“信念の天秤”が歩ませるままならない物語 Switch「トライアングルストラテジー」が良すぎるので早口でおすすめします
「『タクティクスオウガ』っぽい」で終わらない「トライアングルストラテジー」ならではの魅力を解説。
Switch持ちの知り合いに会うたびに「トライアングルストラテジー」(公式サイト)を薦めまくっている私ですが、ねとらぼの副編集長の池谷さんに「『トラステ』超面白いです」みたいな話をしたところ、じゃあ記事にしてみませんかとやぶ蛇カウンターを受けたのでいまPCの前に向かっています。
古き良きゲームを遊んでいたり、知っている方は、本作の画面を見た時に、ああ「タクティクスオウガ」みたいな感じねとか、「ファイナルファンタジータクティクス」的な作品ね……といった受け止め方をするかもしれませんが、そこで止まらずぜひ遊んでほしいと思うのです!
確かにバトルは、往年のタクティクスRPG風味で、マス目状のマップをユニットで移動し、攻撃範囲の違いや高低差を生かして戦うというものです。ユニットごとのアビリティもさまざまに用意されていて、それを使い分けて強敵を倒したり、はたまた力が及ばないときは訓練的なモードで育成を進めて挑んだりできます。そのうえストーリーが、プレイヤーの選択によって分岐し、いくつかのエンディングが用意されている……とか書くと、やっぱり「タクティクスオウガ」みたいなやつじゃん……と反応されかねないのですが、似ている部分ばかりではないのです。むしろ、遊びこんでいくと本作ならではの良さがにじみ出てくるのです。
というわけで、今回の記事では、「トライアングルストラテジー」を、早口で勢いよく紹介したいと思います。
3つの国の緊張した関係を描く重厚なストーリー
筆者がこのゲームをめちゃくちゃ推しているのは、ストーリーに「やられた」からです。
物語の舞台は3つの国が存在するノゼリアという大陸。塩の生産地である聖ハイサンド大教国、鉄の生産と加工に長けたエスフロスト公国、交易の盛んなグリンブルク王国という3つの国は、かつて塩と鉄の利権を争った“塩鉄大戦”を繰り広げました。
この激しい戦争から30年が経過したところから、本作の物語は始まります。塩鉄大戦は痛み分けに終わりましたが、大陸にはさまざまな野心が燻っているという状況です。
そんな緊張感のある情勢の中、グリンブルク王国に仕える「御三家」の一つウォルホート家の跡継ぎである主人公・セレノアは、エスフロスト公国の公女であるフレデリカと政略結婚することになります。政略結婚ということは、この結婚には何者かの思惑が関わっているのですが、当のセレノアは正義感と使命感に燃える真っすぐな若者。フレデリカも公女ではあるものの、祖国での序列が低いためか、何者かの思惑など知る由もありません。
そんな何も知らないに等しい、二人のほほえましいなれそめが序盤では見られます。お互いが結婚相手だとは知らずに野盗を倒すために共闘したり、そのあとでセレノアの友達の王子様から「目の前にいる人が結婚相手だよ」って教えてもらったり。それでお互い照れてしまって、ちょっと的外れな自己紹介をしたりとかして……。あああ、尊い、なるほど意外とのほほんとしたゲームだな、とか思っていると、その後の怒濤(どとう)の展開に驚かされるはず。のんびりできるのは最初だけといっていいくらい、本作の物語は怒濤の展開を見せます。
この結婚一つとっても、決して平穏なものでもありません。まずフレデリカはピンク色の髪を特徴とする“ローゼル族”という種族で、この種族は迫害を受けています。そのうえ、フレデリカは何も知らなくても、彼女のいたエスフロスト公国には、野望を抱えた人物がひしめいています。こうした重々しい設定が、序盤からどんどん出てきて、中盤以降でボディーブローのように効いてきます。そして、道徳的にはかくあるべきだが、現実はままならない、というような出来事が立て続けに起きたりもします。セレノアとフレデリカ、そしてその仲間の過酷で、重厚な冒険を描くのが「トライアングルストラテジー」の物語なのです。
信念の天秤が歩ませるままならない物語
そして、こうした重いストーリーに“分岐”が加わることで、ドラマがより深いものになっているのですが、本作の分岐システムはかなり独特です。単純に選択肢で分岐するのではなく、分岐の局面では“信念の天秤”という多数決の投票システムが使われるからです。セレノアは度々「次に何をするべきか」ということを仲間と協議し、その際に“信念の天秤”というアイテムを使い、多数決の投票を募ります。現実において、大事なことを多数決で決めるというのは良いことばかりではありませんが、このゲームにおいては「投票者の間で強い信頼がある」という前提に基づき、この儀式が行われます。
プレイヤーは、信念の天秤の会話パートで、多数決の結果を察することができます。さらに、ただ投票を待つだけでなく、投票前に説得を試みて、意見を翻させるということも可能です。しかし、説得は毎回うまくいくというわけではなく、妻のフレデリカであっても、親友であっても、自らの家臣であっても、ときには強固な意志で投票に臨んできます。
