昼はネコ、夜は工場夜景 都会のローカル線ワンダーランド「鶴見線」のひみつ10選(3/3 ページ)
【鶴見線のひみつ:9】鶴見駅の「頭端プラットホーム」と連絡改札口、それは鶴見線ワンダーランドの入園口
鶴見駅に戻ってきました。鶴見線の鶴見駅は京浜東北線などより高い位置にあります。これは前述した通り、鶴見線はまず鶴見臨港鉄道として開業したためです。
鶴見線は貨物線として浜川崎側で国鉄と直通しており、後から旅客輸送のために鶴見駅へ延伸しました。このとき、鶴見川を鉄橋で渡り、そのまま国道、京急電鉄線、国鉄線を高架で乗り越えて鶴見駅に至りました。
国道駅と鶴見駅の間には「本山駅」もありました。近くの曹洞宗大本山総持寺への参拝輸送を見込んでいた駅。国鉄に買収される前に廃止されましたが、今でも島式プラットホームの遺構が残っています。ちなみに総持寺は昭和の映画スター、石原裕次郎さんの墓所としても有名です。
さて鶴見駅。JRの駅にしてはちょっと雰囲気が異なり、行き止まり式のプラットホームになっています。「頭端式プラットホーム」といいます。始発駅の頭端プラットホームは私鉄の始発駅の典型です(関連記事)。機関車の付け替えが要らないため電車を前提とした建築です。隣のプラットホームまで階段を使わず歩いて行けます。
でも、京浜東北線に乗り換えるときに「連絡改札口」があります。同じJR線同士なのに改札口がある。これこそ鶴見臨港鉄道だった名残です。現在も撤去されない理由は、鶴見線のほとんどの駅が無人駅だから。ここでお客さんのチェックを行います。
つまりここは「鶴見線ワンダーランドの入園口」というわけです。
【鶴見線のひみつ:10】燃料電池車実験で未来を先取り
昭和レトロ感たっぷりの鶴見線に「鉄道の未来」がやってきます。
2022年3月から水素燃料電池で動くハイブリッド車両の実用実験が始まります(関連記事)。水素と酸素を反応させて発電し、その電力でモーターを動かし、蓄電池に充電する燃料電池ハイブリッドシステムを搭載します。
燃料電池車両はCO2を出さないシステムとして、非電化ローカル線への導入が期待されています。電化済みの鶴見線で実験する理由は、川崎市が臨港地域で水素エネルギーの活用を進めているからです。
この試験車両「HYBARI」は2両編成のため、鶴見線では混雑時間帯を避けた日中や休日の運行になると思われます。まさに沿線散歩にピッタリな電車です。
鶴見線、昼も夜もネコちゃんも工場夜景も昭和も未来も愛でられます
今回の鶴見線、夜の写真は日本旅行が2020年12月19日に開催したツアー「貸切列車で行く夜の鶴見線探訪 港湾・工場夜景の旅」に参加したときのものです。
夜の工場周辺はカメラを持ってひとりで歩くと怪しまれそうですし、暗い道をトラックなどが行き交うため危険です。ツアー行動で巡れば安心です。日本旅行は今後もこのツアーを続けていきたいとのことなので、感染症収束後の募集を待ちましょう。
昼の写真は、実は2009年6月に撮影したものです。10年前も今もほとんど変わらない景色がスゴイです。緊急事態宣言が解除されたら、乗り鉄のリハビリに「鶴見線ワンダーランドの旅」いかがでしょうか。
都会のローカル線ワンダーランド「鶴見線」 フォトギャラリー
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。ITmedia ビジネスオンラインで「週刊鉄道経済」連載。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。JR路線の完乗率は100%、日本鉄道全路線の完乗率は99.69%(2020年10月時点)
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なぜこんなにも「懐かしい」のか……作者さんにインタビュー。こんな乗り鉄の楽しみ方もいかがでしょう。
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