『地球の歩き方』を100冊読んで発見した、「最も詩的な一節」を発表する(3/5 ページ)
第5位 リビア
リビアにははかなく散った人類の歴史が凝縮されている。
『地球の歩き方 リビア 2010〜2011』より
地中海に面したアフリカの国、リビア。かつてはアフリカ有数の治安の良さで知られていたが、内戦以降急激に不安定化し、現在は渡航禁止となっている。今回の歩き方の中でも最も年代が古いのはそのためだ。先史時代の岩画群や旧都ガダメス、そして内戦で変わってしまった国の姿をも暗示しているかのような一節である。
第4位 アメリカ
夜明け前にアクセルオン。雲の白。森の緑。湖の青。
立ち寄ったガソリンスタンドで味わうコーヒーの深い香り。
時速75マイルで駆ければ、灰色の町が後ろへ吹っ飛び風だけが追いかけてくる。
『地球の歩き方 アメリカ・ドライブ 2017〜2018』より
これまでバックパッカーが好みそうな国ばかりが並んできたが、ここで世界の大国がランクイン。アメリカは都市別、国立公園特集などを含めると10冊以上のタイトルがあるが、これは「アメリカを車で走る」という観点に特化した一冊である。色畦やかな表現が並ぶ中で、「灰色の町が後ろへ吹っ飛び」が特に好きだ。僕も真っ赤なオープンカーで灰色の町を吹っ飛ばしたい。免許は持ってない。
さて、いよいよベスト3だ。
第3位 アラスカ
ラスト・フロンティア(最後の辺境)で私たちが出会うもの。
それは――
夜空を音もなく舞う宇宙の光。
ツンドラの大地に君臨する野生の王者。
長い間受け継がれてきたネイティブの文化。
圧倒的なスケールの大自然。
そして、荒野で出会うあたたかな人々。
そのすべてが、アラスカを忘れられない場所にする。
『地球の歩き方 アラスカ 2019〜2020』より
なんだこれは。レベルが急に上がってついていけない。「ラスト・フロンティア」というタイトルで始まるこの扉絵は、アラスカの雄大な写真と共にこの一節が記されている。アラスカといえばオーロラだが、この文章ではあえてオーロラという単語は使われていない。オーロラではなく「夜空を音もなく舞う宇宙の光」。なんて詩的なんだ……。文句なしの3位である。
第2位 ウズベキスタン - サマルカンド
“サマルカンド”という言葉の響きに魅了される人も、多いのではないだろうか。心の底に焼きついた町の名の記憶が、知らずに呼び覚まされるのだろう。
ぬけるような青空に、さらに深い色合いの青のドームが映える。天と地が、青の青さを競い合う。
『地球の歩き方 中央アジア サマルカンドとシルクロードの国々 2013〜2014』より
天と地が、青の青さを競い合う。この一文を読んだだけで、僕はかつてサマルカンドへと飛んだ。広場のドームは本当に青さを競い合っているようで、サマルカンドの広い空にすっと高く伸びていた。そういう意味では個人的には最も印象が深い一節である。
この中央アジア編は扉絵がないのにも関わらず、全体的に情緒あふれる文章に満ちている。今回掲載した文はサマルカンドのページの冒頭文だが、他にもブハラやヒヴァなど、さまざまな都市が美しく描写されている。僕はこの中央アジア編が普通に読み物として好きすぎて、なぜか3冊持っている。しかし残念なことに、2015〜2016版からは「天と地が、青の青さを競い合う」の一文がなくなってしまっている。ファンとしては是非とも復活を希望したい。
さて、いよいよ最後になった。宇宙規模のスケールを誇るアラスカ編、情緒の洪水が起きる中央アジア編を抑え、1位に輝いたのはどこの国か?
地球の歩き方で最も詩的な一節は何か?
それは……
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