実は、この説得の成否には、それまでに探索などで得ていた情報と、セレノア自身の“信念”というパラメーターが大きく関わってきます。信念パラメーターには、Moral、Benefit、Freedomの三要素があり、プレイヤーの行動や選択がこのパラメーターの増加に影響するのです。情報については、仲間を説得する材料になるのですが、ただ情報があるだけでは説得は成功しません。“信念”のパラメーターが足りていなければ、説得できないという状況も多いのです。しかもこの信念パラメーターはマスクデータ、つまりプレイヤーから数値も現状も確認することはできません。このため攻略データなしで本作をプレイすると、“プレイヤーの意見とは違う道を歩む”という状況がしばしば発生します。信念パラメーターが足りていない場合、直前のデーターをロードしてやりなおしても、結果は変わらないことが多いというなかなかシビアな作りです。
筆者は1周目のプレイをした際、「こうすれば問題が解決するだろう」という考えを持ち、信念の天秤に向かいました。しかし、いざ投票を始めてみると、説得はうまくいかず、自分が望むような投票結果にはなることばかりではありません。ただ、望まない多数決の結果だったとしても、その先に広がる物語で必死に未来を攫もうとする登場人物たちを見ているとじんとくるものがありました。
3つの国が対立し、利害や生存のために命を懸けて戦いに赴く者たちがひしめく時代に、「誰もが満足する選択」いうのはなかなか存在しません。信念の天秤によって、プレイヤー自身すら納得できない状況に運ばれたとき、そこで諦めず、どうあらがい、未来を切り開くのか。こうしたままならない未来の生き抜き方のようなものが、信念の天秤システムによって強調されるのです。
最初は思った通りに分岐しないはさすがにどうなのか……と思った信念の天秤システムでしたが、そんなことを感じ始めてからは、これこそが「トライアングルストラテジー」なのだと掌を返しています。
ユニット同士のシナジーを生かす奥深いタクティクスRPG
バトルに関しては、タクティクスRPGらしく、ユニットごとの攻撃範囲の違いや、マップの高低差などを生かすものになっています。特徴的なのは、同種のゲームの中でも、適正レベルでの攻略時の難度が高めなところ(育成のために周回できるクエストなども用意されているのですが、普通にストーリーだけを追いかけていくとほぼ適正レベルでの攻略になってきます)。
ちょっと難しいなと感じた場合は、ゲーム内で難度の調整も可能なのでご安心を。難度ノーマル、ハードでのプレイを選べばヒリつく戦いを楽しめますし、この手のゲームに不慣れ、もしくはストーリーを追いかけるためにサクサク進めたいという場合には、ベリーイージーを選ぶのも手です。
適正レベル、難度ノーマル以上で攻略する場合は、敵の攻撃のダメージが高めなので、やみくもに突っ込むとすぐにパーティが壊滅してしまいます。しかしその分本作には強力な「アビリティ」(ユニット別の特殊コマンド)が多いので、これらをうまく生かし、ユニット同士のシナジーを引き出す戦い方をするのがセオリーとなります。あるキャラクターでワナを貼り、ノックバックの発生する攻撃でそれに押し込んだり、強力なアビリティを持つキャラを、他のキャラのアビリティですぐに再行動させたり。戦術のバリエーションはかなり多岐にわたっており、マップの攻略法もさまざまです。また、プレイしていると、信念のパラメーターや分岐に応じて、新たなユニットが仲間に加わってくれるので、戦術の幅もどんどん広がっていきます。
本作を1周遊んだ時点では、ストーリーのボリュームが分厚い分、バトルに関してはややボリュームが控えめに感じるかもしれません。ただ、周回プレイを考えると、なかなか適切なボリュームなのではと筆者は考えています。全てのルートを見るとなるとなかなかのボリュームになりますし、周回プレイで変化する要素も実は多いのです。
周回を重ね、全ての物語を目撃してほしい、そしてサントラを聞いてほしい
「トライアングルストラテジー」のドラマは、“人”が中心です。魔法などのファンタジー要素はあるものの、本作は主に人と人との関係を描いた作品で、手を組むのは人同士、争うのも人同士というケースがほとんど。しかし登場人物は、善悪、敵味方と単純に分けられるものではなく、あるルートでは完全な悪に見えた人間でも、別のルートを遊ぶとそうならざるを得なかった事情などが見えてきます。
1周目は信念の天秤に逆らえない状況も多いと思うので、ときには天秤の決定に身を任せて先に進んでください。1周目をクリアすると、他のルートに行きやすくなるサポート機能的なものが解禁されるので、2周目以降では運命をコントロールする楽しみが得られるはず。本作はちゃんと“周回プレイ”を考えた作りになっているので、ぜひ最後まで遊びつくして、全てのルートを見てほしいと思います。1つのルートをクリアするたびに、「トライアングルストラテジー」の物語の地層が積みあがり、最後にはきっと、このゲームでしか得られない満足感を味わえるはず。全てのエンディングを見終えた瞬間の興奮を、ぜひ皆さまにも味わってほしい!
