「年齢なんてただの数字よ!」夫たちのカミングアウトから始まったおばあちゃん2人の共同生活は…… 「グレイス&フランキー」がコミカルでパワフル
こんなおばあちゃんになりたい!(けっこう下ネタもあります!)
留学、習い事、恋愛………「いまさら遅いか」「もっと早く初めていればねえ……」そんな言葉でいろいろなことを諦めがち。でも、本当は遅すぎることなんて何ひとつない! いくつになったってキラキラの青春が待っていることを教えてくれるのが、ドラマ「グレイス&フランキー」です。
おうち時間が増えている今、見ると元気になる作品を紹介する企画。海外ドラマやショー番組を紹介する本『ハピドラ! マンガで紹介 気分ぶちアゲ海外ドラマ』の著者momomosparkleさんに、「グレイス&フランキー」の魅力を聞きました。
新しい人生のスタート
それぞれ長年連れ添った夫と子供を持ち、順風満帆なライフを送っていたグレイス&ロバート、フランキー&ソルの2組の夫婦。ロバートとソルは共同経営者、グレイスとフランキーは彼らの妻として(気が合わないながらも)交流を持っていた。ところが4人そろってのディナーの席で、グレイスとフランキーは突然、夫たちに離婚を突きつけられる。「僕たちはゲイで、愛し合っているんだ。2人で新しい人生を歩みたい」。
夫のカミングアウトを受け、フランキーとグレイスはそれぞれ夫と暮らしていた家を出る。2人とも行き先は共同で所有していたビーチハウスで、仕方なく一緒に暮らし始める。
だけど2人は面白いほどに正反対の性格。フランキーはマリファナとアート、自由を愛する一匹オオカミ。一方グレイスは、社交的でなんでもきっちりしていないと気が済まない心配性タイプだ。ファッションだって食べ物の好みだって全然違う。
そんな2人の共同生活は、もちろん喧嘩とハプニングの連続! それでも、お互いを知るにつれて、2人の間に掛け替えのない絆が芽生えてゆく。2015年にNetflixオリジナル作品としてスタートしたこのドラマは、最終第7シーズンの製作も決定したロングシリーズだ。
主演のふたりは、1980年に映画で共演して以来プライベートでも大の仲良し。そんなふたりの仲の良さがかもし出す絶妙なムードと漫才のような掛け合いが最高!
フランキー役のリリー・トムリンはコメディアン兼女優で、長年連れ添った同性の恋人と結婚したばかり。グレイス役のジェーン・フォンダはモデル出身で活動家。過去には自身のワークアウトビデオを大ヒットさせるなど、それぞれの個性に合ったぴったりすぎる配役もグレイス&フランキーのキャラクターをより生き生きとさせているのだ。2人はこのドラマの制作にも自ら関わっている。
「自分」として生きること
正直、1話目でロバートに別れを切り出された時のグレイスを見たとき「かわいそう……」と思った。夫につくしてきたのに、突然捨てられてしまった女性という雰囲気で、娘の肩にもたれて泣く彼女はとても小さく見えたから。
それがどうだろうか。離婚して日が経ち、吹っ切れてからの彼女の強さは半端じゃない。新しい彼氏(世界中を旅するHOTな山男)をリードする彼女は超セクシーで、こちらまでときめいてしまうほど。
グレイスは結婚してから離婚するまで、「ロバートの美人な奥さん」として生きてきた。女の子を2人も育てあげて会社も経営する、パワーにあふれたすごい人だったのに。でもいま彼女は誰かの付属品ではなく、1人の人間「グレイス」として胸を張って生きている。カゴから羽ばたいた鳥のように。
そして「これがイカした年齢の重ね方よ」と見せつけてくれるのが、もうひとりの主役であるフランキー。偉人たちの魂と会話したり、幻覚作用のある草をお茶にして飲んだりするのが日課の彼女。フラワーパワー時代のアメリカを生きたからこその本当のヤバさをもっていて、何があってもどんなことが起きてもブレることはないそのスタンスにしびれてしまう。いつだって、自分らしく生きる人は、最強にかっこよくて美しい。
Age is just a number
次々と新しい恋を見つけるグレイスたちから刺激を受けるのはもちろんのこと、晴れて夫婦となったソル&ロバートの夫夫カップルのラブラブっぷりもキュートで癒やされる。ずっと隠していた関係をオープンにできた喜びも相まって、些細なことで大喜びしたり喧嘩したり。仲直りしたあと「僕たちこんなことでケンカしちゃったね!」なんて笑いあったりして、付き合いたての高校生カップルのようだ。
Age is just a numberという言葉がある。年齢なんて、ただの数字だからそれにとらわれずに生きよう、という意味のことわざだ。「グレイス&フランキー」は、このことわざの意味をじっくり味わうことのできるドラマだ。
時代を追うごとに、年齢はどんどん意味のないものになってきているように思う(病院の書類に記入する時とか、お酒を飲んでいい年齢とか、そういうのは別としてネ)。8歳だって90歳だって、留学したいと思えばするべきだし、新しい恋人が欲しいと思えばつくればいい。自分がどうしたいかなんて、他の誰かが決めることじゃないのだから。
青春が10代の特権だなんて誰が言っただろうか。私たちがこのドラマでみているのは、間違いなく「青春」そのものだ。悩んだり、ドキドキしたり、全員が全力で青春している。70歳を過ぎていたって、かけがえのない友情も手に入れられるし、眠れなくなるほどの恋をすることだってできる。
だから尻込みしないで一歩踏み出してみよう! なにかをはじめるのに、年齢も性別も関係ないんだから。
momomosparkle
イラストレーター&デザイナー&漫画家。カリフォルニアのカレッジで2年間アートを学んだ後、美大を卒業、現在はフリーランスとして活動中。かわいいものや楽しいことが大好き。著書に『ハピドラ! マンガで紹介 気分ぶちアゲ海外ドラマ』(柏書房)。
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