コスプレ撮影の行列、その先にある“カメコたちの人間模様” エッセイマンガ『野良カメコのピラミッド』作者インタビュー(3)

「臥薪嘗胆を続けて、“至福の60秒”を待つのです」

» 2020年02月27日 20時00分 公開
[佐藤星生ねとらぼ]


 コスプレイベントに現れるカメラ小僧、通称「カメコ」の喜怒哀楽を描いた実録エッセイマンガ『野良カメコのピラミッド』(著者:だよねさん)。美しい有名レイヤーに認知されるため、けなげな努力を重ねているカメコの実情を、オブラートに包むことなく描いた怪作です。

 自身も“野良カメコ”と自称するだよねさんに、作品の誕生秘話と見どころをインタビューしました。

漫画「野良カメコのピラミッド」とは?

 週末のコスプレイベントには必ず参加するだよねは、独身のアラフォーカメコ。有名レイヤーと交流することもできず、時には自分の前で撮影待機列が打ち切られ、囲み撮影ではライバルカメコにはじき出される不遇の底辺カメコです。

 夢はコスプレイヤーと結婚すること。今日も一人機材を磨きながら「カメラがあれば……僕だって希望が持てるんだ。冴えない女子高の教師が教え子と結婚するようなあの……希望が!!」とメガネを輝かせています。

 本書では、作者自身の実体験を元にコスプレ界で光が当たらないカメコの世界にスポットを当てています。



著者プロフィール:だよね(Twitter:@dayonesoudayone

漫画家・イラストレーター。一般企業のサラリーマンとして働く傍ら、カメコとして10年以上活動し、Twitterを中心に作品を投稿。コスプレイヤーも、カメコも共感する「コスプレあるある」を描き続けています。

第17話













その他のエピソードの試し読み、購入先などはKADOKAWAのWebサイトにて

野良カメコたちの“至福の60秒”

―― 野良カメコ同士の交流もあったりするんでしょうか

 はい、あります。「あのレイヤーさんがどこどこにいる」みたいな情報をくれる人も(笑)。装備も性格もみんな千差万別で、レイヤーさんを撮りに来たという目的の人もいれば、カメラの新機種を入手したので、試し撮りに来たという人も。

 若いレイヤーさんと触れ合いたいため、「旧ザク」みたいなカメラを持って来ているおじいちゃんもいる。この前は「写ルンです」(編集部注:1980年代後半〜90年代初頭に流行した使い捨てカメラ)だけで会場入りしていた豪傑もいました。

―― 実際、みなさん写真の腕前はいいんですか?

 それも良し悪しがありますね。機材はすごいのに、全部白トビしている写真ばっかりの仲間もいますし、私もよくミスりますよ。写真の完成度より自己満足で終わってしまうケースが多いんです。

 特にコスプレ撮影は60秒程度の短時間で行うため余裕がなく、屋外の場合が多いため、ミスショットも少なくありません。しかも1人撮影するのに寒風吹きすさぶ中20〜30分程度並んだりします。あと数人で自分の番なのに、熱中症でダウンした人もいました。無念だったろうなぁ。

―― ある意味サバイバルですね

 臥薪嘗胆を続けて、“至福の60秒”を待つのです。まさにこの60秒に、その野良カメコの人間模様が凝縮されているといえます。無言で淡々と撮り続ける者、レイヤーさんはしっかり対策を施しているにもかかわらず、あらゆる角度からパンチラを狙う者、撮影した写真をドヤ顔で見せつける者……。

 紳士的な外見なのに、自分の番の直前で撮影が打ち切られイラつきを隠せない者も。そんなダメな大人を見せちゃうカメコの本性、精神がたまらないですね。

撮影写真のその後

―― みなさん撮影したデータはどうされているのでしょうか。レイヤーさんにプレゼントしている?

 人それぞれですね。コミックでも描いたのですが、「野良カメコは撮るわりに写真をくれない」とレイヤーさんが愚痴をこぼすことはよくあることです。実際に撮影に失敗していることもあれば、全然盛れていない写真しかない場合もある。目が死んでるとか(笑)。

 そんな写真はプレゼントできないし、最近はレイヤーさん側の理想も高くなってきていて……。DMで写真をあげても、しっかり加工された後にアップされていることも。思わず「一生懸命レタッチしたのに、そんなに直しちゃうのか」とツッコミたくなることもありました(笑)。

―― 自分の作風すら認められないこともあるなんて。認知されるための努力がマジでけなげ過ぎる……

 最近は仕事が忙しくイベントになかなか行けなくなってしまったんですが、私もそんな体験を山ほどしてきました。

 いまはTwitterのおかげもあって、レイヤーさんから「あのだよねさんですか! 撮ってください」といわれることも増えましたね。「私もやっとここまで来たか。ピラミッドを一段上に登れたんだ!」とうれしく思っていたんですが、知り合いが増えると漫画でリアルなことが描きにくくなるとも感じました。

 クラスチェンジの好機なのに、漫画のため認知されない野良カメコで居続けなくてはならない。まさにカメコの呪いにかかっているようなものですね……(遠い目)。

(了)

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