そして、全てのルートをクリアしたなら、サントラも聴いてほしいと思うのです!
本作のサウンドは、名作ドラマやアニメの楽曲を多数手掛けてきた千住明氏が制作。どの場面のサウンドも、ものすごく世界設定や状況にあっていて、実にドラマチックです。特に、オープニングで流れるメインテーマ「TRIANGLE STRATEGY -Main Theme-」には、本作で描かれる激動の歴史が詰まっているかのような迫力で、プレイするとサントラが欲しくなる方も多いのでは。
そしてなんとこのメインテーマ、サントラにはボーカルを乗せて編曲された「Song of TRIANGLE STRATEGY」が収録されており、クリアしたあとに聞くとこの歌詞が涙腺に来るほど良いのです……! サントラには歌詞カードが入っていませんが、筆者が確認した限りではiTunesで購入すれば歌詞が見られます。
Switchをお持ちの方は、ぜひ、ぜひ「トライアングルストラテジー」をプレイしてみてください。
関連記事
- ちょっと触ったら休日が丸2日消失した 個人的2022年ベストゲーム「TUNIC」を全力で推したい
記憶を消して遊びたいゲームがまた増えてしまった。 - 水平思考(ねとらぼ出張版):エルデンリングの「黄金樹」は令和の「りゅうおうのしろ」であり「転送罠」はロマンであるという話
エルデンリングとドラゴンクエストの共通点とは。 - モバクソ畑でつかまえて:「アイマス」15周年記念のお祭りゲームだったはずが…… 「アイドルマスター ポップリンクス」はなぜ短命に終わってしまったのか
全アイマスシリーズキャラ集合の「越境ゲーム」としても期待されていたものの……。 - 今日書きたいことはこれくらい:Switch移植が決定した「十三機兵防衛圏」について今から全人類にお薦めします
やきそばパンが食べたくなるゲーム。 - 「これは本物だ……」「楽しすぎる」 国産インディーゲーム「ElecHead」はなぜゲーマーや開発者をここまで魅了したのか
純粋なパズルとの殴り合いだけで構成された、ひたすらぜいたくな2時間。 - 水平思考(ねとらぼ出張版):【ネタバレなし】なぜ「Outer Wilds」は「記憶を消してもう一度遊びたい傑作」と言われるのか
ブログ「水平思考」のhamatsuさんによる不定期コラム。今回はついに追加DLC「Echoes of the Eye」が発表された「Outer Wilds」について。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
-
「涙が出ました」 45歳男性“かっこいいパパでありたい”→美容室で若返りすぎた姿に仰天 「全然違う!」
-
妻に「ファミリーカー買った」と報告→中古トラックで帰宅したら…… リアルな反応に「意表をつかれました」「子どもには好評だったりして」
-
「これは欲しい」 ワークマンの“1000円以下”「ボアアウター」がハイスペックすぎ! 「着やすそう」「かわいい」と150万再生の大反響
-
セリアで買った“110円のシール”→2歳娘がペタペタ貼っていくと…… 度肝を抜かれる作品に「天才か!!」「額に入れて飾りたい」
-
「500キロカロリー……」 162センチ&40.5キロの人気TikToker、“1年ぶり食べたもの”が衝撃的! ストイック極まる体形維持に「食事制限すごい」
-
ガラス越しに猫を撮ったら偶然……腹筋崩壊必至の“1枚”が300万表示突破 「ここ数日で一番笑った」「最終回みがある」
-
夫「あと100本は食べられる」と大絶賛 冷蔵庫の物で作る料理が490万表示 「目からウロコ」「時短だし楽だし洗い物少なくなるしサイコー」
-
カルディ“クッキー缶”のラベルを剥がしたら……? 隠れていたものに1900万表示 「なぜここに…」「ここに隠れてたのね」
-
「吹いたwwwww」 チラシに書かれた「セット割引」→“まさかの組み合わせ”に思わず二度見 「どういう状況?」
- アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
- 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
- イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
- 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
- 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
- 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
- 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
- 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
- 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
- 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
- フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
- 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
- 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
- ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
- 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
- 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた