ハードなDVが35年続き、とうとう離婚計画に踏み出す妻。「無力感」繰り返すズレたアドバイスが相談者に響かない 「テレフォン人生相談」先週のハイライト(2/2 ページ)

» 2020年10月26日 18時30分 公開
[北村ヂンねとらぼ]
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結局、夫と正攻法で交渉するしかない

 この日の回答者は、弁護士の野島梨恵。

 建物が建っている土地なので、当然、土地と建物をまとめて売った方が価値が高い。しかしその建物には夫と息子ふたりが住んでいる。

 「旦那さんは、アナタがこの土地建物を売りたいと考えていることは知っていますか?」

 「まだ伝えてはおりません」

 理屈としては現状でも土地を売ることは不可能ではない。しかし、居住中の家が建っている土地を買う人はそうそういないだろうと指摘。

 相談者は、息子に土地を買い取ってもらえないかと打診もしたようだが、色よい返事はもらえなかったようだ。

 「まあ、お金を出してこの土地建物買わなくたって、そのうち(両親が亡くなれば)自分たちの物になるわけですから。金出して買おうとはあんまり思いませんよね、普通」

 結局、そこに住み続けている夫を無視して土地を売るのは難しいので、正攻法で交渉することを勧めた。

 「不動産屋さんに行って、土地建物の価格、大体聞いて、お父さんに『売れたらアナタにいくら渡すから、売るのはどうか?』ってまず相談してみるのが第一でしょうね。でも旦那さんに言いたくないんでしょ? 電話したり手紙を書いたりしたくないんでしょ?」

 「したくないです。今、電話は拒否している状態でいますので、話し合いができる状態ではないです」

 実は、不動産屋には既に問い合わせており、7000万から8000万円くらいで売れるという回答を得ているという。……いい土地じゃん!

 その額で売れるとすれば、夫にも余生を過ごすのに十分なお金を渡すことができる。うやむやなままにしておくより、弁護士などの第三者を入れてストレートに交渉するのが得策だろう。

 「やってみないことにははじまらないんで、まずやってみましょ。第一歩を踏み出してみられたら一番いいと思う」

 加藤諦三が引き取る。

 「野島先生もおっしゃったように、解決のための行動を……」

 「するしかないんですけれどね。まーたこれが、夫と戦うようになるのかと思ったら……」

 「だからそこがアナタは実は無力感持ってるんですよ」

 まーた無力感の話に持っていく!

 「普通の常識としては35年間で別れるんです。アナタが『別れません』という風に決めているだけの話ですから。今アナタはね、認めなきゃならないのは自分の中の無力感なんです」「サディストに対する自分の満足感っていうのかな。マゾヒストとしての自分を認めればすべては解決します。74歳から新しい人生拓けます!」

 言いたいことは分からなくもないのだが、序盤の「縛られた」という話に引っ張られてしまったせいで、「マゾヒスト」という言葉を使ってしまったことで、相談者に言葉が響かなくなってしまった感がある。

 この日の締めの言葉は「サディズムとマゾヒズムは、現象は正反対ですけれども心理はまったく同じです。無力感」。

 加藤諦三は時々、自分の進めたい方向で話をまとめるために、決めつけでアドバイスをすることがあるが、今回もこれを言いたいがために、無理矢理「マゾヒスト&無力感」認定したんじゃないだろうか。

 明らかに離婚した方がいい状態であるにもかかわらず、何だかんだと35年間引っ張ってしまった相談者にも問題があると指摘する声は確かにあるだろう。

 しかし別居をはじめたり、不動産屋に問い合わせたり、息子に土地を売ろうとしたり、相談者も夫と別れるため、既に「第一歩」を踏み出しているのだ。


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