【寄稿】太陽系消滅までの22分をループし続けるオープンワールド宇宙ADV「Outer Wilds」がとんでもない傑作だった

現在(2020年12月25日時点)、PS StoreやSteamなど各種ストアでセール中の傑作SFアドベンチャーゲーム「Outer Wilds」について、ねとらぼ副編集長・池谷による寄稿文(というか個人noteからの転載)。

» 2020年12月25日 09時30分 公開
[池谷勇人ねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

※この記事はねとらぼ副編集長・池谷が個人的に参加しているnote「ゲームライターマガジン」から転載したものです(→元のエントリはこちら)。


 最近クリアした「Outer Wilds(アウターワイルズ)」(※)がすばらしかったので、少しでも多くの人に届いてほしくて今これを書いています。個人的に10年に1本あるかないか級のド傑作だったのでもっと広まってくれ……!

※12月25日現在、PS StoreSteamEpic Games Storeなど各種ストアでセール中です(ちなみにEpicだと40%OFF+1000円OFFクーポン併用で2580円→548円になります)


Outer Wildsがとんでもない傑作だった


 そもそもこのゲームを知ったのは、Downwell作者のもっぴんさん(@moppppin)がTwitterで激推していたからで、正直僕なんぞがオススメするより先にこっちを貼った方がいい気がするので貼ります。もっぴんさん、さすがいいゲーム見つけてきますわ……。



 取りあえず、この時点でもう「あ、これ好み」と思った人は、これ以上何も情報を入れずにさっさと遊んだ方が多分幸せになれます。

 現状遊べるプラットフォームはPS4Xbox One(ゲームパス対応!)、PC(SteamEpic Games Store)で、価格は2500〜3000円くらい。



 さて、貼るものは貼ったのであとは好きに書く! ネタバレはないので安心してお読みください。一応、ゲームライターマガジンの今月のテーマ【ゲームのなかで旅行に行こう】にちなんでいます(※)。

※編注:もともとゲームライターマガジンの月替わりテーマ(2019年5月)向けに書いた記事でした


太陽爆発までの22分を繰り返す、オープンワールド宇宙アドベンチャー

 ゲーム内容についてあらためて説明すると、「太陽系消滅までの22分間を繰り返しながら、宇宙を隅々まで探索しループの謎を解くゲーム」といったところ。プレイヤーは4つの目を持つ半魚人のような種族「ハーシアン」の新米宇宙探査員となり、念願の宇宙探索へと出発。しかし、やがてこの星系がきっちり22分後に“ある理由”爆発で滅びてしまうこと、そして自分だけがなぜか「最後の22分間」を延々ループしていることに気付く――。


Outer Wildsがとんでもない傑作だった 半魚人のような種族「ハーシアン」

Outer Wildsがとんでもない傑作だった 主人公が乗る宇宙探査船。わりとすぐ壊れる

Outer Wildsがとんでもない傑作だった 滅亡5秒前(左に見える青白い光が太陽)

 Twitterで見掛けた言葉を借りるなら、「超コンパクトなノーマンズスカイ」+「宇宙版ムジュラ」と言えば伝わりやすいかも。多少ゲーム的な強引さもあるけど、大筋ではド直球のハードSFなので、ジェイムズ・P・ホーガンとか、あと量子モノという点ではグレッグ・イーガンとか好きな人には超オススメです(量子力学まわりの知識はあってもなくてもいいというか、むしろこの作品を入り口にして量子モノに入ってもいいくらい)。

 超新星爆発までのタイムリミットは22分間。途中で死ぬか、時間切れで滅亡を迎えるかすると、スゥゥーーー………………ブハッ! と目が覚めて再び22分前に。プレイヤーはこの「22分間」を何度も何度も何度も何度も何度も何度も繰り返しながら、さまざまな惑星を巡り、かつてこの星系に住んでいた先人「ノマイ」の痕跡をたどったり、同じハーシアンの先輩探査員と出会ったり、ときには何の成果も得られないまま宇宙のチリになったりしつつ、少しずつ「真実」へと近づいていく。


Outer Wildsがとんでもない傑作だった 目覚めるたびに目に入ってくる光景。何度見たことか……

Outer Wildsがとんでもない傑作だった 宇宙のいたるところに遺されたノマイの遺跡

Outer Wildsがとんでもない傑作だった なぜかみんなのんきにキャンプしている先輩探査員たち

 プレイヤーが行ける惑星は、大きなものが6つ、それに衛星や彗星、宇宙ステーションなど小さなものがいくつか。太陽系全体でも直径100キロに収まるくらいで、宇宙船を使えば太陽からもっとも遠い惑星でも1分とかからずに行けてしまう。惑星と宇宙はシームレスに行き来でき、このへんはまさに「超コンパクトなノーマンズスカイ」という表現がぴったりだと思う。


