「同期のサクラ」最終回目前とは思えぬほどの鬱展開 最終回は「変わってしまったサクラと変化を許さない同期」の物語になる?(1/2 ページ)
「サクラらしい」を望む同期4人がプレゼントした丸眼鏡の意味が怖い。
12月11日に「同期のサクラ」(日本テレビ系)の第9話が放送された。最終回目前とは思えぬほどの鬱展開であったが、さらに一波乱二波乱ありそうな予感がする。
同期の決断は「サクラが何を言ってくれるか?」が基準
9カ月の眠りから覚めた北野サクラ(高畑充希)は、花村建設から解雇されたことを知らされる。退院し、リハビリに励むサクラに同期4人は近況報告をした。
「会社辞めて起業しようかなって迷ってて」(百合)
「(百合に)結婚しようって言ったんだけど、あっさり断られちゃってさ。まあ、あいつには俺が必要ないってことなのかな?」(葵)
「ボランティア活動しているNPO法人のみんなに代表になってくれって言われちゃって」(菊夫)
「突然、営業部に行けって言われて。設計ができないなら、思い切って新しい就職先探そうと思うんだけど」(蓮太郎)
みんな、すっかり前に進んでいる。長い眠りから目覚めたサクラは、周りに置いていかれたことを思い知った。っていうか、目覚めたばかりのサクラに相談ばかりしないで……。
サクラは就活を始めた。しかし、結果は連戦連敗。受ける会社は段々と小さくなっていき、最後は貯金が底をついてコンビニでアルバイトを始めることに。いや、それってサクラに1番向いていない仕事では……。
9話で最もエグかったのは、“鍋パーティドタキャン事件”だ。リハビリ、アルバイト、就活という多忙な日々の中、サクラは仲間の悩みの解決策をノートにまとめ、さらに暗唱した。決して料理は得意じゃないサクラなのに、お鍋もバッチリできあがっている。準備は万端! だが、4人それぞれに別件が入ってしまい、当日、全員からドタキャンの返事が来た。
しかも、同期たちの導き出した答えは、サクラの用意した解決策と全く同じだった。4人の結論は「サクラが何て言ってくれるか」が基準になっているということ。つまり、今までサクラがみんなの心に撒いた種は着実に実を結んでいたのだ。
でも、当のサクラはそれに気付かない。「自分がいなくても困難を乗り越えられるほど、みんなは成長したんだ」。就活は結果が出ず、アルバイトでは失敗続き。足踏みをしている自分を4人と比較し、彼女は寂しさにさいなまれた。そして、サクラは帰郷を決意する。
「私は今回のことで、自分がいかに何もできない人間か思い知らされました」(サクラ)
落ち込むサクラを4人は着工中の幼稚園へ連れて行った。これは、新人研修でサクラが「未来へ残すべき」と絶賛した建築物だ。
「これ設計した奴が言ってた。あのとき、お前が褒めてくれて、これを建てるのが夢になったから10年かけて着工に漕ぎ着けることができたって」(蓮太郎)
他者の心に種をまき、それが実を結んだと、サクラはわかりやすい形で初めて実感する。自分がやってきたことの意味を自覚することができた。そして、サクラに新しい夢が生まれた。
「私には夢があります。故郷にかけたかった橋に負けないような橋を、これから出会う人たちの心にかけることです」(サクラ)
成長した同期に昔のままを望まれるサクラ
上記までのストーリーが最終回ならば、このドラマは多くの人に歓迎される形で終わっていたことだろう。「同期のサクラ」は、果たしてハッピーエンドのドラマなのだろうか?
同期4人はサクラがかけていた壊れた眼鏡と同じ型を見つけ、プレゼントした。
「それしてるほうが、サクラらしいからさ」(百合)
そんことない。高校時代にかけていたメガネは、今のサクラにメチャメチャ似合っていた。
人間は弱ることだってあるし、変わることもある。なのに、4人は“理想のサクラ”を頑なに求め続ける。自分たちは変化しているのに、サクラの変化は良しとしない。なぜ、そこまで自分たちの思う「サクラらしい」に押し込もうとするのか?
同期4人は、サクラに感化されることで成長してきた。そのよりどころであるサクラが変わってしまうと、自らの道程が脆弱になり、道しるべをなくすことになる。だから、サクラが変わらずにいることを望み、トレードマークだった丸眼鏡をプレゼントした。
「俺たちのここ(胸)にも、まだまだ完成途中だけど、お前が築いたものがあるんだよ! それなのに、それを造ったお前がほっといて逃げるつもりかよ? それじゃ、ここまで造ったものを建設中止にするようなもんじゃないのか?」(菊夫)
「人にできないような建物を造る素晴らしい才能があるのに、それを捨ててどうすんだよ? 北野サクラは世界で1人しかいないんだから!」(葵)
「自分は何もできないとか言ってたけど、サクラは人を幸せにする建物を造ることにしか興味がないから強いの。他に何もできないからすごい能力を発揮するの!」(百合)
極端なことを言うと、叱咤激励と言うよりサクラへの洗脳にさえ見えてしまったのだ。支えているのではなく、4人は絶えず求めている。
急転直下で花村建設への復帰が決まったサクラ。今夜放送の第10話は最終回だ。次回予告に、こう書いてある。
「新規事業と育児に追い詰められている百合の話に耳を貸さず仕事に戻ってしまったり、NPO団体の代表となり悩みを抱える菊夫からネット電話を受けても、皆忙しいという理由で聞き流してしまう。さらに、就活中の蓮太郎からの悩み相談よりも黒川からの着信を優先するサクラ……これまで、忖度しない言動の度に、組織との軋轢(あつれき)を生んでいたサクラは、初めて仕事で高揚感を感じる。そんなサクラに、同期たちは、『あなたは、変わった。仲間なんてもう必要ないの?』と苦言を呈される」
やはり、変わってしまったサクラと変化を許さない同期という図式だ。成長した同期と、昔のままを望まれるサクラ。両者の対立構造は、このドラマが伝える何かしらのメッセージとして昇華するのだろうか?(というか、同期の連絡を聞き流すサクラを責める前に、4人がサクラの鍋パーティをドタキャンしているのに!)
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