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» 2019年12月27日 19時50分 公開

水平思考(ねとらぼ出張版):「SEKIRO」のGOTY受賞から考える、なぜ今日本のゲームが世界のゲームアワードを席巻しているのか (1/2)

日本のゲームは世界のゲームシーンに「追い付いた」のか?

[hamatsu,ねとらぼ]

 ブログ「色々水平思考」の管理人、hamatsuさんによる不定期コラム第5回(連載一覧)。今回は先日の「The Game Award」で見事ゲーム・オブ・ザ・イヤーに輝いたSEKIRO: SHADOWS DIE TWICEについて。「SEKIRO」を含め、GOTY候補にノミネートされた6作品のうち4作品を日本産ゲームが占めた2019年の「The Game Award」。これは日本のゲームが世界にようやく「追いついた」ということなのか……?


SEKIRO SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE(パッケージ画像はPS4版のもの)

ライター:hamatsu

hamatsu プロフィール

某ゲーム会社勤務のゲーム開発者。ブログ「枯れた知識の水平思考」「色々水平思考」の執筆者。 ゲームというメディアにしかなしえない「面白さ」について日々考えてます。

Twitter:@hamatsu



日本のタイトルが席巻したThe Game Awards

 アメリカ・ロサンゼルスの現地時間で12月12日(木)に行われたアワードイベントThe Game Awards(以下「TGA」)において、SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE(以下「SEKIRO」)が、大賞にあたる、「ゲーム・オブ・ザ・イヤー」(以下GOTY)を受賞した。

 今年(2019年)の「TGA」は日本のゲームの存在感が強く感じられる年だった。なにせGOTYにノミネートされた6タイトルの内の4タイトルを日本のタイトルが占め、結果受賞したのが日本のゲーム開発会社であるフロム・ソフトウェアによって作られた和風アクション「SEKIRO」だったのだから、これはもう日本のタイトルが「TGA」を席巻したと言っても過言ではないだろう。



SEKIRO トロフィーを受け取る、フロム・ソフトウェアの宮崎英高さん(配信より

 では見事GOTYを受賞した「SEKIRO」とはどのようなゲームだったのだろうか。

 「SEKIRO」は今年発売された続編ではない新規タイトルだが、このタイトルを突如として現れた新進気鋭の存在と捉えるゲームファンは少ないだろう。多くのユーザーは「SEKIRO」を2009年に「デモンズソウル」や「ダークソウル」の延長線上にある、いわゆる「ソウルライク」ゲームの最新作として捉えたのではないだろうか。


「ソウルライク」という名のアクションゲーム文法の再構築

 しばしば「死にゲー」という呼び方をされる、いわゆる「ソウルライク」ゲームを自分なりの言葉で説明するならば、ゲーム中の死に対して「説得力」があるゲームということになる。

 これはどういうことかと言えば、「ダークソウル」や「SEKIRO」をプレイしていると、まるで当たり前のことのように何度も何度も死んでしまう。だが、そうなった要因は、敵が大振りな明らかに強そうな攻撃を繰り出そうとしているにもかかわらず、回避行動を取らなかったり、一対一なら余裕で倒せる雑魚敵だと侮っていたらいつの間にか複数人を相手して挟み撃ちにあったりと、己が死ぬなりの理由がプレイヤーに容赦なく突き付けられてしまうので、死んだこと自体はストレスだとしても、少なくとも死んだ理由に対しては納得ができてしまうということである。


SEKIRO 数え切れないほど見ることになる「死」の文字(関連記事

 この間違ったプレイに対して当然の報いとして死を与え、正しいプレイに対して勝利とこれ以上ない達成感を与えるという、ゲームプレイに対しての徹底して「フェア」な思想こそが「ソウルライク」の根幹を成すものだと筆者は考える。要するに極めてゲームの基本に忠実なゲームだということだ。

 単に難しいゲームだからというだけではなく、一つの攻撃、一つの移動をとっても濃厚なゲーム中における機能と意味を持っているからこそ、「デモンズソウル」や「ダークソウル」は世界的に高い評価を獲得し、「ソウルライク」という一種のゲームジャンルというよりも既存の文法を再構築した新しいアクションゲーム文法を生み出すに至ったのではないだろうか。