Outer Wildsがとんでもない傑作だった 舞台となる恒星系。探査船なら端から端まで1分もかからず行ける

 惑星のバリエーションも豊富で、絶えず片方の惑星からもう片方へと砂が流れ落ち続けている「砂時計の双子星」、水に覆われ、わずかに残った陸地も巨大な竜巻で定期的に宇宙へと打ち上げられている「巨人の大海」、中心核に小さなブラックホールを持ち、崩れた地表が常に中心に向かって吸い込まれ続けている「脆い空洞」など、新しい場所へ行くたびに「よくこんな設定思い付くな!」と感動してしまう(そしてどの惑星もそれなりに危ない……何度「脆い空洞」のブラックホールに落ちたことか)。

 加えて、各惑星は時間とともに変化しつづけており、1回の探索で全部を回りきるのはほぼ不可能。例えば「砂時計の双子星」なんかは、時間がたつにつれて惑星全体にどんどん砂が積もっていく(もう片方はどんどん減っていく)ので、特定の時間にしか行けない場所もあったりする。


Outer Wildsがとんでもない傑作だった 巨大な砂時計のような「砂時計の双子星」

Outer Wildsがとんでもない傑作だった 一面を海と竜巻に覆われた「巨人の大海」

Outer Wildsがとんでもない傑作だった 中心にあるブラックホールが怖い「脆い空洞」

 宇宙へ出るまでのチュートリアルを終えたらあとはどこへ行って何をしてもいいという作りで、何をどうすればクリアになるのかさえ示されないので、最初の十数周くらいは正直ちょっとつらいものがある。

 しかし、各地を旅して情報を集めていくうちに、やがて全然関係ないと思っていた情報と情報がフッと交差し、ゲームが一気に動き出すタイミングがあって、ここまで来るともう止まらない。あとは坂道を転げ落ちるような勢いでこの世界にハマっていき、最後の数日間は文字通り寝る間も削って没頭してしまった。


手に入れた「知識」がそのまま成長になり、先へ進むためのアイテムになる

 面白いのは、キャラクターの成長や、便利なアイテムの入手といったイベントがなく、次のループへ引き継げるのは「前の探索で手に入れた知識だけ」という点。かわりに、各惑星の地形や特徴、この星系の文化、生物の特性、量子のふるまいなどなど、あらゆる情報の蓄積がプレイヤーの成長になり、新たな場所へと導くカギになる。


Outer Wildsがとんでもない傑作だった 一見意味不明なものでも、後々重要な手掛かりになることもある

 もしかしたら他愛のない子どもの日記のようなやりとりや、一見落書きのように見える模様さえ重要な手掛かりになるかもしれない。いわゆる「パズルのためのパズル(a.k.a.ゼルダ問題)」がなく、純粋にこの太陽系や先人たちについて深く知ることが、そのままゲーム攻略につながる構造も美しい。足場が崩れて登れない塔があったら、フックショットを探そうとするのではなく、ここはどういう場所なのか、先人たちはここで何をしようとしていたのか、そのうえで今の自分には何ができるのかを立ち止まって考えてみよう。最初から全ての場所への扉は開かれていて、何なら1周目でクリアしてしまうこともできる。

 ちなみに大事な情報は宇宙船のコンピュータ(航行記録)に自動で記録されていくので、メモとかはとらなくても大丈夫です(ただ、やるべきことが増えすぎると混乱するので「解決していない疑問リスト」は個人的に作ってた)。航行記録だけは次のループにも引き継げるので、序盤は取りあえず航行記録の穴を埋めることを目標にすると多分迷わないはず。


Outer Wildsがとんでもない傑作だった 膨大な情報の中から、必要な情報だけをイイ感じにまとめてくれる、超優秀な「航行記録」。取りあえず迷ったらこれを見ておけば間違いない

愛すべき先人「ノマイ」の話をさせてほしい

 ええと、気付けばなんだかすごく普通のゲーム紹介になってしまった。ホントはストーリーについても語りたいんだけど……あの、絶対ネタバレにならないように気を付けるから、これだけ語らせてもらっていいですか!!??? 「嫌嫌絶対何も見たくない!!!」という人はもうここで帰ってもらって大丈夫なんで……っていうか早く買って遊べ。







※以下、ちょっとだけストーリーへの言及があります(ネタバレ……にはならないように気を付けてるつもり)。







 個人的に、このゲームで一番ツボだったのが、愛すべき先人「ノマイ」たちの存在だった。

 ここまでの説明で多分ほとんどの人は察したと思うんだけど、このゲームを攻略することってつまり、ノマイたちがたどった足跡を解き明かすことなんですよね。そして困ったことに、彼らについて知れば知るほど、プレイヤーはこの先人たちのことが好きになってしまうという構造になっている。


