便利だがリスクもある“ググれば辞書が無料で引ける時代” 『大辞林』編集長インタビュー(2/3 ページ)

» 2019年11月19日 20時00分 公開
[ねとらぼ]

“ネットで辞書が無料で引ける”ことの問題点



――― ねとらぼ読者から質問を募集したところ、「『コトバンク』『Weblio辞書』の『大辞林』が第4版にアップデートされる予定は?」というものが。これらのサイトでは無料利用できるようになっていますね

編集長:第4版へのアップデートは未定です。辞書を使ってもらえるのはとてもありがたいことなのですが、基本的に“増補部分は有料で利用していただく”という方針になっています。

ながさわ:第3版、第4版が併存する形になりませんか?

編集長:そこは私も悩ましいところなんですが……“辞書は無料提供していいものなのか”という問題があって。

――― ゲーム、マンガなどでも現れている、コンテンツを無料配信するビジネスモデルの問題ですね。辞書の場合は「書籍版だけ → 複数の辞書が使える電子辞書の登場 → ネットでの無料利用が可能に」と変化してきました

編集長:さまざまな媒体で利用できるのはユーザーにとって良いことだと思いますし、『大辞林』は第3版のころからそういった取り組みを続けています。でも、それによって辞書を提供する側が苦しくなってしまうと、かえってユーザーにとって悪いことになるかもしれないという懸念もあります。

 現状までは分かりませんが、数年前にこんな話を聞いたことがあります。韓国では国の機関が辞書を制作し、無料提供が行われた結果、出版社は辞書づくりをやめてしまったそうです。しかし、国の辞書がその後十分にメンテナンスされるわけでもなく、辞書が厳しい状況に陥ってしまった、と。

ながさわ:原因は違いますが、それも“辞書の無料化”に伴う変化ですね。

編集長:日本でも無料で使えるものが幅を利かせると収益が上がらなくなり、出版社が辞書が作れなくなってしまうかもしれません。もちろん、われわれもそうならないように頑張ってはいるんですけど。

――― もしも辞書作りで利益が出ない時代がやってきたら、どうなるのでしょうか

編集長:可能性としてはいろいろ考えられると思います。例えば、「Wikipediaのように、ボランティアが制作するようになる」とか。情報が正確ではないのではないかという批判もありますけど、多くの人々の情報源になっていることは間違いありません。

 ただ、辞書を作るためには統制された編集方針、それに沿って作り上げる体制が必要で、ボランティアにそこまでの責任を求めるのは難しいのでは、と思うところもあります。品質を保つには、お金を払う利用者とのある種の緊張関係がないといけないんじゃないか、と。

 あとは「発達した人工知能が、勝手に辞書を作ってくれる未来」なんてのも想像できますが。

――― 人工知能の話題は「いつか実現するかもしれないけど、具体的にいつかが見えにくい」という側面がありますからね

編集長:今の段階で、私が言えることは1つだけ。「紙でも電子でも、なるべくお金を出して辞書を使ってもらって、それに応える辞書づくりができるようにしたい」ということです。

(続く)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. /nl/articles/2412/14/news019.jpg ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. /nl/articles/2412/15/news011.jpg 「懐かしい」 ハードオフで“30年前のPC”を購入→Windows 95をインストールしたら“驚きの結果”に!
  4. /nl/articles/2412/16/news107.jpg 「靴下屋」運営のタビオ、SNSアカウント炎上を受け「不適切投稿に関するお詫び」発表 「破れないストッキング」についてのやりとりが発端
  5. /nl/articles/2412/15/news035.jpg 餓死寸前でうなり声を上げていた野犬を保護→“6年後の姿”が大きな話題に! さらに2年後の現在を飼い主に聞いた
  6. /nl/articles/2412/15/news002.jpg 毛糸でフリルをたくさん編んでいくと…… ため息がもれるほどかわいい“まるで天使”なアイテムに「一目惚れしてしまいました」「うちの子に作りたい!」
  7. /nl/articles/2412/10/news133.jpg 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  8. /nl/articles/2312/15/news032.jpg 放置された池でレアな魚を狙っていた親子に、想定外の事態 目にしたショッキングな光景に悲しむ声が続々
  9. /nl/articles/2412/15/news028.jpg 脱北した女性たちが初めて“日本のお寿司”を食べたら…… 胸がつまる現実に考えさせられる 「泣いてしまった」「心打たれました」
  10. /nl/articles/2412/16/news023.jpg 父「若いころはモテた」→息子は半信半疑だったが…… 当時の“間違いなく大人気の姿”に40万いいね「いい年の取り方」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  2. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  3. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  4. 高校生のときに付き合い始めた2人→10年後…… 現在の姿に「めっちゃキュンってした」「まるで映画の世界」と1000万表示突破
  5. 大谷翔平の妻・真美子さん、ZARA「8000円ニット」を着用? 「似合ってる」「シンプルで華やか」
  6. 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」 投稿者に感想を聞いた
  7. 高校生時代に父と撮った写真を、29年後に再現したら……再生数1000万回超えの反響 さらに2年後の現在は、投稿者に話を聞いた
  8. 散歩中、急にテンションが下がった柴犬→足元を見てみると…… 「そんなことあります?」まさかの原因が860万表示「かわいそうだけどかわいい」
  9. コメダのテイクアウトで油断して“すさまじい量”になってしまった写真があるある 受け取ったその後はどうなったのか聞いた
  10. 「やめてくれ」 会社で使った“伝言メモ”にクレーム→“思わず二度見”の実物が200万表示 「頭に入ってこない」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」