 そしてここからが重要なのだが、「ソウルライク」文法はその本家本元たるフロム・ソフトウェア以外の多くのゲーム会社にも波及し、多くのタイトルがリリースされるようになる。コーエーテクモが2017年にリリースした「仁王」や今年エレクトロニック・アーツからリリースされた「Star Wars ジェダイ:フォールン・オーダー」などは他社よリリースされた「ソウルライク」の代表といえるだろう。そして2018年の「The Game Awards」にてGOTYを獲得した「God of War」の戦闘部分などにもかなり濃厚に「ソウルライク」文法が感じられる。

 この現象は単なる模倣作、悪く言ってしまえばパクリが大量に発生するという荒廃した状況に陥るのではなく、明確に先行作の影響を受けてはいるものの、それぞれにまた別の独自性や魅力を持った作品がリリースされるという、ゲームユーザーにとっては幸福な状況を作り出したと筆者は考えている。それは90年代において「ストリートファイター2」が大ヒットしたことで多くの模倣作が生まれたものの、それらが単なるパクリに陥らない充実した作品になることで結果的に格闘ゲームシーンが大いに盛り上がった状況にも近いものだ。

 2009年に「デモンズソウル」、2011年に「ダークソウル」がリリースされ、その後10年かけて「ソウルライク」文法は世界に波及した。2019年において「SEKIRO」が、「GOTY」を獲得した背景には、このような「ソウルライク」文法の波及とその最新形に対する世界のゲームシーンからの期待があったからだと筆者は考える。


SEKIROSEKIRO 「デモンズソウル」(左)と、「ダークソウルIII」(右)

 そして「SEKIRO」はその周囲の期待によって上がったハードルを正面から飛び越えていく、すばらしい「ソウルライク」タイトルとしてユーザーの前に姿を現した。それも「デモンズソウル」で採用され、「DEATH STRANDING」でも取り入れているユーザーと緩いつながりを構築する非同期ネットワーク要素をバッサリ削除し、よりアクションに全振りした日本刀のように研ぎ澄まされたソリッドな形となってである。

 そのように考えて見れば「SEKIRO」の受賞は「ソウルライク」文法の構築とさらなる更新を達成したフロム・ソフトウェアという会社に対して贈られる、極めて妥当かつ必然的な評価だったのではないだろうか。


日本のゲームは世界のゲームシーンに「追い付いた」のだろうか?

 ここからはちょっと長めの余談になる。せっかくなので2010年代最後の年である2019年の「GOTY」を踏まえて今後のことを考えてみよう。

 80年代から90年代にかけて、世界のゲームシーンをリードしてきた日本のゲーム会社は、2000年代以降苦戦を強いられるようになる。それを尻目に欧米のゲーム開発会社が台頭し、「TGA」においてもノミネートの時点で大半のタイトルが欧米圏で開発されたタイトルにほぼ独占されるような状態が続いていた。

 その状況に近年変化が起きている。2017年の「TGA」でGOTYを獲得したのは「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」だった。さらに、GOTYこそ獲得しなかったものの、ノミネート作品として「ペルソナ5」「スーパーマリオ オデッセイ」が選ばれた。


SEKIRO ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド

 「ゼルダの伝説」や「スーパーマリオ オデッセイ」と言った任天堂のタイトルは2000年代以降も世界的に高い評価を受けており、ノミネートされることやGOTYを獲得することに大きな驚きはないかもしれない(それでも2017年のBotWの賞レースの席巻ぶりは驚嘆に値するが)。だが欧米圏においては一昔前のスタイルとして一種の蔑称にもなっていたJRPGというジャンルを正当進化させた「ペルソナ」シリーズが「ペルソナ3」以降、着実に欧米圏でも高い評価を獲得し続け、「ペルソナ5」においてGOTYのノミネートにまで名を連ねるようになったことには時代の変化が感じられる。

 2018年には「モンスターハンター:ワールド」がGOTYこそ逃したものの世界で1000万本超のセールスを記録し、これまでの国内中心の受容とは明らかに違う欧米圏での受容と高い評価の獲得に成功している。そして冒頭でも述べたように2019年においてはノミネート6タイトル中4タイトルが国産タイトルという、日本のゲームシーンの復権とも言ってしまえそうな状況が発生している。


SEKIRO ゲーム・オブ・ザ・イヤー候補にノミネートされた6作品(公式サイトより)

 なぜ2010年代も後半になってこのような事態が起きているのだろうか? 2000年代半ばには世界から取り残されたとも言われた日本のゲームシーンは世界のゲームシーンに「追い付いた」のだろうか?