Outer Wildsがとんでもない傑作だった ホネになって博物館に展示されてるノマイさん

 とてつもなく進化した科学と文明を持ちながら、数奇な運命に引き寄せられ、それでも歩みを止めることなく、勇敢にも「その先」へと進もうとしたノマイたち。ユーモアがあって、魅力的な文化体系を持ち、知的好奇心にあふれ、未知への探求のためなら多少の犠牲をもいとわない。今でも彼らのことを考えるたびに胸がキュンとなってしまうのは、未知の荒野(Wilds)を切り開くことで歴史を作ってきた、人類の歩みと彼らの姿がちょっと重なるからなんですよね。いや、だからといってアレをアレするのはやりすぎだと思うが(地球人並の感想)。

 彼らがそこまでして求めたのは何だったのか、彼らはなぜこの太陽系から姿を消してしまったのか、それはゲームの中でちゃんと明らかになるんだけど、全ての「?」がアンロックされた瞬間、なんというか、感動、驚き、恐怖、興奮、畏怖……いろんな感情がいっぺんに襲ってきて、僕は「ウワーーーッッッッッ!!」という感じになって死にました。取りあえずネタバレ抜きで書けるのはこのへんが限界ですが、あともう1つ「ソラナムちゃんのファンイラストとかもっとないの!!?!??!」というのは声を大にして言っておきたいところです。

 それとこのゲーム、SFなのにやたら「キャンプでマシュマロを焼く」シーンが出てくるんだけど、これも実は最高にエモい使われ方をしていて……(以下自重)。取りあえず「クリアすると確実に焼きマシュマロが食べたくなる」ということは書いておきます。


Outer Wildsがとんでもない傑作だった マシュマロ食べる実績もある

大げさではなく、10年に1本あるかないかの傑作

 冒頭で「個人的に10年に1本あるかないか級のド傑作」と書いたのは誇張でも何でもなくて、終わった後もこれほどいろいろ考えてしまうゲームは自分の中でここ数年なかったと思う。

 Twitterでも書いたけど、クリア直後は感動とか喜びとかよりも、「今の記憶を失いでもしないかぎり、もう二度とこの興奮は味わえないんだ」という喪失感の方が大きくて、一時はちょっとした虚脱状態になったりもした。もっぴんさんも「終わって寂しいゲームUndertale以来だ」と書いていたけど、わかるよ! それめっちゃわかる! まだ遊んでいない人は、まだ遊んでいないことに感謝しつつ遊びましょう。



 そういえば感謝といえばもう1つ、冒頭のツイートを投げた翌日、Twitterでマシ・オカさんから「あざーす!」とリプライをもらってビックリした。実は開発元のMobius、マシオカさんが設立したインディースタジオなんですよね。

 ということでみんな、マシオカさんに感謝しつつ「Outer Wilds」5億本買おうな!!!!



おまけ:操作難しい! という人へ

 序盤(特に操作に慣れるまで)がやや辛いゲームなので、先人たちのアドバイス置いておきますね。




Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/19/news150.jpg 「情報を漏らされ振り回され……」とモデラー“限界声明” Vtuberのモデル使用権を剥奪 「もう支えられない」「全サポート終了」
  2. /nl/articles/2411/20/news028.jpg 「うどん屋としてあるまじきミス」→臨時休業 まさかの“残念すぎる理由”に19万いいね 「今日だけパン屋さんになりませんか」
  3. /nl/articles/2411/20/news224.jpg “ドームでライブ中”に「76万円の指輪紛失」→2日後まさかの展開に “持ち主”三代目JSBメンバー「誰なのか探しています」
  4. /nl/articles/2411/19/news169.jpg 高畑充希と結婚の岡田将生、インスタ投稿めぐり“思わぬ議論”に 「わたしも思ってた」「普通に考えて……」
  5. /nl/articles/2411/20/news031.jpg 「本当に同じ人!?」 幼少期からイボをいじられていた男性→美容師の“お任せカット”が衝撃 「めちゃくちゃ大変身」
  6. /nl/articles/2411/19/news022.jpg 「おててだったのかぁああああ」「同じ解釈の人いた笑笑」 ピカチュウの顔が“こう見えた”再現イラストに共感続々、464万表示
  7. /nl/articles/2411/20/news042.jpg 「腹筋崩壊」 ハスキーをシャンプー&パックしたら…… “予想外のハプニング”に「こ〜れは大変だわ」「沼にでも落ちたのかとwww」
  8. /nl/articles/2411/20/news216.jpg “歌姫”ののちゃん、6歳現在の姿に驚きの声「あれっ!?」「ビックリしてます!」 2歳で「童謡こどもの歌コンクール」銀賞受賞
  9. /nl/articles/2411/20/news041.jpg 黄ばみのある68年前のウエディングドレスを修復すると…… 生まれ変わった姿に「泣いた」「受け継ぐ価値のあるドレス」
  10. /nl/articles/2411/18/news107.jpg 走行中の車から同じ速さで後方へ飛び降りると? 体を張った実験に反響「問題文が現実世界で実行」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた