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» 2021年01月23日 20時00分 公開

もしもビデオ通話に幽霊が降臨したら ロックダウン中に撮影された外出自粛ホラー「ズーム/見えない参加者」レビュー

舞台はZoomの画面の中。

[城戸,ねとらぼ]

 COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のまん延により、英国政府がロックダウンを決行――ジョンソン首相の罹患もあって、遠いイギリスのニュースが日本でも大々的に報道されました。それでもウイルスは抑え込めず、同国は2021年1月時点で3度目のロックダウンの最中にいます。

 しかし、そんな状況でもフィルムメーカーは創作を諦めなかった。今回は、都市封鎖中のイギリスで全編オンライン撮影されたホラー映画「ズーム/見えない参加者」を鑑賞したのでご紹介します。



画像は予告編から

 ロックダウン中のイギリス。友人同士である女性5人は、刺激を求めZoomを使った降霊の儀式を行おうとする。何も起こるわけがないとふざけながら降霊の手順を踏んでいた彼女らだったが、徐々に不可解な現象が起こり始め……。

 要は、Zoomの画面だけでお話が進んでいくという少々変則的な作品。とはいえ前例がないわけではありません。例えばデスクトップの画面だけで描かれる「SEARCH/サーチ」、その前にはスカイプの画面だけで描かれる「アンフレンデッド」、さらにその前にはチャットルーレット(世界中の人とランダムでビデオ通話ができるサービス)を舞台にした「デス・チャット」なんて作品もあり、むしろ近年では珍しい作風とはいえなくなってきています。

 あらすじも超王道だし、正直そこまで新鮮味が感じられないな……と斜に構えた気持ちで鑑賞しましたが、これが素直におもしれーー! というわけで魅力をレビューしていきます。



現代ホラーとして非常に優れた恐怖演出

 ホラーにおけるサブジャンルに“お化け屋敷ホラー”というものがあります。暗い屋敷をゆっくり進む主人公の目の前に怖いモノが飛び出してくる定番のアレです。そして本作もまた全体的な演出はこの“お化け屋敷ホラー”に準ずるつくり。王道に裏打ちされた面白さと、Zoomという強烈な個性が融合し、新鮮な気持ちで楽しむことができました。

 例えば幽霊の描き方。一般的なびっくり演出であれば、徐々に輪郭が浮かび上がったり、急にワーーっとこちらに向かってきたりしますよね。それでも十分怖いんですが、本作の場合はZoomの顔認証機能が空間に反応するという、現代的かつ身近な方法で「なにかいるぞ」と恐怖の始まりを示唆してくるわけです。インターネットテクノロジーに眠る恐怖の萌芽を見事に抽出しています。

 しかもその狙いがことごとく成功している。“こぼれた小麦粉に足跡がつく”とか“毛布を投げたら引っ掛かる”とか、Zoom関係なしに「自宅でこんなことが起きたら嫌だなー」という演出もばっちりキマっていて、古典と現代のいいトコどり状態なので、ホラーファンなら間違いなく楽しめるんじゃないでしょうか。



 さらにホラー映画としての魅力がもうひとつ。それは恐怖と静寂の絶妙なバランスです。優れたB級ホラーには共通して、低予算をカバーする心地よいリズムが感じられるもの。一応文字で表現すると、「………フッ…キャー!……何だ気のせいか………バーン!!キャーー!!!…………」みたいな感じです。絶対に伝わりませんね。

 とにかく静寂と恐怖のバランスには必ず正解があるんですよ。怖いモノが登場するタイミングだったり、あるいは消え方だったり。ヒロインの悲鳴や物音ひとつとってもそう。感覚の鋭い監督はその調律を決して崩しません。映画全体を貫く一本の線をたゆまず維持させなくてはならないと知っているからです。本作が批評家に高く評価されているのも、非常に優れたバランス感覚ゆえではないかと思うのです。



 個人的に大好きだったポイントも語っておきます。それはテクノロジーに対して非常にフェアだった点です。

 例えば前述したスカイプホラー「アンフレンデッド」には“勝手に通話に参加してくるお化け”が登場するのですが、こいつは追放ボタンを押しても会話から出て行かないんですよ。スカイプの画面だけで話が進む点が個性なのに、お化けがスカイプのルールを無視しちゃったらもう何でもありじゃないですか。そんなことできるなら直接出てきて呪い殺せばよくない?(私は「アンフレンデッド」も大好きですけど)

 その点で本作のお化けは決してズルをしません。Zoomの機能を超えることはせず、あくまで恐怖の舞台として利用するだけ。だからこそ前述した“顔認証フィルター”のような演出が現実味を帯びるわけです。序盤で「なんか回線の調子が……」と不穏な空気が流れるんですが、その理由は本当にWi-Fiがクソだったから。すばらしい! お化けのフェアプレーに称賛を贈りたい。

 最後に不満点をひとつ挙げるならば、ラストの展開だけはどうしても気に入らない。ネタバレになるので深く言及はしませんが、“ある人物の行動”が結末ありきの安易な動かし方に見えてしまって……。実際に観ていただければ、その“フェアじゃなさ”を感じていただけると思います。その分ラストシーンはかなりいい感じなんですけどね。

 あ、そうそう。上映終了後、リハーサル中に撮影された本物の心霊映像が流れるので最後まで席を立ってはいけませんよ。まあ、あまり期待しない方がいいとは思いますが……。





 自由に外に出られる時にあえて作ったインドア映画とは違い、本作は屋内で撮影を完結せざるを得なかった点が最大の特徴です。

 だけど実際は「家から出られないのなら、自宅やインターネット上だけで完結する映画を作ってしまおう」と考えた人はたくさんいましたし、Zoomを使用して作られた映画も腐るほどありました。だってそれしかできないんですから。

 逆に言えば、どんな金持ちとも、どんな有名監督とも、同じ条件で勝負ができるチャンスでした。自由に活動できないストレスを創作意欲に昇華させていたクリエイターも多かったことでしょう。そうしたライバルを押しのけて本作は劇場公開までこぎつけたわけです。その時点で面白さは保証されているようなもの。

 本作は現在、鑑賞料金1000円のキャンペーンを実施しています。本編も68分と短いのでオカルト好きな方はフラっと立ち寄ってみてはいかがでしょうか。このコロナ禍にリアルタイムで鑑賞するとより価値の上がる作品なのは間違いありませんよ。



余談ですが、前述した「アンフレンデッド」のプロデューサー、ジェイソン・ブラム氏は本作に絶賛のコメントを寄せています。そして本作の監督ロブ・サヴェージ氏は、ブラム氏率いるホラー映画プロダクション「ブラムハウス」にて次作を制作するとのこと。この時勢にすばらしい躍進です。

城戸

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