の名文を後世に伝えるべく、僕は詩的な一節を集めることにした。これまでに買った数十冊の地球の歩き方を改めて開き、また足りない分は休日に図書館にこもって読みふけった。全部で100冊くらい読んだと思う。(ちなみに地球の歩き方の中でも「GEM STONE」シリーズは写真集や読み物に近く、対象外とした。あくまでも実用的なガイドの中に潜む詩的な一節を発見したいからである)

 では、ここからはその名文をランキング形式で紹介していく。なおこれは僕の完全な主観と好みであり、この他にも多くの名文が存在することは言うまでもない。

 まずは第10位からだ。


第10位 モンゴル - ゴビ砂漠

山や谷、そして砂と礫のゴビ。
わずかに草が生えた大平原にも生息する動物はいる。
何より、ここにも人の暮らしが存在する。

『地球の歩き方 モンゴル 2017〜2018』より



 モンゴルに広がるゴビ砂漠を表現した、扉絵の文章。最後の一文が良い。広い砂漠にゲルがポツンとたたずんでいる情景が浮かんでくる。そして「礫」という漢字が難しくて読めない。それがこの文章の格式を上げていてまた良い。


第9位 アイルランド

ウシュケ・バハ(命の水)。緑の島を潤す良質な水から生まれるウイスキーは、長い間こう呼ばれてきた。

『地球の歩き方 アイルランド 2019〜2020』より



 「ウシュケ・バハ」が格好良すぎるのでそれだけで思わずランクイン。倒置法の文章にすることで、その格好良さが際立っている。僕もダンルース城を眺めながらウシュケ・バハをグラスに注ぎたい。

       1|2|3|4|5 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2403/17/news022.jpg 【追記あり】夫に「油買ってきて」と頼んだのに、手ぶらで帰宅した理由はまさかの…… とんでもないオチに「やめてww」「久しぶりに大爆笑」
  2. /nl/articles/2403/18/news022.jpg 1歳息子の“はじめての寝落ち”が140万再生 10歳兄のやさしい行動に「なにこの平和でかわいい世界」「最高に癒やされる」と絶賛の声
  3. /nl/articles/2403/17/news063.jpg 「予言者いた」「先見の明」 大谷翔平選手&真美子さんの結婚を2021年時点で予言(?)している投稿が発掘され話題に
  4. /nl/articles/2403/17/news047.jpg 北海道内の移動距離を本州と比較したら…… 感覚がバグるマップ画像に「これが北海道」「大きすぎる」
  5. /nl/articles/2403/18/news042.jpg 生後1カ月の赤ちゃん「ぼく泣かないもんねっ」 うるうるおめめとへの字口が「はぁ〜たまらん!」「ぐぁぁああああっっ」取り乱すほどかわいい
  6. /nl/articles/2403/15/news126.jpg 「一番イチャイチャしているように見える」 大谷選手が公開した写真でドジャース山本由伸選手の“手つなぎ”?が話題に 「そっちに目が行く」
  7. /nl/articles/2312/29/news019.jpg 「妻の服を勝手に着て脱げなくなったムキムキ夫とデカワンコ」に爆笑の嵐 シュールすぎる状況が500万表示突破
  8. /nl/articles/2403/18/news025.jpg “おしりが5日で変わる”トレーニング! 「明日からやるか」「1日1回だけなら続けられる」と累計3000万再生突破
  9. /nl/articles/2403/18/news056.jpg 大好きなボールを100個プレゼントされたときのワンコの表情に「放心ww」「引いてない?」 直視できない姿がSNSで話題
  10. /nl/articles/2403/18/news064.jpg 赤ちゃんが妙に静かだと思ったら…… 思わぬものへの“真剣モード”に笑顔になる人続出「たれたもちもちほっぺたまらん!」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  2. 昭和時代に“無かった物”が写っている……? 細かすぎて伝わらない「未来から来たことがバレた写真」に6万いいね
  3. 「マジで汚い」「こんなもんです」 辻希美、“大散乱”のリビングと“新”キッチンの差を公開し共感の声集まる
  4. 双子の赤ちゃん、姉が全力でくしゃみして…… 被害にあった妹の反応に「生後3ヶ月でドリフのコントw」「めちゃどっちもカワイイ」と絶賛の声
  5. 「よくも病院に連れてきたな……」とにらむ猫、先生が来た瞬間 驚きの変貌に爆笑の声「これがほんとの猫かぶり」
  6. 急に片耳がたれたワンコ、慌てて病院にいった結果…… 「こんな可愛い診断結果初めて見たよw」「笑っちゃった」と反響
  7. 「何羽いる?」一見普通の“草むら”、よく見ると……? 思わず絶叫まちがいなしの1枚に「どっさりいるw」「まさに迷彩!」
  8. 店員に「この子は懐きませんよ」と言われたチンチラ、家に来て3日後…… 人を信じる姿に「愛が伝わったんですね」
  9. 元SDN48光上せあら、目を離した隙に……子どもが商品を触り“全買取” 「子連れママに厳しすぎないか?」
  10. 柴犬を子どものように育てた結果、人間みたいな行動をするようになった 何気ない幸せな日常に「完全に家族の一員」「全部が愛くるしい」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 釣れたキジハタを1年飼ってみると…… 飼い主も驚きの姿に「もはや、魚じゃない」「もう家族やね」と反響
  2. パーカーをガバッとまくり上げて…… 女性インフルエンサー、台湾でボディーライン晒す 上半身露出で物議 「羞恥心どこに置いてきたん?」
  3. “TikTokはエロの宝庫だ” 女性インフルエンサー、水着姿晒した雑誌表紙に苦言 「なんですか? これ?」
  4. 1歳妹を溺愛する18歳兄、しかし妹のひと言に表情が一変「ちがうなぁ!?」 ママも笑っちゃうオチに「かわいいし天才笑」「何度も見ちゃう」
  5. 8歳兄が0歳赤ちゃんを寝かしつけ→2年後の現在は…… 尊く涙が出そうな光景に「可愛すぎる兄妹」「本当に優しい」
  6. 1人遊びに夢中な0歳赤ちゃん、ママの視線に気付いた瞬間…… 100点満点のリアクションにキュン「かわいすぎて鼻血出そう!」
  7. 67歳マダムの「ユニクロ・緑のヒートテック重ね着術」に「色の合わせ方が神すぎる」と称賛 センス抜群の着こなしが参考になる
  8. “双子モデル”りんか&あんな、成長した姿に驚きの声 近影に「こんなにおっきくなって」「ちょっと見ないうちに」
  9. 犬が同じ場所で2年間、トイレをし続けた結果…… 笑っちゃうほど様変わりした光景が379万表示「そこだけボッ!ってw」
  10. 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」