 筆者はそのようには考えない。2010年代後半になってにわかに世界の賞レースを席巻し始めた日本のゲームはいずれも「追い付いた」というよりも、自身の持ち味を「アップデートした」と言った方がふさわしいのではないだろうか。

 「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」「ペルソナ5」「モンスターハンター:ワールド」「DEATH STRANDING」「バイオハザード RE:2」「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」、そして「SEKIRO」。これらの世界的に高い評価を獲得したタイトルは、海外のゲームシーンなどからもさまざまな影響は受けつつも、それぞれの持ち味は失わず、むしろそれをより強く「アップデート」することに成功したタイトル群だと考える。だからこそ、海外の強豪AAAタイトルにも負けない「個性」を獲得できたのではないかと。

 2019年の「TGA」における日本のタイトルの席巻という事態は、日本のゲームシーンの復活であり日本のゲーム開発力SUGEEEE! というよりは、ある地域や特定のシーンで形成された先鋭的かつユニークなローカル性がグローバル性を獲得していくという、ここ数年のゲームシーンの至るところで起きてきた事態の一例なのではないかと考えている。

 例えば誰も注目していなかったパキスタン出身の鉄拳プレイヤー、アルスラン・アッシュ選手が圧倒的な実力で大会を制覇し、さらにパキスタンには自分と同等以上に強いプレイヤーがまだまだいると発言してシーンに衝撃を与えたり、「MOTHER」と「東方Project」の両方に深く影響を受けた作者によって「Undertale」という作品が作られ、それが世界的に高い評価を受けたりという、極めて局所的な、ローカルな世界で始まったことがグローバルな世界にある種の衝撃を伴いつつ受け止められていくという事態は既にここ数年の間に至る所で起きていることだ。


SEKIRO Undertale(Switch版販売ページより)

 個人的にはゲームシーンが最も面白いのはある種のローカル性とグローバル性の両輪がうまくかみ合って回りだすときだと考えている。今やゲームにとどまらないグローバルコンテンツの代表になりつつある「ポケットモンスター」が、その始まりにおいて田尻智というクリエイターが幼少時に体験したことが濃厚に反映された、極めてローカル性の高いゲームであったという事実はあらためてとても重要なことだと思う。

 先鋭的なローカル性がふとしたきっかけでグローバル性を獲得するという現象は今後も世界中のさまざまな地域でさまざまな形で起きていくのではないかと考える。その意味において2019年の「TGA」で「SEKIRO」がGOTYを獲得したということは、ゲームシーンのこれまでとこれからを考えるということにおいても象徴的な出来事だったのではないだろうか。


おまけ:電ファミ編集長、平さんとの「SEKIRO」談義

 (編集部より)ここからはおまけとして、10月に掲載した電ファミニコゲーマー編集長・平信一さんのインタビュー(聞き手はhamatsuさん)から、字数の関係でカットしてしまった「宮崎英高さんや『SEKIRO』の話題で30分ほど盛り上がったくだり」をサルベージして特別公開します。インタビューは7月に収録したものでしたが、「SEKIRO」がGOTYを受賞した今読み返すとまた違った面白さがあるのではないでしょうか。それではどうぞ。



(休憩から帰ってきて)

ねとらぼ 最近遊んで面白かったゲームとかありますか?

 「SEKIRO」は普通にクリアしたかな。

ねとらぼ Twitterでも早い段階でクリアしたってツイートされてましたね。あれをサクッとクリアできるのはさすがです。

 それでも35時間くらいかかったかな。

hamatsu 僕もめちゃくちゃ遊んでます。まだクリアまでは行けていないんですが……ようやく葦名弦一郎を倒したくらい。(※後日ちゃんとクリアした)


SEKIRO 電ファミニコゲーマー編集長・TAITAIこと平信一さん

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