シュールで社会派でカルト! ジョージア・ロシア合作のアニメ映画「クー!キン・ザ・ザ」レビュー(2/3 ページ)
だが、かわいらしい絵柄のアニメになったためでもあるのか、シュールでゆるいおかしみは、むしろパワーアップしている。基本プロットはほぼ同じでも細かな違いはたっぷりとあるので、「不思議惑星キン・ザ・ザ」と「クー!キン・ザ・ザ」が同時上映されている劇場で、見比べてみるのも楽しいだろう。
なお、アップリンク吉祥寺のロビーでは、「不思議惑星キン・ザ・ザ」における2メートル超の巨大宇宙船も出現している。きっとその大きさと実在感に、圧倒されるだろう。
なお、「不思議惑星キン・ザ・ザ」は、現在も口コミでロングランヒットを記録しているストップモーションアニメ映画「JUNK HEAD」の堀貴秀監督が強い影響を受けたと公言している。シュールな雰囲気や、どこかとぼけていてかわいいキャラクターなどに共通点を見い出せるので、こちらも合わせて見てみるのがおすすめだ。
代名詞といえる「クー!」とは?
「不思議惑星キン・ザ・ザ」および「クー!キン・ザ・ザ」の代名詞的な存在が「クー!」という叫び声だ。
これは宇宙人たちが使う、あらゆる名詞・形容詞・副詞・感嘆詞などを指す言葉(ただし罵倒語だけは「キュー」)。何でも「クー!」で物事を済ませようとする振る舞いが、かわいらしいと同時にやはりおかしみに満ちていて、見た後は「クー!」とマネをしたくなってしまう。
ただ、宇宙人たちは地球人の脳をスキャンして思考を読み取るテレパシー能力を持っているため、ロシア語の会話もあっさりとこなすことができる。「クーしか言えないかとおもいきや普通に意思疎通できるやんけ!」はシュールなツッコミどころでもあるが、それでも肝心な時には「クー!」だけで会話をしようとするので、やはりかわいらしくてほっこりと笑顔になれる。
身分制度の痛烈な風刺も?
シュールなギャグが主体のこの「クー!キン・ザ・ザ」であるが、実は身分制度への痛烈な風刺もある。
例えば、社会的地位がズボンの色により区別されており、緑色は下級者、黄色は偉い人、そして赤いズボンはエリートとされている。さらに、下級者は上級者への忠誠の誓いとして、鈴を鼻につけ、自分の頬を2度たたき、膝を曲げて「クー!」のあいさつをしなくてはならないなど、独特なルールが設けられているのだ。
1986年製作の実写版「不思議惑星キン・ザ・ザ」は「表向きは平等を唱えていた社会主義体制下のソ連の政治体制を皮肉めいた視点で描いている」と評されてもおり、当時の「鉄のカーテン」を示唆する場面もあった。
現代に作られた「クー!キン・ザ・ザ」は携帯電話の他、「出稼ぎの外国人労働者」という現代的な事象も描かれるようになり、惑星での社会的地位の格差が、富裕層と貧困層の分断が顕在化した今のロシアの(または世界中にある)問題を、改めて痛烈に皮肉っていると言っていいだろう。
また、これまでゆるい、ほっこりするなどと作品の印象を書いてきたが、前述したかわいらしい「クー!」のあいさつにさえも、身分制度にまつわる問題が見て取れるという、社会派かつ多層的な構造がある。
さらに、おかしな道中の先には意外な展開が待ち受けており、唐突に見える展開にも実は周到な伏線が用意されていたりする。何となく見ているだけでも楽しいが、作品のディテールを探ってみると奥深い内容であることも分かることだろう。
なお、「不思議惑星キン・ザ・ザ」および「クー!キン・ザ・ザ」で監督を務めたゲオルギー・ダネリヤは2019年に88歳で逝去した。今回の「クー!キン・ザ・ザ」の日本公開には、監督への追悼の意味も込められているのだろう(事実、その命日である4月4日に先行公開もされていた)。ぜひ、ヘンテコだが奥深い、一風も二風も変わった映画を期待して、劇場で見ていただきたい。
(ヒナタカ)
関連記事
- 映像制作経験のない監督が7年かけ作り上げたヤバい映画「JUNK HEAD」レビュー
製作期間7年のストップモーションアニメ映画「JUNK HEAD」のヤバさと魅力を語る。 - 開き直ったカップルが見せる“ループもの”の新たな地平 映画「パーム・スプリングス」レビュー
コロナ禍の今だから余計に響くループもの。 - 映画館の新しいコロナ対策、パーテーション付きシートが快適だった! イオンシネマの新座席を体験リポート
イオンシネマの一部で設置されている「アップグレードシート」をリポート。 - ダニエル・ラドクリフがクソリプ送ってデスゲームに強制参加する映画「ガンズ・アキンボ」の3つの魅力
クソリプを送ったらデスゲームに強制参加させられて最強の女殺し屋に襲われる映画「ガンズ・アキンボ」が最高に楽しかった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
-
“月収4桁万円の社長夫人”ママモデル、月々の住宅ローン支払額が「収入えぐ」と驚異的! “2億円豪邸”のルームツアーに驚きの声も「凄いしか言えない」
-
“プラスチックのスプーン”を切ってどんどんつなげていくと…… 完成した“まさかのもの”が「傑作」と200万再生【海外】
-
100均のファスナーに直接毛糸を編み入れたら…… 完成した“かわいすぎる便利アイテム”に「初心者でもできました!」「娘のために作ってみます」
-
「巨大なマジンガーZがお出迎え」 “5階建て15億円”のニコラスケイジの新居 “31歳年下の日本人妻”が世界初公開
-
鮮魚コーナーで半額だった「ウチワエビ」を水槽に入れてみた結果 → 想像を超える光景に反響「見たことない!」「すげえ」
-
「奥さん目をしっかり見て挨拶してる」「品を感じる」 大谷翔平&真美子さんのオフ写真集、球団関係者が公開【大谷翔平激動の2024年 「妻の登場」話題呼ぶ】
-
家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
-
「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」
-
日本人ならなぜか読めちゃう“四角形”に脳がバグりそう…… 「なんで読めるん?」と1000万表示
- ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
- ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
- フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
- 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
- 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
- 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
- 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
- セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
- 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
- アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
- 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
- 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
- ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
- 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」