コスプレイヤーとお近づきになりたいカメコの夢と現実 エッセイマンガ『野良カメコのピラミッド』作者インタビュー(2)
「レイヤーさんと付き合いたい、デートしたい、と思うカメコはかなり多いと思います(笑)」
コスプレイベントに現れるカメラ小僧、通称「カメコ」の喜怒哀楽を描いた実録エッセイマンガ『野良カメコのピラミッド』(著者:だよねさん)。美しい有名レイヤーに認知されるため、けなげな努力を重ねているカメコの実情を、オブラートに包むことなく描いた怪作です。
自身も“野良カメコ”と自称するだよねさんに、作品の誕生秘話と見どころをインタビューしました。
漫画「野良カメコのピラミッド」とは?
週末のコスプレイベントには必ず参加するだよねは、独身のアラフォーカメコ。有名レイヤーと交流することもできず、時には自分の前で撮影待機列が打ち切られ、囲み撮影ではライバルカメコにはじき出される不遇の底辺カメコです。
夢はコスプレイヤーと結婚すること。今日も一人機材を磨きながら「カメラがあれば……僕だって希望が持てるんだ。冴えない女子高の教師が教え子と結婚するようなあの……希望が!!」とメガネを輝かせています。
本書では、作者自身の実体験を元にコスプレ界で光が当たらないカメコの世界にスポットを当てています。
著者プロフィール:だよね(Twitter:@dayonesoudayone)
漫画家・イラストレーター。一般企業のサラリーマンとして働く傍ら、カメコとして10年以上活動し、Twitterを中心に作品を投稿。コスプレイヤーも、カメコも共感する「コスプレあるある」を描き続けています。
第7話
その他のエピソードの試し読み、購入先などはKADOKAWAのWebサイトにて
なぜカメコの日常を描くようになったのか
―― 漫画は普段どうやって描いているんですか?
iPad ProとApple Pencilという装備でやってます。ワコムさんのペンタブも使っていたんですが、描く場所がいつも喫茶店とかなので、持ち運びが軽いこっちをよく使ってますね。
当然昔は手描きでしたよ。中学生の頃は、アニメ雑誌『Newtype』(KADOKAWA)の投稿ページに向けて『ロードス島戦記』のイラストを描いて、友達と競争したりね。実際掲載されたこともありました(笑)。懐かしい思い出です。
―― 中学生くらいからオタク道まっしぐらだったんですね
いえいえ、実はサッカー部に所属していて、フォワードやってたんです(笑)。アニメ好きのサッカー部員。練習がすごくキツいんですが、試合に出してもらえずだいぶ屈折した思いを抱いてましたね。その鬱憤(うっぷん)をイラスト描いて晴らしていたという感じでしょうか。
イラストは描いていたんですが、ストーリーのある漫画は全くやったことがなく、高校出たくらいのときに初めて描いて漫画雑誌に応募したんです。ふざけたテンションのスポ根作品で、ラグビーがテーマ。なんというか『行け!!南国アイスホッケー部』と『魁!!男塾』を足して2で割ったような内容でした。
―― 死んでも、なぜか生き返る仲間とフィールドを駆け抜ける感動作品?
ちょっと違いますが(笑)。そうしたらなぜかいくつか賞をもらいまして……。でも学校卒業して就職しなくてはいけなかったので、あっさり漫画家の夢は諦めたんです。
それからサラリーマン一筋なので、今回Twitterに投稿するためイラストを描いたのは10年ぶりくらい。一部の人気カメコはレイヤーさんと仲むつまじく写真集の撮影とか、屋外ロケを楽しんでいる最中、私だけはそんなお呼びもかからず、カメコの日常をただひたすら追うという(笑)。そんな逆境と屈折した思いも、この作品のスパイスになっています。
カメコ界のピラミッドの最下層「野良カメコ」
―― やっぱりレイヤーさんとお近づきになったら勝ち組なんでしょうか
カメコがモテるとはまず聞いたことはないのですが、レイヤーさんと付き合いたい、デートしたい、と思うカメコはかなり多いと思います(笑)。事実、カメコとレイヤーさんが結婚する例もあるんです。地下アイドルとファン、ポートレート撮影モデルとカメラマン、というケースもある。
ただそれを成し遂げられる可能性は、極めて天文学的な数値なのです。しかし、1%でも可能性があればそこには光があり、希望があるのです。
―― 急に顔つきが真面目になりましたが……
その可能性を信じ、レイヤーさんに認知されるため早朝から会場を1人徘徊するカメコこそが“野良カメコ”なのです。可能性を追い求め、我が道を行く孤高の存在というのでしょうか。私もその1人。
作品に出てくる若きイケメンカメコのゲスくんはチート的な存在。オタク業界には時々こういう人がいて、事実、学生時代のオタク仲間にもこの手の人物がいました。その彼がモデルになっています。
―― 野良カメコはたくさんいるのでしょうか?
圧倒的に野良カメコが多いですね。カメコのピラミッド社会では間違いなく最下層で、ここから上の段階へステップアップを図るのです。
例えば会場でクッキーや塩分タブレット配る「お菓子カメコ」、長時間撮影を強いられているレイヤーさんを気遣い、カメコを強制的に解散させようとする「カウントカメコ」、プロフィールをびっしり書いたネームカードを撮影後に渡す「名刺カメコ」、取材メディアの助っ人として起用されている「プレスカメコ」。
そんないくつかある方法にトライし、レイヤーさんと顔なじみになると「認知カメコ」にクラスアップし、さらに「身内カメコ」「有名カメコ」とピラミッドを登っていきます。
(続く)
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