『地球の歩き方』を100冊読んで発見した、「最も詩的な一節」を発表する(4/5 ページ)

» 2019年09月01日 12時00分 公開
[岡田悠ねとらぼ]

第1位 インド

インド。それは人間の森。
木に触れないで森を抜けることができないように、
人に出会わずにインドを旅することはできない。

インドは「神々と信仰の国」だという。
また、「喧騒と貧困の国」だともいう。
だが、そこが天国だとすれば、僕たちのいるここは地獄なのだろうか。
そこを地獄と呼ぶならば、ここが天国なのだろうか?
インドを旅するキミが見るのは、天国だろうか地獄だろうか?

さあ、いま旅立ちの時。
インドはキミに呼びかけている。
「さあ、いらっしゃい!
私は実はあなたなのだ。」

『地球の歩き方 インド 2018〜2019』より



 はい優勝!!!!!

 バックパッカーの聖地とも呼ばれる国、インド。ある意味定番すぎるので1位にするか迷ったが、やはりどう考えても圧倒的である。圧倒的すぎて最後にはインドが喋り始めた。「私は実はあなたなのだ」って。震えた。ガイドに書くことじゃない。最高である。

 先にも触れたように地球の歩き方は近年詩的な文章が減っているように思えるが、インド編だけは変わらない。「キミ」という二人称も、昔の歩き方の独特の文体を受け継いでいる。

 ガンジス川の沐浴で有名な街、バラナシの説明はこうだ。

列車に乗って行こうと、バスだろうと、自前の足で歩いて行こうと、おびただしい人々と、その間を運ばれてゆく死者たちに迎えられて、旅人はこの世界の底にある町に入り、永遠なるガンガーに全身を浸すことになる。

『地球の歩き方 インド 2018〜2019』より



 一体何人の若者たちがこれを読み、バックパックを背負って聖地へと出かけたことだろう。

 『「地球の歩き方」の歩き方』という地球の歩き方の創刊ストーリーが語られた本がある。それによるとインド編はヨーロッパ編、アメリカ編に次ぐ第3の地球の歩き方だったが、実際の旅人がその土地を解説する、というスタイルを確立した一冊だったという。地球の歩き方が今日あるのはインド編のおかげだとも述べられており、まさに歩き方の原点がこのインド編なのだ。そういう意味でもやはり1位にふさわしいと思う。

 ランキングは以上である。繰り返すがこれはあくまで僕の好みなので、他にもお勧めの一節があれば、ぜひ教えて欲しい。

 地球の歩き方は多様化する読者層や旅行ニーズの板挟みになり、大きな批判にさらされた時代もあるという。そういう背景もあって、近年は「バックパッカーのバイブル」から、「誰にでも役立つ便利なガイド」へとスタイルを変化させてきた。

 確かに「旅に出た時に便利」なのは旅行ガイドの役割だけど、それでも「旅に出たくなる」というのもまたガイドブックの魅力だと思う。というかもうこれ書いてたらすぐにでも旅に出かけたくなったので、とりあえずデリー行きの航空券を買おう。そう思えるような一冊が、これからも残り続けるといいなと思う。

『地球の歩き方』創刊メンバーの1人、安松清は言う。

「旅行業界が価格競争に明け暮れて、旅心をくすぐると言う、旅の出発点を置き去りにしてきたように思います。人は、たとえ値段が高くたって、行きたければ行きます。困難でも、行きたいものは行く。旅の魅力を自らの言葉で語り、それを伝えることを続けなければ、海外旅行もガイドブックも、先へは進めない。」

『「地球の歩き方」の歩き方』より




(了)


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/21/news189.jpg 「大物すぎ」「うそだろ」 活動中だった“美少女新人VTuber”の「衝撃的な正体」が判明 「想像の斜め上を行く正体」
  2. /nl/articles/2411/22/news014.jpg 川で拾った普通の石ころ→磨いたら……? まさかの“正体”にびっくり「間違いなく価値がある」「別の惑星を見ているよう」【米】
  3. /nl/articles/2411/22/news114.jpg 中村雅俊と五十嵐淳子の三女・里砂、2年間乗る“ピッカピカな愛車”との2ショを初公開 2023年には小型船舶免許1級を取得
  4. /nl/articles/2411/21/news027.jpg 大きくなったらかっこいいシェパードになると思っていたら…… 予想を上回るビフォーアフターに大反響!→さらに1年半後の今は? 飼い主に聞いた
  5. /nl/articles/2411/22/news032.jpg 「壊れてんじゃね?」 ハードオフで買った110円のジャンク品→家で試したら…… “まさかの結果”に思わず仰天
  6. /nl/articles/2411/22/news018.jpg 猫だと思って保護→2年後…… すっかり“別の生き物”に成長した元ボス猫に「フォルムが本当に可愛い」「抱きしめたい」
  7. /nl/articles/2411/22/news171.jpg なんと「身長差152センチ」 “世界一背が低い”30歳俳優&“世界一背が高い”27歳女性が奇跡の初対面<海外>
  8. /nl/articles/2411/22/news145.jpg 大谷翔平と真美子さん、「まさかの服装」に注目 愛犬デコピンも大谷家全員で“歩く広告塔”ぶり発揮か
  9. /nl/articles/2411/20/news027.jpg 「こんなことが出来るのか」ハードオフの中古電子辞書Linux化 → “阿部寛のホームページ”にアクセス その表示速度は……「電子辞書にLinuxはロマンある」
  10. /nl/articles/2411/22/news184.jpg 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた